旅立ち
100歳になった俺は、麻衣ちゃん、芽衣ちゃん2人とに間に出来た子供7人に、その孫、ひ孫、玄孫たち大勢に見守られ、死の床についていた。
麻衣ちゃん、芽衣ちゃん2人ともさすがに歳相応にしわが増えが、まだあの頃の面影が残っている。
俺が元気だったら今でも抱きたいよ。
麻衣ちゃんはここ10年ほど車いす生活だ。ここ10年はどこに行くにも俺が車椅子を押していたが、もう押してやることはできない。
俺、2人とも幸せにできたよね。
子供たちも孫たちも立派に育ってくれた。
とくに籍を入れてやることができなかった芽衣ちゃんの子供たちもグレることなく立派に育ってくれた。
麻衣ちゃんとの長女、朱里。容姿が俺に似てしまいすまなかった。でもいい人に巡り会えて、その夫には先立たれてしまったが、立派に3人の子供を育てた。高校卒業と同時に結婚すると言い出したときは本当にびっくりしたぞ。向うで健司君に会ったときは、結婚に反対してすまなかったと謝っておくよ。
芽衣ちゃんとの長男、里喜。お前は運動神経も良くて勉強も出来て昔からモテモテだったが、俺の真似をしないで1人の女性を愛しぬいた。愛の形こと違えど、お前は立派だと思うぞ。それも大企業の役員にまでなって。
芽衣ちゃんとの二女、美里。芸能界に入りたいって言いだしたときはびっくりしたぞ。そりゃ、お前は麻衣ちゃんや芽衣ちゃんに似て幼い時から美少女だったが、お前の水着グラビアを見た時は心臓が止まるかと思った。それが今でも映画出演が絶えない大スターになるなんて思いもしなかったぞ。
芽衣ちゃんとの三女、英美。お前は子供のころから優しい子だった。病弱な敬明の面倒も見てくれた。看護師になったのは天職だったと思うぞ。結局、最後はお前に介護させてしまったな。ありがとう。
麻衣ちゃんとの次男、友希。お前が生まれた時は病弱で心配したんだ。俺より先に旅立つんじゃないかって。それが俺より長く生きてくれてありがとう。俺には理解できなかったがお前の研究は、ノーベル賞候補なんだってな。お前がノーベル賞を受賞するところ見たかった。
芽衣ちゃんとの四女。友実。里美に続いてお前まで芸能界入りするなんてな。でもお父さん、あの男は見てくれだけでダメだって言ったろ。正直、あのスキャンダルであの男と別れてさっさと芸能界引退してくれた時はホッとしたよ。そしていい人見つけて幸せになれてとても良かったよ。
芽衣ちゃんとの三男、英明。お前がなかなか就職しないで冒険家になるなんて言い出した時は驚いたぞ。それにしても全大陸の最高峰を制覇し、南極点、北極点まで行ってしまうとは。がんばったな。
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麻衣ちゃん、芽衣ちゃんをよろしくね。
もう俺にやり残すことはない。
「他にも何か大事な人たちを忘れてる気がする…」と思いながら、俺はそっと息を引き取った。
俺は、横たわる俺の周りで泣き崩れる家族を上から見つめていた。
みんな泣かないで。俺は幸せだったよ。
ほら、麻衣ちゃん、涙は似合わないよ。
芽衣ちゃんも、笑って。そう。笑って。みんな、笑って。俺はもう行かなきゃ…
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