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到着!港町バーバル

「う…ん。あれ?私あれからどうしたんだっけ?」


「おはようアスカ。変な時間に起きて夜寝れないとかいうなよ」


「ジャネットさん!私、ちょっとだけ横になって…自分のベッド?」


「私も眠たいからもう寝る~って自分で移動してたよ」


「そうなんですか。よかった~、リュートとずっと一緒かと思っちゃいました」


「さ、流石にそんなことはないよ」


「あっ、起きてたんだ。調子はどう?」


「おかげで元気になったよ。起きてからは酔いもないみたいだし、お酒が原因みたいだね」


「よかった~」


「そんなに心配してくれたの?」


「もちろんだよ。今回は3日だけだけど、バーバルからは一気に隣の大陸に行くんだよ?2週間はかかるって言うし、そうなったらアルバに帰っちゃうかもしれないでしょ?」


「それはないよ。アルバに知り合いは多く居るけど、別に家ってわけでもないからね。たとえ、この身が悪くなろうともお姫様をお守り致します!なんてね」


「なぁに、甲板の続き?でも、リュートってちょっと騎士みたいなところあるよね。私のこと結構見てるし」


「見てる?」


「うん!私の装備が軽装だからだろうけど、前からね。でも、助かってるの。やっぱり、1人で前に出ると不安だからね」


「そっか、役に立ってるならよかったよ。今でも役に立ってるか不安だったから」


「立ってる立ってる!ノヴァもだったけど頼りにしてたよ?私、近距離なら弓を振り回すしか出来ないもん!」


そういうアスカだったが、リュートもジャネットも苦い顔を一瞬した。後衛のアスカが近距離を対応できる時点で普通ではないのだ。それを当たり前のように言うアスカを改めて常識がないと思った。


「それで、次の寄港地はどこになるの?」


「次は確か…」


「次のところは人も乗らないところだよ。どっちかというと荷物というより帰りの食料とかの積み込みだね」


「へ~、帰りの食料とか先に積むんですね」


「まあ、その辺は風によって到着日数が変わるからね。後は、滅多にないだろうけど海賊だって出るし、荷物の管理が簡単になるらしいね。帰りの食料が積み終わってるから、バーバルで積み込める量が図りやすいって」


「でも、それだと目いっぱいは積めませんよね?」


食料を帰りに幾分か積んでいけばもう少し載りそうなのに…。


「その辺は考え方なのかもね。どういう時でも食料を確保するか利益に振るかだね。ここの船員はあまり奴隷がいないのかもね。身内がほとんどなら多少の利益より、備えに回しているんだろう」


「積み込みって見られたりします?」


「見れるけど、多分アスカには無理だと思うよ」


「え~!?何でですか」


「積むのは食料だけだから夜中だよ?あんた、夜は早くにぐっすりだろ?絶対無理だと思うけどねぇ」


「そ、そんなことありません!もういい歳ですからきっと大丈夫です」


いつまでも子どものままではないということも含めてジャネットさんに見せたかったので、頑張って食事の後も起きておけるように本を読んでいた。


「ん、んぅ~」


「アスカ?アスカ寝ちゃったの?」


「全く、こうも予想通りとはね。ほら、リュート。アスカをベッドに運んでやりな」


「いいんですか?あんなに積み込みを見るって言ってたんですけど?」


「積み込みなんてバーバルでも見れるだろ?意地になってるだけだし、構わないよ」


「分かりました。さあ、アスカ。風邪ひかないようにベッドに行くよ」


「…ふわぁい」


寝たまま返事をするアスカ。本当に器用なんだから…。


「ふわぁ~」


「おはようアスカ。よく眠れた?」


「うん。バッチリだよ!って、あれ?なにか忘れてるような…」


「忘れるぐらいだし、大したことないんだよ。それよりもうすぐ朝食の時間だよ。今日はアスカのリクエストでしょ?」


「そうだった!カルパッチョにちょっと油を多めにしてもらったスープを頼んでたんだよね。楽しみだなぁ~」


「あんたは本当に現金な子だね」


「ジャネットさんも美味しいの好きですよね?」


「そりゃあ、食べられるならね。でも、あたしは無理なら無理で割りきるよ。それもひとつの経験だからね」


「う~ん。私には難しいです…」


「そっちの方が普通簡単なんだけどね。後、昼過ぎにはバーバルに着くからね」


「は~い」


それから運ばれてきた朝食を食べた。


「ふぅ~、美味しかったです!」


「お粗末様です。今日はバーバルに着きますが、その後のご予定は?」


「ちょっと港を見て、最短で隣の大陸に行く予定です」


「隣と言うとバルディック帝国ですか?」


「えっと…」


チラリとリュートを見ると、こくりと小さく頷いたので合ってるみたいだ。


「そうですね」


「あの、いけすかない国ですか…。ギルドで他の国からの冒険者と聞かれたら心配無用と返してくださいね」


「あの…何かあるんですか?」


「不安があると答えると、そのまま実力試験をしてくるんですよ」


「大陸毎の実力差がないか見るってことかい?」


「表向きはな。だが、裏じゃその情報を使って、貴族どもの傭兵の斡旋なんかに使ってるって話だ。アスカちゃんはきれいだしかわいいから、護衛兼どら息子の相手をさせられかねないわ」


「ギルドは世界中で中立のはずだろ?」


「なにもギルドマスター全員って訳じゃない。だが、あんたも冒険者なら聖王国の話は聞いたことがあるだろう?国そのものが染まってる場合は、それなりにそういうこともあるのさ。近辺だとバルディック帝国って訳」


「た、大変なんですね…」


「その点、この国の周辺はいいのよ?シェルレーネ教のお陰で他の宗教も幅を利かせられないの」


「あっちのグリディア信仰は?」


「てんでダメよ。グリディア信仰は基本、個人同士の戦いに関してのみ。大軍同士だとある程度卑怯なことも作戦の内ってなってるの。優秀な人材スカウトぐらいじゃなにも起きないわよ」


「まあ、戦いの女神だし、しょうがないか」


「それにあの信仰って、神殿はあるけど村単位での信仰ってほぼないのよ。あるとしたら傭兵団とか騎士団ぐらいね。アタシも祈ったことあるぐらいだもの」


「一応聞くけどどのタイミングで?」


「そりゃあ、大漁の時よ!ありゃあ今でも思い出すぜ!やけに身なりのいい奴もいてよ。一応助けてやったが、ありゃあ長持ちしなかっただろうな!」


「どうしてだい?」


「海賊相手に交渉して礼を言うなんざ、いいとこの坊っちゃんだろ?わざわざ両手を出してきて握手するなんざトーシロもトーシロだよ」


「あ~。そりゃダメだね」


「なにか変ですか?両手で握手って」


「アスカ、両手だしてみな」


「こうですか?」


「んで、あんた何かこの状態でできるかい?」


「頑張れば魔法ぐらいは…あっ!」


「そういうこと。信頼できない相手に絶対にやっちゃいけないのが両手を出すことだ。なにもできなくなるからね」


「そういや、そいつも銀髪だったな…。まぁ、アスカちゃんと違って僅かにだけど緑がかってたけどな」


「姐さん、そろそろ上陸の打ち合わせ時間ですぜ」


「はいよ」


「楽しそうになに話されてたんで?」


「海賊時代の戦果だよ。ほら、アタシが初めてぐらいの大漁をあげた時のさ。って、お前いたっけ?」


「ひどいですぜ。その頃ならもう乗ってました」


「なら、変な貴族が乗ってたのお前も覚えてるか?」


「貴族…ああ、あのボンボンですね。いましたねぇ、確か再会を約束してる奴との思いでの品がどうたらとかで、やたら身に付けてた他のもんくれた奴でしょ」


「そうそう。あまりに必死だからさアタシも柄にもなくいいよって言ったんだけど、あの後どうなったかなってね」


「ありゃあ、他でも騙されますぜ。でも、何で急に?」


「いや、あいつもこんな銀髪だったなあって思ってね」


そういいながら副船長のお姉さんは私の髪をくるくるしてくる。


「そういやそうですね。どことなく顔つきも似てるような…」


「アスカ、ひょっとして…」


「そ、そうなのかな?」


ジョーンズ夫妻にもこの国で銀髪は珍しいって言われたし、お父さんなのかも。全然覚えはないけど。


「あん?知り合いかい?」


「知り合いというかなんと言うか…」


「そいつ、多分アスカの親父だよ。それ、15年ぐらい前のことだろ?」


「あ~、確かにそのぐらい前だね。げっ!ひょっとして不味い?」


「い、いえ、私は会ったことないんです。でも、思い出の品って言ってたの、もしかしたらお母さんが持たせたものかなって。それで大事にしてくれてたんだと思ったら…」


「悪かったね。知らないこととはいえ」


「いいんです。お父さんかわかりませんけど、聞いた話だと箱入りだったみたいですし」


「だね。ま、そこそこ腕も立つし、のたれ死ぬような感じじゃなかったね。最初は客の癖に、アタシたちに向かってきたからね」


「確かあのボンボン、魔法も使ってましたね。とっさに襲った船の船長を人質にしましたが、昨日嬢ちゃんが使ったぐらいの実力なら不味かったですね」


「そうだね。そういや、あん時の戦果記念に取っておいたよね?」


「ええ、隠れ家に置いたまんまですぜ」


「隠れ家?」


「ああ。価値のあるものもないものも、記念に取っているのがあるんだよ。あんたの親父さんかわからないけどひとつふたつはあるだろうね。今度寄った時にでも探しとくよ」


「いいんですか?」


「ああ、別に今は海賊じゃないしね」


「ちょい待ち!あんた、何で隠れ家に物が残ってるのさ!」


「何かあった時のために少しぐらいはね。知ってるのもそこの古参ぐらいだし、万が一アタシが捕まって処刑でもされた時の酒の肴にでもってね」


「姐さん、縁起でもないですぜ…」


「親父はそうだったろ?そん時に何もなくてね。そう思って集めてたんだよ」


「いい話ですねぇ~」


「これが海賊じゃなくて、騎士の家の話ならねぇ」


「二人とも反応が別れすぎだよ…」


こうして、二人目の迎えが来るまで海賊の頃の昔話を聞いたのだった。


「それじゃあ、乗船ありがとうございました!」


「お姉さんも元気で! 」


「ええ、宝を持って帰ったら誰に渡せばいいかしら?」


「ドーマン商会までお願いします」


「承知しました。では、よい旅になるよう祈っております」


「はいっ!」


船を降りて大地を踏みしめる。


「久し振りの陸地だね」


「…感傷に浸ってるところ悪いけどさ、ここってアルバの隣町だからね」


「もうっ!ジャネットさんにはロマンがないです」


「ロマンもなにもあたしはそれなりに来てるし…」


「うう~」


「それよりアスカ、宿決めて港の見学するんでしょ?」


「そうだった!早く行かなきゃ!ティタはもう肩に乗ってるから…アルナ、キシャルも行くよ!」


ピィ!


んにゃ~


さあ、ここからが本当の旅の始まりだ!





○○先生の次回作にご期待下さい!みたいな感じで終わってますが、ちゃんと続きますよ。

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― 新着の感想 ―
せっかくアルバの近くまで来たのなら、手紙とかくらいはアルバの皆に出しておきたいよね。 直接アルバに立ち寄ると「なんだ、もう帰って来たの?」とか思われそうだし
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