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第31話

「サンチェストの山に一人で篭る?」


「ああ。能力が発動するまで山の中にいる。野営の準備していかねぇと・・・」


ちょっとヨシュア。またそれは中々の強硬手段だな?

しかもお前のその、よく分からない能力使えるか分からないんだろ?駄目に決まってるだろ?


「却下。お前までキルトと同じ状態になったらどうすんだ。最悪お前の方が先に死ぬぞ」


「それならそれで、しょうがねぇんじゃねぇの?」


何言ってんのお前。


「・・・そんな簡単に命を捨てられても困るんだが?俺の妹どうするんだよ」


「相変わらずのシスコン具合だな。あのなぁ、俺達はいつ死んでもおかしくない立場だろうが。この国の為に動く陛下の駒だろ。一々そんな事気にしながら行動出来るかっつーの」


お前意味を履き違えてないか?

そういう事言ってんじゃないんだよ。

何?自殺志願者なのか?お前。


「お前の中でアイラは置いていっても平気な、その程度の存在なんだな?ガッカリした」


「なんだそりゃ。アイラを一緒に連れて行けと?それこそ全力で止めんだろ?お前」


「お前さ、実際アイラの事どう思ってるんだ?なんでアイラと婚約したんだよ」


ハイトはヨシュアはアイラを手放さないとか言ってたけど俺にはそんな風には思えない。逆だと思う。


いつでも自分の手から手放せるように距離を置いている様に見える。


「頭が良いからだよ。それにとても強い。俺に何か起こってもアイラならちゃんと処理出来る。アイツは超我儘だが、そこら辺の令嬢に比べてズバ抜けて優秀だ。お飾りの妻なんて必要ねぇ」


「・・・・つまり、自分に必要だから結婚すると?」


「阿呆、逆だ逆。アイラが俺を必要としたからだろ?じゃなきゃそもそもこんな事になってねぇ」


いや、わからない。

俺が聞きたいのは、そんな事じゃない。


「アイラを、愛していないのか?」


「・・・・お前、あのな・・・・」


ギィ。


「・・・・あ、アイラ。お前なんで宮廷に・・・」


「・・・リンディ様に呼ばれまして。お邪魔だったようですわね?また後で寄らせて頂きますわ」


しまった!今の話、聞かれたか?

こりゃ今日は嵐の如く家の中は荒れそうだ。


「ま、待ってアイラ。途中まで一緒に行こう」


「あら?お兄様も彼方にご用事ですの?では一緒に参りましょう」


何だろうな。

それは、嵐の前の静けさなのかな?


「・・・・・もしかして、俺達の話聞こえてた?」


「ええ。途中からですが。お兄様も余計な気を回し過ぎなのですわ。ご自分の事もあるのです。どうか、私達の事はお気に為さらず」


そう言われてもな?大事な妹の事なんだから気になるぞ。

俺は、お前に幸せな人生を歩んで欲しい。


「私達とは考え方が違うのですわ、きっと」


「ん?何?どういう事だ?」


「ヨシュア様が私を愛していないのは分かっておりました」


いや、そんな事はないだろう?決めつけるのは良くないぞ?少なくとも好いてはいるだろ?


「私が何故、ヨシュア様に婚約を申し込まれて、あれ程怒ったのか、お兄様はお分かりになりませんの?私は何度も何度も申し上げましたわ。形だけの、家の為の結婚などしたくないと」


「・・・・お前にしては、珍しい我儘だとは思っていた。お前はそういう事はちゃんと昔から受け入れていたし、相手はヨシュアだったから、てっきり喜ぶのだと思っていたからな」


いや、そんな単純な問題ではなかったんだな。

俺だってベロニカとの考え方の違いに、こんなに日々悩まされているんだから。


「あの方にとって、私との婚約など、対して重大な事柄ではないのですわ。あっても無くてもどちらでも良いのです。きっと・・・・」


「なんだそれは。いくらなんでもそれは無いだろ?」


「好かれているのでは?とは、何度か思いました。確かに嫌われてはないですわね?でも、それはあくまで他の女性よりも好ましい、というだけなのですわ。恋い焦がれるほどの感情をヨシュア様が私に抱く事は、ないかも知れませんわね・・・・」


つまり・・・アイラと同じ想いをヨシュアがアイラに返す事はない、という事か・・・・確かに、それは・・・。


「分かってましたわ、最初から。でも諦めたくは無かったのです。諦めたその瞬間、私は二度とあの方にこんな想いを抱けなくなる。勿論そういう夫婦は沢山おりますわ。私も、そうなると思っておりました。でも、そのお相手がヨシュア様なのは我慢できませんわ」


・・・・・アイラ。


やっと、お前の言いたい事が分かった。俺もお前と同じだ。なんで、分かってやれなかったんだろうな?

そりゃ嫌だよな?


一番愛してる相手が側にいるのに、相手は自分を見ていないなんて。それなら、お互い好きでもない奴と一緒になって適度に距離を置いて過ごした方が、まだマシかもしれないな?


「・・・・・あの方が、本気で私を求める事は・・・きっとありませんわね。もしかしたらなんて希望を抱きましたが、やはり無駄だったようですわ」


「なんで、そんな事を?何かヨシュアに言われたのか?」


「・・・・ヨシュア様、私を助ける為にキスしたのですわ」


ん?助ける為にキス?なんの話だ?


「初めて、私にキスしてくれたそれは、私の削り取られた生命力を安定させる為の処置でした。それを先日知って。私は、もう諦めましたわ」


え?お前・・・・まさか!!


「ヨシュア様との婚約は破棄します。もう、二度とあの方とは関わりませんわ」


・・・・ヨシュア。あの、阿呆。

どうするんだ。これは・・・・違う嵐が吹き荒れそうだ。

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