親方!空から女の子が落ちてきた
俺、桧山敬は、彼女いない歴=年齢のしがないサラリーマンだ。もう魔法が使えてもいい年齢のはずだ。
昨今の在宅勤務続きで運動不足を感じて、早朝、ランニングを始めた。
とはいえ、まだ始めたばかりで体力が落ちている。走れるのも2、3km程度だ。
そう考えると、毎日の通勤ラッシュもいい運動になってたんだな。
そんなある肌寒い朝、紫に煙る朝焼けの中をランニングした帰り道。何気なく空を見上げると何か悲鳴とともに落ちてくる。
「え?え?え?」
「きゃーーーー!」
どか~ん!
「痛たたた。え?」
倒れた俺の上に覆いかぶさる女の子。
頭に小さな羊の角のようなアクセサリー、お尻には小さな尻尾、背中に蝙蝠のような形の小さな羽を背負っている。季節外れの明らかに寒そうな露出の多い小悪魔コスの女の子だ。
二十歳くらいだろうか?ハロウィンの季節はもう終わっている。何より空から落ちてきた!?どうなってるんだ?
『親方!空から女の子が落ちてきた』なんて言ってる心の余裕はない。
「君、大丈夫?」
外傷はなさそうだ。けど、気を失っている。
俺が冷静だったら救急車を呼んでいただろう。ただその時の俺にはそんな余裕はなかった。
なぜだろう、冷静な思考を失っていた俺は、ボロアパートの俺の部屋に女の子を連れ帰り、敷いたままになっている布団に寝かせた。
(その時点で、やましい気持ちは一切なかったことだけは神に誓おう。)
いつものランニング後のローテーションで何も考えずに、風呂場でシャワーを浴びる。
服を着替えて戻ると、そこには目を覚ました女の子が、せんべい布団の上にちょこんと座っていた。
「あのぉ、ここはどこですかぁ?
あなたは誰ですかぁ?」
「えっと、ここは僕のアパートで、君は空から降ってきて、気を失っていたので連れてきた。
僕は、桧山敬。30才サラリーマン。あ、怪しことはしてないから安心して。」
露出の多い衣装が気になって余計なことまで言ってしまった。まずい、衣装からこぼれ落ちそうな胸元が目に入る。
えっと…えっと…
「き、君は?」
「わたしは、悪魔のリ…あ、名前は内緒です。死神見習いをしています。今死神の登用試験の最中で…」
グゥー