エピソード3 キルトの憂鬱
「あ!キルト久しぶり〜!」
「え!?シエルミンテ?」
あれ?この子、普通に俺の前に現れたぞ?
記憶がなくなるって言ってたから、テッキリ俺が探しに行くのかと思ってたのに・・・・。
「記憶、残ってるのか?」
「そうなの。ちょっと想定外な事態に陥っちゃってて。人間に肩入れし過ぎたのがまずかったみたい。中途半端に人間として落とされちゃった」
落とされちゃったってなんだろな?
何かに落選したみたいな?抽選に外れちゃいました的な?
「っうわ!何この可愛い子!キルトの知り合いか?」
「・・・・この子が話したシエルミンテだよ。普通に俺の前に現れたけど・・・」
「今は俺の屋敷で預かってる。どうも精霊だった頃ゴルドと接触があったらしいぞ?」
「あれ?ギャド来てたの?って、え?ギャドの所で保護してるの?」
何だそれ。
じゃあ俺、意味ないんじゃ?
記憶もあって保護してくれる奴もいるなら俺必要ないよな?それに俺の他に恋する相手を探すとか言ってたし。
「キルト?私と会えて嬉しくない?」
「・・・・嬉しいよ。でも、俺役に立ってないからなぁ」
「え〜?そんな事ないよ?キルトは私の目印なの。迷ったら貴方を頼りに戻って来れるんだよ?」
それ、どうなんだろ。俺はあれかな?灯台か何かなのか?
海で遭難しない為の目印的なアレ。
「なんだよキルト羨ましい!!こんな可愛い子、俺なら一発オーケーだよ!何故行かない!お前可愛い女の子大好きだろ!!行けよ!!」
メルロー。
お前本気でぶっとばすぞ?
そして真面目に応援する気あるなら、それ本人の目の前で言わないでくれるか?全て台無しだぞ?
「そうなの?キルト可愛い女の子好き?私可愛い?」
・・・・・・グハッ!!
そんなストレートに可愛く聞かれてしまうと頷く他ない。
そして、なんだろう。この子ピュアだ。限りなくピュア。
悪い意味で。
「可愛いよ。危ないから一人では出歩かないで欲しい」
「キルト、私の事好き?」
「・・・・・うーん。どちらかといえば。好きなタイプ」
ニコーー!!
「やったー!!私キルトの好きなタイプになったー!」
「・・・・・・キルト。大変だ。この子今ので、この宿舎の男共を虜にしたぞ?」
面白がってんじゃない!!これは問題だぞ?大きな問題だ!モテない男達がシエルミンテに群がっちゃうじゃないか!!
「ただいま帰りましたー!おや?お客様ですか?とっても可愛い子ですね?」
「あ!ティファ!私、シエルミンテ!仲良くしてね?」
「え?シエルミンテって・・・あの?随分姿変わったんだね?」
あ、そういやシエルミンテって前の姿で変化してハイトと会ってたって・・・確か・・・・あれ?
「・・・・・ハイトさん。この子に近寄らないで下さい」
「「ん?」」
ティファ?顔が怖いけど、どうしたんだ?
シエルミンテも目が点に、ああああ!?
「姿が変わってもちゃんと覚えてます。貴方ハイトさんに蛇の如く絡みついてた精霊さんですよね?ベタベタベタベタ触ってましたよね?」
「あ、そうだったけ?あの時はハイトを大樹と引き合わせないといけなかったからぁ。悪気はなかったんだよ?ティファだってその時は、見て見ぬ振りしてたよね?」
ハイト。ハイトー?顔、顔が凄いぞ?緩み切っている。
そうだな。ティファがデレるのが嬉しくてしょうがないのはわかるぞ?だか、俺は複雑!!とっても複雑!
「今は違います!ハイトさんの恋人は私ですので!そんな可愛い顔でハイトさんに近寄らないで下さい!」
「そんな事しないよ?恋人にするなら、ちゃんと私の事好きになってくれる人じゃないと。だから、安心して?」
「そうだよティファ。僕がティファ以外と付き合うなんて有り得ないでしょ?それに、別人みたいなものだよ?これだけ姿が違えば」
ティファさん?なんで思いっきり、ふくれっ面に?
なんだろう。素直にいじけるティファって、とても可愛い・・・・。
「おいキルト? 何その顔? 殺すぞ?」
「奇跡の生還を果たした俺に、よくもそんなセリフ吐けるなお前。マジ感心するわ、お前のティファ愛」
あと横でさっきからニヤニヤしてるお前もな?
ちょっとマッジンは何処に行った?
もう一人のツッコミ担当!!
「そういう事じゃないんです。・・・・ハイトさんの・・・・・バカ」
キューーーーーン!!
「・・・・・あれ?ここにもう一人・・モテない男共を虜にしちゃう可愛い子がいるぞ?見間違いかな?」
「ちょっ!!ここに来ていきなりトキメキ度を上げてくるのやめて下さい!俺ハイトに殺される!!ぐぁ」
「えーーー?ティファが私の障害なの?それはそれで面倒だなぁ?」
いやいや、シエルミンテ。それはないから。
そうなったら、ここ血の海になるから。
気配を悟ったハイトが既に剣に手を掛けてるから。
皆、冷静になろう?
「お前ら、相変わらずだなぁ?いい加減大人になれよ」
ギャドにそんな事言われたらお終いだよ!
ほら、解散だ!
そしてシエルミンテ!
「あのね?人間は思った事をそのまま口に出したりしないんだ。相手が驚くから。シエルミンテも、気をつけた方がいいと思う」
「そうなの?じゃあどうやって相手に自分の想いを伝えるの?」
「だからね?そういう事は相手と二人の時に伝えるんだよ。相手の気持ちや周りの人に気を配ることも人間の嗜みの一つなんだ」
ちょっと難しいか?
でも、この調子でいかれると一々誤解を生みそうで怖い。
俺、目が離せなくなる。
「わかった。じゃあキルトと二人きりの時、言うね?」
「うんうん・・・うん?」
「私に好きな人が出来たら、一番にキルトに言うからね?安心して?」
ちがーーーーう!それを聞かされて俺はどうしたらいい?
笑顔で受け入れたら満足ですか?シエルミンテさん?
「よーーーし!改めて。頑張って恋人作るぞー!」
メルロー!!おっまえだからニヤニヤしてんなよ?!
少しは事態の収拾に手を貸せよ!
やっぱ生き返るんじゃなかったかな?俺。
トホホ。




