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第32話

本当は暫くの間ヨシュア様をそっとしておいた方が良いと思っておりましたから、宿舎に行く予定はありませんでしたわ。


でも、ティファがカスバールに行くと聞いて、見送ろうと宿舎に着いた時、それを聞いてしまったのですわ。


「ハイト、カスバールは治安が未だに悪いみたいだから気を付けろ。何かあればササラ様に伝言を頼んでおくから、その鏡から伝えてくれ」


「うん。あ、そういえばアイラはどうなの?あの後、安定してるみたいだけど・・・魔力阻害は起きなかった?」


「医療班とササラ様にちゃんと聞いてその通りにしたからな・・・あんな事、する事になるとは思いもしなかったけどな・・・・」


それを聞いて、とても嫌な予感がしましたわ。


実はあのキスの後、私は暫く身体の調子が優れませんでした。でも、それはただ、自分が余りに驚きすぎてそうなっていたのだと勝手に思い込んでいたのです。


まさか、アレがそんな意味だったとは、思いもしませんでした。


「一度で済んで良かったぜ。あれはしんどかった」


暫く頭が真っ白で、その場から動けませんでしたわ。

そう。あの後ササラ様に確認して、私は全て理解致しました。


私は大きな誤解をしていたのだと。


「・・・・・馬鹿らしいですわ」


おかしいですわね。

いつもなら、きっと私泣き喚いて激怒していたと思いますわ。でも、もうそんな気も起こらないのです。






「おい。アイラ」


「はい?どうしました?ヨシュア様」


その顔はお父様から聞いたのですわね?

わざわざ私の所までいらっしゃらなくても良かったのに。


「どういうこった?なんでいきなり婚約を解消したいなんて?一度は了承しただろが」


そうですわね。

一度結ばれた婚約を、本来ならそんな簡単には解消できませんわ。それなりの理由がなければ。


「今回の不祥事でヨシュア様のお父様はサンチコアから追放されますわよね?事実上アルカディアは没落しますわ。そのお相手とヴァンディル家が婚約して、なんの利があるというのですか?」


「・・・・そりゃそうだけどよ?アルカディアは没落しねぇだろ?俺が跡を継げば」


そうですわね。でも。


「貴方は。いつ死んでも良いのでしょう?」


そして、そこに残るのは何なんでしょうね?

貴方は、それを期待していたのですか?


「私は、私と生きてくれる方と結婚しますわ。貴方は別に私でなくても、よろしいのではなくて?」


「・・・・なんだそりゃ。お前、いきなりなんなんだ?」


もう、そっとしておいて欲しいですわ・・・・。


「ハッキリ言わないとわからないのですか?もう、貴方の事など好きではない、と、言ったのですわ」


「・・・・・・・・なんだそれ?」


「貴方は、私が貴方を必要としたから、私と婚約したのですわね?もう、その必要が無くなったので婚約を解消致しますわ」


「おっまぇ・・・本当なんなんだ、こんな時に!一体何が気にいらねぇんだ!言ってみろ!」


・・・・・・駄目ですわ。私、本当に、疲れました。

前はどんな事を言われても、ヨシュア様の顔が見れたら元気になれましたのに・・・。


「・・・・私は、本当はハイト様と結婚する予定でしたわ」


「・・・・・は?」


ゼクトリアムからは本来女性しか生まれない。

最初、その候補はお兄様でした。


でも、セシリア様から御生れになったのはハイト様でした。


「その予定で私は教育されて来ました。そして、ハイト様が私と結婚しなかったとしても、私はゼクトリアムを支える為に存在していました。大樹の核を鎮める儀式を行えるのはゼクトリアムの血を引く女性しかいませんから。お父様やお兄様が私に甘かったのは、その私を憐れんでいたからです。貴方の目には、さぞかし私は自分勝手で我儘で傲慢な女に映っていたでしょうが」


それでも、ちゃんと分かっていましたわ。

でも・・・・。


「結局ハイト様が選んだのはティファでした。そして、大樹はそのお陰で失くなりましたわ。良かったですわね?でも、それでは私達の今までの人生は、なんだったのでしょうね?」


「・・・・・・アイラ?」


誰も、私を選ばない。


別に、ハイト様を好きだったわけではありませんわ。

でも、私はそう言われて生きてきた。

あの人が私の伴侶になるのだと。


男の人は勝手ですわ。


結局最終的に選択権が与えられるのは男性側で私達はそれに振り回されるだけ。必要無くなれば簡単に放り出される。・・・・・・・貴方も、同じですわ。


「ヨシュア様。わたくし、もう疲れましたの。もう、誰も求めませんわ」


「アイラ!」


やめて。何故、そこで手を伸ばすのです?

あんなに切願しても、私に触れなかった癖に!!


「触らないで下さいませ!!」


「アイラ、ちゃんとお前の話を聞く。いきなりコレじゃ、俺は言い訳も出来ねぇよ」


あ、駄目ですわ。

泣かないと決めてたのに・・・・。


「アイラ・・・何がそんなに辛かった?俺は、何をしてお前をそんなに傷つけた?」


言いたくないですわ。でも、もう無理。


「・・・・したくもないキスをしてまで・・・・貴方に助けて欲しいなんて、誰がお願いしたのです?」


「違う!!アレは!」


「二度と・・・・・顔も見たくありませんわ。声も聞きたくない。貴方とは、金輪際関わりを持ちません」


ここまでしないと、きっとまたズルズル貴方に縋り付いて私は前に進まなくなりますわ。


貴方には、コレでも感謝しております。


少しの間ですが、夢が見れましたもの。

貴方を愛し愛されて、幸せな家庭を作る。


そんな、ありもしない空想を。

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