第36話
遂にメリル降臨!
ここ、何処だ?
「あら?今度はまた珍しい姿のお客様だこと?」
ん?ここ、何処かで見た事あるぞ?えっと、確か・・・そうそう!マチ湖だ!夏の時期に吹き出す水滴が空に吸い込まれて、とても綺麗だったもんなぁ。
子供の頃見たきりだけど。
「道に迷ったのかしら?それとも、何かを待ってるの?」
この人、何処かで見た事ある気がするけど、何処でだっけ?確か、宮廷内で・・・随分前に・・・。
「んーー?あら?貴方キルト?何?体から切り離されてここに来たの?あらあら。しょうがないわねぇ」
思い出せないなぁ。でも、多分人間じゃないよな?
もしかして、この国の精霊? マジで?
「どれどれ? あら、貴方の仲間がカスバールから戻って来たみたいよ? うふふ。相変わらず騒がしいわねぇ? 大騒ぎになってるわ。キルト、一緒に見る?」
え?お姉さんと手を繋いでもいいの?
ちょっと俺、相手が精霊とはいえドキドキしちゃう。
お、おお?すげぇ!
皆の様子が急に鮮明に見える様になった!
「え?どうなってるの?これ」
あ、声も出せる。
精霊の力のお陰か?
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
「あら?今度はコッチね?素敵な音色」
「これはなんだ?」
「これは、この国の人々がこの地を育んでいる時に出される音よ。その音が私の所まで届いて来るの」
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
・・・・・なんて、穏やかで美しい音なんだろう。
「ほら、よく聞いて。これは貴方のよく知っている者達が作った音色だわ。あの子達は、本当にこの大地を慈しんでくれるわね。この前は新しい種を植えてくれたのよ?どんな花が咲くのか、楽しみだわ」
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
「貴方の父親や母親もよくこの音色をここに届けてくれたわ。あれも、美しかった。知っている?この音色は私達精霊の原動力なの。貴方達は知らない間に、こうやって私に愛を届けてくれる」
そうなの?でも、俺たち貴女の事、全然知らないけど?
この土地にとって良くない事も沢山するし、人だって殺してる。本当に君に愛を届けられてるのかな?
「キルト。貴方からも沢山の愛を貰っているわよ。貴方は、いつだってこの国の事を愛してくれているじゃない。貴方はこの国が大好きでしょう?」
好きだ。
この国も、サンチコアで暮らす人々も。
宿舎の仲間も、タジス村の家族も。
だから、守りたいって思った。
父がした事は許されない。知らなかったとしても。
俺があそこにいる事で皆を巻き込みたくなかった。
皆の為に死ねたなら、どんなに幸せかと思ってた。
・・・・・・・でも。
"ギルド・・・・・ぐずっ・・死なないで・・・"
"キルト?おい、キルト?"
"ちょっと、冗談よして。タチ悪いよ本当。起きろよ"
皆にあんな顔、させたい訳じゃなかった。
俺、勘違いしてた。
何処にでも馴染めるって、空気みたいってことじゃん?
だから、そこから居なくなっても自然と受け入れられるのでは?とか、勝手に思ってたな。
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
ああ・・・・・死にたくない。
イノリ、ネル、ザック。
・・・・・マッジン・・・・メルロー。
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
リーーーーーーーーン
父さん母さん。まだ、そっちには行けない。
行きたくない。
"お前は、俺みたいにはなるな。人を助けられる奴になれ"
生きたい!!まだ、皆と。・・・・死にたくない!!
[流石私!!超天才!ハイパーミラクルパワー!!]
ん?
[全っっかーい!!ヒャハーーーーーー!!!]
え?な、何?ちょっと理解し難いセリフと雄叫びと共に、急に体から光が溢れ・・・・。
「まったくどいつもこいつもメチャクチャね?私は見てて飽きないけど。強烈な目覚ましが来たみたいだから、貴方をあの場所に送り届けてあげるわね?キルト、貴方は変わらずそのままでいてね?」
あ、もしかして、この人俺の事守ってくれてたのかな?
お礼言わないと。
「ありがとう。君の名前は?」
「名前は無いのよ。誰も付けないから」
え?そうなの?
それは、可哀想だな。
「じゃあ、俺がつけてもいい?もう会えないかもしれないけど、名前があった方が便利だろ?」
「へぇ?試しに聞いてあげるわ?どんな名前をつけてくれるのかしら?」
「・・・そうだなぁ」
綺麗だけど、何処か可愛らしさを感じる、そんな名前がいいな。・・・・お?
「・・・・・シエルミンテとかどう?昔童話に出てきた妖精の名前なんだけど」
「・・・・シエルミンテ・・・」
「うん!可愛い!次会えたらそう呼ぶな!シエルミンテ!!」
ん?どうした?もしかして気に入らなかった?
えー?結構いい線いってると思ったんだけどな?
「な、なんてこと・・・・・こんなことって・・・」
え?なになに?
ちょっと良くきこえな・・・・っ。
あれ?視界が、グルリと、回って・・・・。
「・・・・・・・・あれ?」
ここ。何処だ?
俺さっきまでマチ湖に・・・・。
「あ!起きた?ほらぁー!やっぱり大丈夫じゃん!私天才なんだから!」
「メリル様ー?自己評価高すぎて素直に褒められないッス。ちょっとは謙遜してくださいっス」
あ、もしかして俺戻って来れた?
成功したのか?生き返るの。
「キルト・・・・その、姿」
ん?何?俺、何処かおかしい?
えっと・・・何処かに鏡・・・・・。え?
「俺。・・・・いつからイケメンに?(ゴクリ)」
「「いや!顔は変わってない!髪と目の色だけな!」」
失礼な!元々の顔も中々イケメンだろ!
奇跡の復活を果たして即効でツッコミかますなよ二人共!!
少しは夢。見させてくれてもいいじゃん?




