第46話
なんだ?
さっきから身体がザワザワとするような、変な感じがするぞ?あの男が逃げ出して、それどころじゃねぇってのに。
「アイラ!いるか?」
「ヨシュア様?どうしました?」
良かった。アイラは無事だったな?
ティファがいる筈だが・・・出掛けてんのか?
「アイラだけか?」
「え?はい。ティファはハイト様と出ておりますわ。ちょっと意地悪してしまいました」
なんだよ。お前また何かしたのか?
一人だと危ねぇから家まで送って行くか。
「捕らえていた領主が逃げた。危ねぇからお前、今日は帰って家から出るな」
「そ、それは・・・ヨシュア様大丈夫ですの?」
「ああ、あの花は持ってない。剣なら負けねぇよ」
急いでここを出ねぇとな。
あの男の目的が何なのかは分からないが、あの身体で逃げ出すのは不可能だ。
リーーーーーーーーン
「・・・・・何でしょう?何処からか、綺麗な音が・・」
「音?そんなもんするか?聞き間違い・・・」
リーーーーーーーーン
「・・・・・じゃ、ねぇな?なんだ、この音色」
・・・・もしかして、さっきからずっとか?
気付いていなかっただけで?一体何処から?
・・・・・え?これ、は。
「・・・・・ヨ、シュア・・」
「!・・・お前・・・・」
「ヨシュア様!」
リーーーーーーーーン
「・・・・・・・」
「ずっと、ずっとお前を恐れていた・・・いつか、いつか私を罰しに来ると・・・・あの、花の所為で・・・」
リーーーーーーーーン
「・・・・ヨ、ヨシュア様」
リーーーーーーーーン
「ヨシュア・・・・・」
リーーーーーーーーン
「お前の母親を死に追いやったのは私だ。私があの花の入ったお茶をお前の母親に渡した」
リーーーーーーーーン
「私が・・・・ロザリアを殺した」
・・・・そうか。
そういう事だったんだな?
よく分かんねぇけど。これは、シエルミンテの仕業か?
「・・・・・・・あんた。母様の知り合いだったんだな」
「ーーーーーーッ!」
「じゃなきゃ、母様が出されたお茶を簡単に飲むわけない。それに、お茶を淹れたのはあんたじゃないだろ?キルトの父親だ。あんたを・・・助けるためだ」
「な・・・・なん、で・・・」
リーーーーーーーーン
[・・・がとう・・・私を、ここから逃がして・・くれて・・バレたら・・・あなた・・も・・大変なのに]
リーーーーーーーーン
[じ・・・かんを・・かせいで・・・ヨシュアを・・・あの男の・・・から・・隠したい・・・]
リーーーーーーーーン
あんたら、三人とも幼馴染だったんだな?
「そんなに辛かったか?俺に罰して欲しかったのか?キルトを、親友の息子を殺してまで?」
リーーーーーーーーン
「本当は、母様を殺すつもりなんてなかったんだろ?どさくさに紛れて逃すつもりだった。でも、あんたは二人を失ったんだな」
「・・・・・・・うっうぅ・・・」
「あんた、馬鹿だぜ・・・・・あの親父に渡すくらいなら、一緒に逃げれば良かったのに・・・・・」
簡単に、母様の居場所バラすんだから、本当使えない親父だぜ。こいつもさぞ後悔しただろうなぁ。
「・・・・・俺は、そんなに母様に似てるのか?」
「瓜二つだ。まるで、鏡に映したように」
「そっか。良かったな?俺が親父に似なくてよ?」
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
「キルトは死んでない、生きてるよ。あんたは、あの土地が嫌いだと思い込んでるけど、本当は違うだろ?あんたが一番嫌いなのは自分自身だ。無力で責任を取ることも出来ない、自分を許せないんだろ?」
行かないと。
今なら多分出来る。
ありがとな。シエルミンテ。
「ヨシュア!!」
「おい!いたぞ!」
「・・・・・・ヨシュア・・・さま?」
リーーーーーーーーン
「ひでぇなぁ・・・・・・俺かよ・・・・・かぁさま」
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
ーーーーー。
「え?私がシェスタ様の後妻?無理ですわ!」
「お願い。貴方にしか頼めない。カーシャ愛がなくてもお金があればいいって言ってたじゃない」
「ロザリア様・・・貴女はまだ生きていますわ?それなのに、こんな事お約束出来ませんわ」
「いえ。私はもう助からない。私がいなくなったら、ヨシュアが次に狙われる。今は私の友人がなんとか隠してくれているけど、私がいなくなったら直ぐに知れてしまう。私がヨシュアを外に出さない理由、知っているわよね?」
「・・・・・・本当に。無理ですの?」
「ええ。だからカーシャ。お願い、あの子が大きくなるまであの子をなんとか、あの男から隠し通して。一生のお願いだから・・・・」
「・・・・・分かりました。もし、貴女にもしもの事があれば、私がヨシュアを隠しますわ。絶対に、守ってみせます!」
「この事、ヨシュアには言わないでね?あの子は責任感が強いから、これが知られたら、きっと一生自分を許さない。私に、そっくりなの、あの子」
「お約束しますわ。貴女にはご恩がございます。安心して下さいまし」
「ありがとう・・・・・・・ごめんね?カーシャ」
「いいえ?貴女にそっくりな息子が私に出来るなんて、私とても幸せですわ!大切に育てますから!」
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
「アイラ」
「はい?」
大事な言葉はちゃんと伝えないといけない。
失って後悔してからじゃ・・・・・遅い。
「俺。お前の事好きだわ。愛してる」
「ーーーーーーッ!」
ゴゥ!!
「ヨシュア!!お?おい?なんだその姿!!なんで、青く・・・・・」
「ヨシュア様!!」
[アォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!]
声が聞こえる。
この国の人々の声が。
俺の中にある、俺とは違う何かが俺を導いてくれる。
「青い・・・・狼・・・」
ビュンッ
行こう。
呼んでる。
今なら聞こえる。
この世界を慈しむ歌が。




