時を戻そう
「神様、魔王の魂をとらえて参りました。」
「よくやってくれた。」
大手柄をあげたとは思えない沈痛な面持ちのリリィ、エルに向かい、神様は続ける。
「安心するがよい。
公園におった親子たちや、その他の魔王に関わった人間のもろもろの記憶は消して、公園の痕跡もなくしておいた。
魔王の戸籍もなかったことになっておる。」
「あの~神様。ご主人様や麻衣ちゃん、芽衣ちゃんの記憶も?」
「それは無理じゃ。おぬしらのことも含め、あの3人の再開からのもろもろの記憶も消えてしまう。
あの3人は再会から魔王と深く関連づいておるでな。」
「神様、私たちはどうなってもいいです。3人も何とかなりませんか?」
「方法がないではないが、良いのか?勇者たちはおぬしらに出会わなかったとこになるぞ。」
二人は顔を見合わせ、躊躇なく答えた。
「神様、お願いします。彼らの記憶からも魔王に纏わるもろもろの記憶を消してもらえませんか?」
「本当に良いのじゃな?」
「はい。かまいません。いくら相手が魔王だったとは言え、親が我が子を殺すなんて結末は悲しすぎます。」
「わたくしたちは姿を消して、旦那様たちの行く末をそっと見守ろうと思います。」
「わかった。では時を戻そう。」
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俺、桧山敬は、彼女いない歴=年齢のしがないサラリーマンだ。もう魔法が使えてもいい年齢のはずだ。
ある日、俺はたまたま見つけた昔ながら喫茶店で1人寂しくコーヒーを飲んでいた。
「コーヒー2杯に紅茶ですね。」
あれ?俺、なんで3杯も頼んだんだろう。
ま、いいか。それにしても、こんなところにこんな喫茶店あったんだ。たまにはレトロな雰囲気も落ち着な。
ドン!
「返すものはきっちり返してくださいよ~。」ドスの聞いた声が店内に響く。
店員も注意しようとはしない。よくある光景なのだろうか。
「す、すみません。娘の修学旅行の積立金が足りなくなってしまって。必ず来月にはまとめてお返ししますので。」
ん?どこかで聞いたことがある声だ。
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「あの~」
「あん?なんだてめぇ。こっちは仕事のまっ最中なんだよ。邪魔するな!」
「お返しするお金って、いくらなんですか?」
「あん?てめぇが立て替えるってか?月15万円だ。」
あれ?俺の手にお金がある。
「こ、これ。はい。あ、領収書ください。」
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