第47話
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
「す。凄い。お、音がどんどん広がっていく」
「なんだこれ・・・なんて、綺麗な音・・・」
どういう事よ?
なんで精霊しか聴けない音色を私達聴いてるの?
「凄い!こんなに沢山広がるなんて!凄いわキルト!」
そして、何この子。
さっきからキルトにベッタリくっついてるけど、あんた誰?アレ?でも待って?話の辻褄が・・・。
「あのーもしかして、君が精霊とか言わないよね?」
そ、そうよね?だって私達バッチリ見えてるし。
触れるし、足だって生えてるし・・・・ひ、人よね?
「そうだよ?少しの間だけ人の姿になれるの。秘密だよ?」
「・・・・・ワーォ・・異種間交流バンザーイ」
いやいや、ザック違うわよ。
この人、異種どころか生物ではないのでは?
精霊よ精霊。
おとぎ話の生き物だから!!
「あら?でも、ちょっと波紋が広がりすぎちゃって大変な事になってるね?皆、愛に飢えていたのかな?」
「え?何か問題でも?」
「私以外にも音色が聞こえているの。相手の気持ちがね?皆思いの外、素直になっちゃってるみたい!愛が溢れでてるぅ」
溢れでてるぅじゃねっつの!!
大丈夫なのそれ!さっきから音が全く鳴り止まないんだけれど?なんだか私も胸がとても熱くなってきたし!
「うおー!!なんか創作意欲湧いてきたぁぁ!!なんだこれぇ!!」
「俺も無性に新しい品種開発したくなってきた!!やる気みなぎってきたぁぁ!」
大丈夫じゃない。絶対大丈夫じゃないわよ。
ちょっと一回止めてもらえる?大暴走が始まりそうだわ。
「あれ?エルハド凄い!こんな音エルハドから届くなんて・・・明日から嵐、続くかもねぇ?」
「怖い事言わないでくれる?嵐なんて起きたら私達大打撃だから!とにかく止めてもらえないかな?」
え?無視?
ちょっと貴女、何空を見上げたままキルトの手を握りしめてるの?二人だけの世界なの?
もしもーし?外野見えてますかー?
「思わぬ手助けになったみたい。キルト、ヨシュアが来るよ?ここの穢れを浄めてくれる」
「え?ヨシュアが?でも、力は使えないって・・・」
何?遥か向こう側から青い光がこちらに向かってやって来てる?え、え?凄く大きな・・・・。
ビュンッ!
「わ!!え?ヨシュア?」
「ヨシュアさん!?アレが?」
「わ!ちょっとイノリ見て!種を植えた畑が!!」
凄い・・・・みるみるうちに種から芽が出て花が咲いた。
ヨシュアさんが通っただけなのに・・・。
「うっ・・わあ!!山、が・・・」
枯れ落ちて色が変わっていた場所が一気に青色に変化してる・・・・・・これ・・・伝説の、青い狼?
「・・・・・・・綺麗・・・まるで、マチ湖の水面みたい・・・鮮やかな、青色だわ」
「本当に綺麗ね。でも、その後はもっと綺麗よ?」
え?どういう事?
山から、青色が・・・散っていくわ・・・。
「ちゃんと浄化されたのね。見て、青が消えた場所が今度は緑色に変化していくわよ?」
「・・嘘みたいだ・・・・こんなもの、直で見られる日が来るなんてよ・・」
リーーーーーーーーン
「シエルミンテ。こんな事して、大丈夫なのか?」
「精霊としては駄目。私ちょっと手を出し過ぎた。ねぇキルト・・・・・」
「何?」
「私が貴方のこと忘れちゃっても、私と一緒に居てくれない?」
リーーーーーーーーン
この子グイグイ来るわね?
でも、精霊が人間のキルトを好きになっても、ねぇ?
人間になれる訳じゃないし、そもそもコレなんの話かしら?
「うーん、困った。シエルミンテ。俺君とはこの前ちょっと話したくらいだし、正直約束は出来ないよ。ずっとは無理かも」
コイツ、素直すぎる!
純粋に断りやがったわ!これ、激怒するんじゃないの?
大丈夫なの?
「そうなの?じゃあずっと、とは言わないよ?私人間になっちゃったら全ての記憶を失っちゃうから、最初だけ一緒に居てくれればいいよ?無理に好きにならなくていい」
え!?この子人間になるの?一体どうやって?
誰かの体を乗っ取るとか?怖っ!!
「・・・・それなら何で人間になるんだ?」
「必要だから。新しい精霊が生まれるの。私は人になって誰かと子供を作って子孫を残すわ。貴方が嫌なら、他の誰かを探しに行く」
リーーーーーーーーン
「え?そうなの?じゃあ俺のお嫁さんになる?」
「いやいや、俺でしょ?君可愛いから大歓迎だよ?」
おい。あんたらここにも年頃の女性がいる事、忘れてないか?コラ?ぶっ飛ばすわよ?
「そうなの?じゃあ私が人間になったら改めてアプローチしてね?記憶は無くしちゃうけど、それでも良ければ」
「えーーーーーーっ・・・何、それ」
馬鹿らし!!もう勝手にやってなさいよ!
全く!こんな事ならキルトの心配なんてするんじゃなかったわ!!本気で心配した私が馬鹿だったわ!!
リーーーーーーーーン
「本当、馬鹿ばっかりなんだから・・・」
でも、素敵ね?
きっとこんな事二度と体験出来ないでしょ?
私達今、この国の歴史の一部になってるんじゃないの?
「ありがとう、シエルミンテ。ヨシュアに力を貸してくれて」
そうね。私もお礼、言っておこうかな?
「ありがとう。私達を見守っててくれて」
「ありがとね?長い間お疲れ様でした!」
「後のことは任せろ!ありがとな?」
リーーーーーーーーン
「こんな始まり方も、悪くないね?一人ぼっちで消えるなんて、つまらないもの」
ゴウッ
「きゃぁ!?」
「うわ!」
「え?水?」
もう、私キャパオーバーかも。
色々なことが起こり過ぎて、もう、何がなんだか・・。
「新しい子を宜しくね?サウジスカルに幸あらんことを」
ただ。
私達は守らなきゃいけないわ。
それだけは、なんとなくわかった。
新たに生まれた私達の・・・・・。




