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第34話

「騎士になるぅ?キルトがぁ?」


いや、キルトのイメージとは余りにかけ離れた職業に、俺は当時うっかり聞き返しちまった。


俺、その時既に像工師の師匠について村を出てたからキルトの親父さんが亡くなった時、そばに居なかったんだ。


だから、単純にこの村を出たかったのかって、思った。


「畑はイノリの所で買い取ってもらった。その金でサンチコアに行く。暫くは会えないけど元気でな?お前も村には中々帰って来ないとは思うけどさ」


キルトの家は母親も事故で亡くなってたし、父親も亡くなって兄弟もいない。だから、俺達皆が兄弟みたいなもんだった。そう、思ってた。


「お前も帰れる時は帰って来いよ? たまには顔を出さないとネルとイノリが拗ねるぞ?」


「いやだよ。アイツら俺をこき使いたいだけじゃん?俺はサンチコアで騎士になって可愛い女の子と出会ってウハウハなエンジョイライフを満喫する!」


「ああん? キルト、なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたけど?遊び行くんなら金返しやがれ」


「イノリはもっと女の子らしくしないと!現実はイノリが考えてるほど、甘くないぞ?」


それからキルトがサンチコアに行って、俺達は偶に来るアイツの手紙で近況を知りながら、ずっとアイツが帰って来るのを待ってた。でもアイツ本当に忙しいみたいで全然帰ってこねぇんだよなぁ。俺より忙しいとか、この国、本当大丈夫なのか?


イノリがサンチコアに商品をわざわざ運ぶのも、なんとなくアイツの様子を確認しに行ってるって分かってた。


イノリはキルトを弟みたいに思ってる。

逆にキルトはイノリを妹みたいに思ってるけどな。


どちらも危なっかしいからまぁ、そこは譲れないらしい。


宿舎の料理人のティファちゃんと友達のアイラちゃんと話をした時、キルトは中で上手くやってるんだなって思った。


「キルトさんは三馬鹿の中立的立場なんです。ボケにもツッコミにもなれます!昔のキルトさんは知らないですが、彼も結構強いですよ?心配ないです!」


恐らく俺達がキルトの事、心配してたって分かったんだろうな。ティファちゃんは会話の合間に時折キルトは心配ないと教えてくれた。騎士団の中でも仲が良い奴等がいるって知って、ホッとしたんだ。


いつからだろう。

キルトと俺達の間に壁が出来た気がするんだよ。

イノリもネルもそれに、いち早く気付いてた。

でも、誰もキルトに理由を聞かなかったんだ。


そんな事、聞かなくても俺達は家族だから、その繋がりが切れることなんてないって信じてた。今でも、俺は信じてる。


「・・・・・・イノリ」


「ぐすっ・・・・・ぐすっ・・・」


キルトがここの領主に怪我をさせられて医療院に運ばれた後イノリはずっと部屋から出てこない。


親父さん達もこんな風になるイノリは初めてで困惑してる。ネルも時間の合間に様子を見に来るけど全然泣きやない。

どうしたらいいんだよ。おい、キルト。


「・・・・イノリ。せめて飯ぐらい食わねーと・・それに、泣いてちゃ状況が全くわかんねぇって。キルト・・・・ヤバイのか?」


「うぐっ・・・・ひぐっ・・・・」


多分、ヤバイんだと思う。


ネルが言うにはキルトはイノリと領主の様子を伺いに行った後、何かされたんだ。多分、イノリを助けたんだと思う。

もしかして、キルト死にそうなのかもしれねぇ。


でも、イノリのこの様子は、もうキルトは死んじまったみたいに思えるんだよ。じゃなきゃ、こんなにイノリが泣くわけねぇもん。聞きたいけど、言えないのかもしれない。


「じゃあ、口に出さなくていいからよ?もしそうなら頷いてくれ。アイツまだ生きてんの?」


妙な間があったけど頷いたな。

そうか。イノリは側でそれを見てたんだもんな。


「じゃあ。畑耕そうぜ?」


「・・・・は?」


「おい!!ネル来たんだろ!入って来いや」


「ちょっとザック・・・いきなりなんなんだ?」


イノリ酷ぇ顔だな?

お前そんな顔じゃ好きな相手に振り向いて貰えねぇぞ?


キルト、この前本気で心配してたぞ?


「キルトの畑、まだ手をつけてねぇんだろ?あの畑に宮廷から支給された花を植えようぜ?」


「花?なにそれ・・・」


青い花の山から広がる汚染はじわじわ広がって来てる。

その、汚染を防ぐ可能性がある植物らしいぞ?


確証はねぇけどな。


「どうせ、キルトが泣きべそかいて帰って来た時の為に、使わずに置いといた畑だろ?アイツはもう騎士だ。いい加減、使ってやろうぜ!」


「・・・・ぐすっ・・・・なんの、花なの?」


「なんでも、カスバールから送られてきたものらしい。あっちも大地の汚染が酷かっただろ?これで緩和されたらしいぞ?大賢者様が作ったんだと」


渡される時、相手がめっちゃ笑いを堪えてたから嘘かもしれねぇって親父さん達言ってたけどな。


俺は、やる価値あると思うぜ?


「イノリは諦めたから泣いてんのか?可能性ゼロじゃねぇんだろ?」


「・・・・ほぼゼロよ」


ハハッ!ゼロじゃねぇんじゃん!


「情けねぇ奴。泣いてる暇あんなら、いつもみたいにチャカチャカ動け。そんで、帰って来たらキルトに恩着せてやろうぜ?」


「・・・・そうだよ。一緒に種を蒔こう。イノリ」


キルト、俺達は俺達の出来る事をやる。


お前が戦っている間、俺達も俺達のやり方で戦う。


お前が、何を思って騎士になったのかしらねぇけど、お前がなんであっても俺達が家族なのは変わらない。


「お前がグースカ寝てる間に、この村を守ってやったぞってさ。アイツ悔しがるぞ? きっと」


おう。そうだ、いい加減閉じこもるのはやめようぜ。


「あんたら・・グスッ・・・私のご飯食べたいだけでしょ?」


「「あ、バレた?」」


だってイノリのご飯本当に美味いんだぜ?


キルトはいいよなぁ。ティファちゃんのご飯毎日食べれてたんだぜ?本当羨ましい!そして、イノリにご飯を教えてくれてるティファちゃんに、感謝です!!

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