母の愛
「け、啓介、お前の相手は俺だ!」
「よかろう。相手してやる。」
「だめ!だめなの!啓ちゃん、たかちゃん、二人ともやめて~~~ぇ」
やっぱりだめだ、切れない。俺には切れない。
「う゛っ」
啓介の攻撃を交わすだけでも精いっぱいだ…、数発に一発はまともではないが食らってしまう。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。」
啓介の攻撃を刀で受ける。
バリン!
刀が折れる。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。」
もうだめだ、勝てない、もうだめかもしれない…
「啓介、なぜ…、よりにもよって啓介が魔王なんだ…」
この一瞬が何分、何時間にも感じる。
「ふん。これで最後だw」
俺が倒れそうになるその時、俺にとどめを刺そうとした啓介の腹から血しぶきとともに刀の刃が飛び出してくる。
啓介の手から鉄パイプが落ちる。
「ま、麻衣ちゃん!」
「啓介ごめんね。啓介ごめんね。こんなママでごめんね。啓介…」
そこには両膝をついて号泣する麻衣ちゃんがいた。
折れて弾き飛ばされた刀の刃を両手でつかみ、愛する啓介の背中に突き刺していた。
「ばかな!無敵のスキルを持った俺が、なぜ!なぜこんなただの女に!!」
足から崩れ落ちる、魔王。
「魔王、教えてあげるわ。それは、これが敵の攻撃ではなく、母の愛だからよ。」
「最後の最後まで、あなたには無敵のスキルの『無敵』の意味が分からなかったようですわね。」
「ばかな!そんな馬鹿な~~~!」
「友里!魂を!」
「うん。英里!わかった!」
:
:
:
いつの間にか夕暮れになっていた公園には、刃で血だらけになった手で啓介の亡骸を抱きしめ泣き崩れる麻衣ちゃんと、それをどう慰めていいのかわからない俺達がいた。
「啓介…」
夕日が血で染まった俺たちをさらに赤く照らしていた。