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第38話

「ヨシュア君。君の新しいお母様だよ?」


ボンヤリと、この男は多分可哀想な奴を放って置けないんだろうなと子供心に思った。


俺の母親も行く所が無くて親父が引き取ったと聞いていたからだ。だから、後妻の彼女がうちに来た時、俺はなんとも思わなかった。ああ? そうなのか? ぐらいだ。


「仲良くしましょうね?ヨシュア」


だからと言って仲良くしたいとも思わなかった。

彼女は暮らし出して直ぐに親父の不甲斐なさに気が付いた。そして、関心を俺にうつした。俺の将来に自分の未来の希望を押し付けて来た。俺が騎士になろうと足掻いているその横で、要らない妨害をよくされた。


本当にデズロ様がいなかったら、俺あの家出れてなかったな。実は俺が騎士になれたのは、ペシュメル様の寛容さと、デズロ様がエルハド様を説得してくれたからだ。


多分そうしないと俺が駄目になると二人共分かってたんだと思うぜ?口には出さないけどよ。俺、デズロ様にはとても感謝してんだよ。とても、良くして貰ったと思う。


でもよ?今思えばどうやってエルハド様、納得させたんだろうな?だって俺いわば絶滅危惧種だぜ?国としては失いたくない人材の筈だけどな?一度その事を聞いたら笑いながら変な事言ってたな。


「え? どうやって? うーん・・・僕の言う事聞いてくれないなら僕はヨシュアに付きっ切りになって離れない。それ以外何もしない。エルハドとも絶交って言った」


子供!!いや、幼児!この人本当に幼児だ!!いや、流石にアレは冗談だったと思うけどな?だから、あの人の暮らしを脅かすようなもんはさ、出来るだけ排除しようって・・・それなのに、この有様。


結局大して役に立ってねぇし。

まぁでも、この前偶々発動した力のお陰でエルハド様は助かったって言ってくれたけど・・・。


「お腹を撫でたいですわ。上を向いて下さいませ」


くれ・・・・た、けど・・・。


「本当に、本物と変わらないのですわね?くすぐったくないですか?」


ダーーーーーーっ!!くすぐったいに決まってんだろ!

色々な!! だが、それよりも俺は違う事を考えていないととてもじゃないがこの場を凌げない状態に陥っている!


いや、コイツが許してくれるまで絶対頑張ると心に誓って事に及んだけどよ?俺の本気を上回る力出して来るんじゃねぇぞボケェ!!俺の、俺の理性が・・・・。


「本当に素敵。大好き」


ひーーーー!! いや、これは犬に対して言っている。

俺じゃない。犬を愛でてんだ犬を! 勘違いしてるんじゃねぇよ俺! そしてアイラ、お前どさくさに紛らてあちこちキスすんじゃねぇーぞ! 実際には顔を埋めてるだけのつもりかも知れないが当たってる! 肌にあたってんだよ!!


「・・・まだ、我慢しますの?どうして、そこまでする必要が?面倒でしょう?こんな事に付き合わされるのは」


そ・し・て!!お願いだから耳元で囁くのヤメろ!

狼の耳は敏感だ。思わず耳畳んじまっただろが!


「・・・・・・ク、クゥン(汗)」


こんな事アイラの屋敷の客間でなんてとても無理だ。

この前だってやばかった。お前の親父薄っすらお前が何かしたって気付いてたからな!!


モフッモフッモフッーーーーー!!


「柔らい。柔らかいですわ!! 気持ちいい!」


そりゃ良かったな?

お前も柔らかいぞ。お前の身体骨ねぇんじゃね?


あーーーー天国と地獄・・・。


「・・・・・グスッ・・」


・・・・・アイラ?泣いてんのかよ。


「・・・なんで、ずっと犬のままなんですの?」


これは、アイラの作戦だろうか?

泣き落としで俺を元に戻して冷静に俺を拒絶したいという・・・。・・・・アイラ?


「クゥン」


「・・・グスッ可愛い・・・悔しい・・・」


すまん。俺も今、お前の事可愛いとか思ったわ。

これは殴られても文句は言えない!


「どうせ抱きしめるならヨシュア様がいいのに」


・・・・・・おおう。

ちょっと一度冷静にならないといけないと俺、思うんだ。

多分ここで俺が元に戻ったらアイラはこの前みたいになると思うんだよ。でも、この姿ならそれはそれでアイラを傷つけんの?俺どんだけ駄目な男なんだ?何をしても裏目に出る。うぐぐっ。


「・・・・・・俺は犬だ」


「・・・・ヨシュア様?」


「この姿でも人間の姿でも、お前だけの犬だ。お前だけに従順な、世界でただ一つの・・・それじゃ駄目か?」


これは、ギリギリか?

言葉に、力は混ざってないか?


「・・・じゃあ。今すぐその姿を解いて下さい」


・・・・・エラルド様。すみません。

こりゃ約束守れなさそうだ・・・。


「これで、いいか?」


「ヨシュア様。キスして」


それでも、俺はアイラを失いたくない。

こんな下らない勘違いでアイラをずっと傷つけ続けるのはもう止める。アイラが、まだ、俺を見てくれるなら。


ちゃんと、アイラを幸せにしてやる。


「・・・・アイラ。俺の言葉には力が宿る。だから、きっと肝心な言葉は今すぐに口には出来ない」


「・・・・・それが、理由ですか?」


「お前が許してくれるなら、それを伝える事は出来る。だけど、そうしたらもう、後戻りは出来ねぇぞ」


どんなに嫌だと駄々を捏ねたところで二度と俺からは離れられない。俺のバカ親父がそうだったみたいに。


「ヨシュア様はやはり少し抜けておりますわね?」


「・・・・・なんだそりゃ?どういうこった」


「私、ヨシュア様の事、好きなのですけれど?」


ん?いや、それは何となく知ってはいたが?

だから、こんな回りくどい事してるんだろうが。


「ヨシュア様から離れられない事で、何か問題が起こるのですか?一日中離れ離れでいると、どちらかが死んでしまうとか?」


「いやいや、いくらなんでもそんな危険なもんじゃ・・・あくまでお前の精神衛生上の問題と言うべきか・・」


「?では、ヨシュア様は何をそんなに気にしてらっしゃるのですか?」


んーーーーっ説明が難しいな?

しょうがない。


「アイラ」


「はい?」


「俺はお前に夢中だ。お前になら一生鎖に繋がれて飼い慣らされても構わない」


これは、完全OUTのセリフだ。

もし、アイラが俺を拒絶しているなら、絶えられなくて気絶する筈・・・。


「え?私そんな酷いことしませんわ?鎖なんて使いませんし外でも、どこでもご自由に」


ん?どういう事だ?何も、起こらない?


「でも、必ず私の所へ帰って来て下さいませ。それを約束して下さると誓うなら、あのキスの事は許して差し上げますわ」


「誓う。必ずアイラの下に帰る」


おい。滅茶滅茶いい笑顔だな?

お前、ここ数年のデレを一気にここで放出したな。


「続き、してもよろしくて?」


駄目とは言えぬ!!だが、俺はもう、我慢の限界だ!!

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