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ボーイフレンド

ボーイフレンド

作者: くりはしみずき

「そっか、フラれたんだね。えっ、ストレート過ぎた?」

「ざけんな、慰めろよ、ちったあ」

 あのコ、見る目がないんだな。いいヤツなんだけどな、コイツ。

 確かに優柔不断で頼りないとこはあるけど、ね。


「お前が先輩とケンカした時、先輩のバイト先の山中湖まで運転して行ってやったのは誰だよ」

「はー、その恩着せがましさ。この話いっつもでるよね、いつまで言うつもり?」

 確かにあの時は、おかげでヨリ戻せたけどね。

 感謝はしてるわよ。そりゃ、感謝は。

 でも、あんたが泣きじゃくっていた私を無理矢理車に押し込んで、勝手に連れて行ったんでしょ。

 あの夏に先輩が住み込みでバイトしていた山中湖まで。

 大体、栃木から山中湖まで何時間かかると思っていたのよ。

 昼前に出て、着いたのは夜に近い夕方。

 私を先輩のバイト先に落として、自分は独りで湖畔ドライブとか言っちゃって、いなくなったクセに。

 おかげで私は、驚く先輩と話し込んで、ぶつかり合って、仲直りできた。

 あんたと合流して、栃木の家に帰ってきたのは夜中。

 運転変わろうかって、何度か言ったよ。

 でも、まだ死にたくないって笑いながら言って、最後までハンドル握ってたのは、あんたの勝手でしょ。

 しかも、行きは自分だって大した経験ないくせに、私に散々恋愛について講釈して、先輩と仲直りした帰りはカーステであんたの好きな音楽ばっかりかけて、自分はだんまりだったくせに。

 ま、懐かしい話よね。


 あの頃、進学した大学は違ったけど、帰りは待ち合わせして時々一緒に帰ったよね。

 電車の中の会話でよくあったのが、男女間に友情は有り得るかなんて、いつでも青春時代では王道の議題。

 結論、有り。

「だいたい、俺たちがそうじゃん」

 なんかお互いに確認し合っていた感じだったのかもね。


 時には、親友の女友達やカレシにさえも話せないようなことだって相談できた。

 つらい時、悲しい時に声が聴きたくなったことも一度や二度ではなかった。

 だって、あんたと私、絶対にカレシ、カノジョになることは無いってわかっていたから。

 でも、絶対にお互いの味方でいてくれることを信じられていたから。


 そうそう、あのコの話ね。

「あのコ、いいコだったけど、あんたとは合わない気がする」

「どんなトコがだよ」

「うーん、うまく言えないけどね。あんたのこと知っている私が言うんだから間違いないよ」

「なんだよ、それ」

 不思議と納得しちゃうんだ、そんなんで。

 家族以外では、一番私のこと理解しているのもあんたなんだから、これ、お互い様だよね。


 お互いにもう、あの制服を着て輝いていた季節じゃなくなったもんね。

「まあ、今のカレシとお前はお似合いだと思うよ。あのクソ先輩とは違って」

 今度は上手くやれよ、なんて余計な一言もトッピングされて返ってくる。


「ねえ、式はともかく披露宴には出てくれるの?」

「行かねえよ、んなもん」

「私の花嫁衣裳見たくないの?」

「見たくないね、んなもん」

 ま、立場が逆なら私も行かないかも、見たくないかも。

 わかる。


「やっと肩の荷が下りてるってもんだ」

 相変わらずの憎まれ口。

 なに卒業気分になっているのよ。


 親友でもない、カレシなんてとんでもない、でも私の一番の理解者。

 今まで本当にありがとう。

「幸せになれよ」

 本当にありがとう。


 追伸、これからもよろしくね、ひき続き。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。


徒然なるままに書かせていただいた、小品です。

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