旅立ち
遠い、遠い、昔
世界は闇に包まれていました
異界から来た悪魔達に沢山の人々が殺されました
悪魔達の力は強大で人々は抵抗しましたが、とてもとても敵いません
もう打つ手はないのかと、人々は絶望しました
その時です
光が空から降ってきました
その光は12に別れ、とある12人の元に向かいました
目の前に突然現れた光に、当然人々は困惑しました
ですが、12人の中の1人が勇気を出して、そっと、光に触れると
光は輝く剣に変わったのです
残りの11人も光に触れると、輝く武器に形を変えました
何の力なのかも全くわからないこの武器のことを人々は神聖と呼び
武器に選ばれた12人のことを12神聖と呼びました
そうして12神聖達は異界から来た悪魔を神聖の力を使って倒しました
こうして世界は平和になったのでした
おしまい
ーーーー
「そんなめちゃくちゃな話あってたまるかよ」
狭い部屋の中、青年は読んでいた絵本を放り投げ、本は当然音を大きく立て落ちる
同時に落ちた付近のほこりが周囲に撒き散った
「ごほっごほっ、っ!」
舞った埃が喉に入り、噎せる
そうしている内に本の音を聞き付け、母さんが
「こら、マリオン!本を放り投げないの!昼御飯無しにするわよ、もう!」
と、怒った
昼御飯無しは困るので、放り投げた本を拾い、本棚に戻す
母さんが突然、とんでもなく埃っぽい物置部屋の掃除を押し付けてきて
少しむしゃくしゃしたのもあったが、絵本を放り投げるのはよくなかった
母さん耳だけはとんでもなくいいのだ
しかし、まあ、よくこんな馬鹿馬鹿しい本が好きだったなあと、思い出す
大分拠れたその絵本、俺が幼少期の頃とても好きだった本だ
「………はぁ」
少しため息をついて、部屋の掃除を再開する
面倒なことには変わりないが、この部屋を掃除しないと母さんが怒る
「………?なんだ?」
部屋についている小さな小窓の向こうから何か光が見えた
ホコリだらけなのだから窓も当然汚い、なのに光が見えたということは
……魔法か?昼なのにも関わらず、光魔法が必要とは思えないが……
そう思い、小窓を少し手で拭う
「なっなんだ?!」
光がこちらに向かってきてることに気づく
光というか、何かの物体………?の様だ
誰か知らないが勘弁してくれ、と思い、窓から離れる
依然として、光はこちらに向かってきている
そして、光は窓から部屋に入ると__
「うわっ!?」
視界が光に覆われて、思わず目をつぶった
光が消えた後3秒程目をつぶり、恐る恐る目を開く
怪我はなかった、が、腕にさっきまで無かった
金属で出来た手袋の様な物がついていた
「な、なんだこれ!?」
すぐに取り外そうとするが、全然取れない
腕と同化したかの様だ、冗談じゃない
それでも必死に、腕についたソレを外そうと手を動かす
カチャカチャと金属音が鳴るだけで、全く動かない
「くっそ、外れねぇっ!なんだよこれ!!」
「どうしたの?マリオン……あら?何それ?」
「なんか、腕についた!」
「ええ?そもそもそんなの家にあったかしら………」
「よくわかんないけど、外から光が来て………気づいたらついてたんだ」
必死に母さんに伝える、こんなの手に着いてたら目立つし動かしずらいから困る
母さんは手に着いたソレを触り、調べているが__
「………?魔法かしら……でも、魔力が篭っている様には見えないわね……?」
「どうしよう……?」
「叩き壊すか、取り外す………解呪の魔法が使える人に頼むか
そのくらいしかないわ………そもそも初めて見るわね……確か……
冒険者の方々がつけている、ガントレット………って武器だったかしら」
「ガントレット………?」
初めて聞く……そもそも戦いとは無縁の生活を送ってきた
この金属の手袋が………武器なのか……?
改めて見てみると、確かに武器になりそうな気もする
魔法鉱物の金属なのか、ただの金属なのかわからないが
魔物であってもコレで殴ったなら、倒せそうな気がする
表面はでこぼこしていて変わった模様が刻まれている装飾なのだろうか?
宝石……?が手の甲に埋め込まれているのも装飾なのか……?
魔力視覚を使って見てみるが、コレ自体に魔力は無いようだ………
「一先ず、叩き壊して見る?」
そういって何処からか持ってきたハンマーを手に母さんは聞いてくる
「え!本気なのかよ母さん!?それ俺の腕も折れない?!」
そのハンマーは魔法鉱物で作られている、というかうちの商売道具だった
「うーん、五分五分かしら、魔力が無いとなると、その分耐久性がないと思うのよ
でも、この金属……なにか普通の金属と違う気がするのよ
ちょっと弱めにやって、壊れたらそれでいいかなーって感じかしら」
「マジかよ……でも、確かに、普通の金属って感じじゃないな……」
魔力が見えない以上、ただの金属なはずなのだが………
金属にはかなり詳しく知ってる俺と母さんから見て
ただの金属とは思えないということは、多分ただの金属ではない
腕が一緒に木っ端微塵にならないのなら、それが1番かもしれない
「どうする?止める?」
「………いや、やってくれ、これじゃあ明日仕事出来ないし……
で、でも、加減して、ちょっとずつ壊してくれ……」
普通の金属だった場合、腕が飛び散る可能性も否定出来ないが
明日仕事出来ないのも困る
今から普通の金属で出来たハンマーを買いに行くのは難しいのだ
魔力が籠ってない金属は基本的に市場に出回らないから
そのハンマーも無いはずだ……でも素手で壊すのも無理がある
必然的にこれが最適なのだ
「わかってるわ、じゃあちょっと外でやりましょう
金属片が飛び散るかもしれないし、ゴーグルとかも持ってくるわ
外で待っててね、マリオン」
「うん、わかった」
ーーー
結果から言うと、全く壊れなかった
最初の方はただ力が弱いだけだと思っていたが、そんなことは無かった
フルパワーで叩いたのに地面にクレーターが出来ただけで
この金属は少しも欠けなかった
「うそだろ…………なんだこの金属………」
「ここまでして壊れないなんて……なんなの?これは……」
「重さはあんまり感じないから、この金属は多分アダマンタイトの類じゃない
そもそも、これ魔法鉱物じゃないのになんでこんなに耐久性が………?
衝撃吸収に優れた鉱物もあるけど、こんなに軽いはずが無い………」
「……まだ知らない鉱物があったとしても、可笑しいわ……」
その日はもうどうすることも出来ず、そのままにすることになった
1ヶ月経っても、そのままだった
「………はーっ、くそ、やりづれぇ……」
昼休憩の時間になり作業を辞める
俺の仕事は、飛行船を作る仕事なのだが、基本素手で繊細な作業をするのだが
未だにこの謎の金属で作られたガントレットは取れなかった
仕事を休む訳にも行かず、やりづらいがそのままやっている
「災難だなーマリオン」
「他人事だと思いやがって、この」
同僚のオリバーをどつく、素手が本当に羨ましい
「つか、本当になんなんだろうなその、なんだっけ、が…、が、……なんとか」
「ガントレットだ、いい加減に覚えろ………
そんなんだから、リア姐さんに怒られるんだぞ」
「へーへー、で、シアさんが調べているんだっけ?ソレについて」
「うん、母さんが調べているよ、1ヶ月調べて何にもなし」
「うっそだろ………?シアさんの人脈使ってそれか?
そんなイカれた金属本当に人間が作ったのか……?」
「もしかしたら、古代の遺物かも?」
「うわっ?!」
いきなり後ろから声が聞こえてきてびっくりした
「ミアコかよ!驚かせんな………」
「ごめんってー、マリオン
だって面白そうな話してんだから気になっちゃうでしょ?」
「面白いと言って、金になりそうな話と書く」
「オリバーは黙ってねー?」
「マジかよ……本当に金にがめついな」
十中八九このガントレットを売りに出そうとしてる
外すにしても、何にしても、手数料を取るだろう
このミアコならば、そうするだろう
「まま、見せてごらんなさい
ディセーブでも重宝される私の目利きなら
お値段………じゃなかった、どの年代の遺物で
何の素材使われているかくらいはわかるだろうし
私の人脈を頼ったらなんとか出来るかも知れないからね?ちゃんと手数料は貰うけどさ………?」
ディセーブ……砂漠地帯デゼールに位置する国
古代の遺物研究、古代魔法の研究
その他現代に置ける魔法の研究……学者大国である
そう呼ばれているディセーブの学者が
ミアコを雇ったんなら相当人材が足りないのだろう
研究のリターンよりもミアコを雇う為の金または財宝
が多くなるだろうから
「「うわぁ…………」」
「ねぇねぇマリオンくん♡それ煩わしいよね?
取りたいよね?今なら
いつもの半額の2倍で受けるよ?」
「変わってねぇじゃんおい」
「いつもの詐欺の手口だな」
「半額の2倍って安くなったって
勘違いする方が悪いでしょ?詐欺じゃないない」
「やっぱろくでもないな」
「見るだけで金取るなら勘弁してくれ」
「いや、鑑定自体はただでいいよ?でも
腕から外すための協力が欲しいならしっかり貰うからそういうことで、鑑定はさせて?
一応同僚だから、変な呪物で死んで欲しくはないし」
「わ、わかった」
呪物の類だったら俺になんの恨みがあったんだ
これといった心当たりはない
そんなことを考えている内に
ミアコはガントレットを鑑定し始める
いつもと違った真剣な………
いや金になるから本気で見ているのだろう
「………あれ?なにこれ初めて見る………」
「なんかわかったのか?」
「これ、ここ500年の物じゃない」
「………?そうなのか?」
「うん、もっと古い物………ならこれ
100リセルはくだらないものだ………と思う……」
「は?」
「100リセル………って、ほぼ国家予算じゃねぇか!」
「ゆ、優秀な物なら、だけど
でも軽くて衝撃も吸収できて、壊せないなら
多分そのくらいはする………よ
ほ、本当にどこから出てきたの、それ」
オリバーとミアコはドンドン俺から離れていく
「私が値段吊り上げなくても価値がある……
というか、ディセーブの姫巫女様に
謁見出来るくらいの代物だよ」
「いつもは吊り上げてんのな……というかそんなもん
腕ごと奪われねぇの………?」
「お、オリバー!怖いこと言うなよ!!」
「全然あると思う」
「マジかよ!!」
とんでもない物が腕に着いていたらしい
腕ごとガントレットを奪われるのは困る
ガントレットは使えないしどうだっていいが
腕を奪われるのたまったもんじゃない
「知り合いの学者さんとかに詳しい人居たっけ………」
「古代の遺物が腕についてるなんて話に
詳しい学者って普通居ないだろ…………」
「現実的に居るだろここに!」
からーんからーん
昼休憩の終わりを告げるベルにしては早い
そう思った時に、アナウンスが入る
「マリオン、風石散布係のマリオン
至急、応接室に来い、至急応接室に来い」
さっきまで話していた内容が思い出され
何だか嫌な予感がしてならない
「………腕、取られるなよ」
「そうなったら全力で逃げる」
「お金になりそうな感じだったら
私にも聞かせてね!
……後、腕取られたら良い医師教えるよ」
「腕取られる前提で話すなよ………」
正直に言うと本当に怖いが……
別の用事だった場合ドヤされるのは困る
そう思い、応接室に向かう
ドアの前につくと
中からかなり騒がしい声が聞こえてくる
一応ノックすると声が収まり、ドアが開く
「貴公がマリオンか?」
とても広いとは言えない応接室に
多分、フォルノの身分の高い人達が6人程
その1人の女の人が俺の前に立っており、そして
「マリオン!」
「か、母さん………え、っとどういう状況………?」
母さんが居た
「貴公がマリオンで間違いないな
そのガントレットが何よりの証拠か……
マリオン殿、我々と同行して貰う」
「え、な、なんで?」
「息子は渡しませんと、言いましたよね?」
「か、母さん何があったの」
状況が全くわからない、それに誰なんだこの人達は
そしてさっきの声はこの人達と母さんの口論によるものだったのだろうと察しがついた
「話すと長くなるが単刀直入に言うと
貴公に世界を救ってもらいたい」
「は?」
今年一番の間抜け面で答えた
拙い文章です、大目見てくださると幸いです
完結目指して頑張りますが
更新は不定期になると思います、申し訳ないです