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第30話 精霊の言葉の意味を考える

多分殆どの方がリンディの言っている事を理解出来ないと思いますので、ザックリと。


エルハドは自分が誰を愛しているのかわかっていない


と、いうことです。

「世界を愛すとは、どういう事だと思う?」


何?唐突に。

愛してるなんて言葉、もう何度も私に囁いているじゃない。

わかってないとは思ってたけれど。


「それは、この前会う事が出来たと言っていた精霊のお話?それともやっと真の愛国心に目覚めたのかしら?」


皆様御機嫌よう。

(わたくし)はリメルディナス・レインハート。

この国の元皇妃です。エルハドは私をリンディと愛称で呼んでおりますわ。


最近ではその役目を降り、伸び伸びと生活させて頂いております。


私がこの国に嫁いで来た時、正直この男の妻になるぐらいなら死んでやろうとか思ってましたが、今では三人の子供も大きくなり、その息子がこの国の皇帝ですの。


本当に人生どう転ぶか分からないわよね?


「この国の精霊に我々に求めることはないかと尋ねたらそう返された。それを、ずっと考えている」


珍しい。


考えてもしょうがない事をそんな真剣に考えるなど。

貴方は自分が思う以上に自分が奇人なのだと理解した方が宜しいかと?


「そのままの意味では?私達がこの世界を愛する。それが、精霊に力を与えるのでしょ?」


「・・・・その、気持ちはどういうものなのだろうな?人に向けるものと同じ、と、いう事だろうか?」


「・・・・それは、どうかしら?エルハド、愛、と言ってもそれは人それぞれ違うものじゃなくて?これが愛だ!なんて分かる人間がどれ程いるのかしら?」


ん?なんだか納得出来ないという顔をしているわね?

ふふふ。本当に歳をとっても、変わらず面白いわエルハドは。


「貴方は、私を愛してると言うわね?」


「そうだな。私は君を愛している」


「そう、()()しているから」


他国の皇族同士の政略結婚なんて珍しいことではないわ。

そこに愛なんて必要ない。お互い利害一致すればいいのだから。貴方はそういう人だった。ただ、貴方は私の気持ちを決して無視しなかった。


「貴方と過ごすこの日々は、私にとって、とても充実した幸せなものだわ。だって、貴方は私が望んだものは可能な限り与えてくれている。そして、私も貴方の望んだものを与えて来た。私達はとてもいいパートナーだわ。愛情だってある。私達は家族だもの・・・」


「そうだな。私は家族を愛している」


んーーーーー。伝わってないわねぇ・・・。

私も途中までは、この人全国民愛しちゃってるのでは?

とか思ってたもの。

それもある意味間違いではないと思うけれど。


「貴方の言ってるその愛は・・・可も不可もないわね。貴方は必要なら誰だって守るし逆に必要なら誰だって殺せる。その役割を幼い頃から背負っていたもの。だから、この世界を愛せと言われたら貴方は素直に従えると思う」


「・・・・どうだろうな?それは、なんとも言えないが」


いいえ。だから今それを考えているのでしょう?

でも、そんな単純なものじゃない。


「でも、それはあくまで不特定多数を相手にした場合だわ。貴方だけの特別な相手。その相手に震えるほどの激情を貴方は抱いた事があるでしょう?」


「・・・・・は?」


「怒りで目の前が真っ赤になって、今すぐに殺してやりたい相手がいるのに、それが叶わない。自分の、その感情を歯を食いしばって貴方は堪える。自分の為ではない、目の前にある、決して壊したくない者を失わない為に。でも、貴方はその裏側で、もう全てを壊して楽になりたいとも思う。全てを破壊して、その大事なものを壊してでも、自分の手の中に収めたい。そういう気持ちを、なんと呼ぶと思う?」


あら? 顔色が悪いわよ? 表情は動いていないけれど、長い付き合いなのだからお見通しよ?全てね。


「愛とは頭で考えるものではない。自分の意に反して心の奥底から湧き上がってくるものだわ。だから、必死に考えても無駄だわ」


「・・・・・相変わらず、私のリンディは手厳しい」


「ふふふ。嫌ですわ。ちゃんと貴方にも分かるようにお話しして差し上げたでしょ?」


「そして相変わらず君の言うことは難しい」


そうねぇ?

あまり意地悪すると会いに来てくれなくなるかしら?

それはそれで、つまらないわね?


「エルハド。愛の形は人それぞれだわ。何か一つの形に当てはめてしまうから皆苦しむの。もう、認めてしまえばいいのでは?」


「?全くわからん。やはり、私が鈍いのだろうか?」


そうね。確かに貴方、色々鈍そうだわ。

貴方よりあの人の方がよっぽど理解しているわね。






「ちょっとリンディ?またエルハドを揶揄でしょ〜?」


「あら!デズロ、久し振りね?息子達元気?」


「あれ?皆リンディに会いに来てないの?忙しいんだねぇ?」


貴方は相変わらず優秀ねぇ?

サッサとやる事済ませて遊んでるんですもの。

こんなふざけた人間ですのに。


「それでぇ?今度は何なの?エルハドずーと考え込んでて何しても反応しないから一通り弄って僕もう飽きたー!」


それは良かったわ。

周りはさぞ冷や冷やしたでしょうけれど?


「愛とは何かと尋ねられたので、私の考える愛についてお答えしたまでですが?」


「・・・・・それってぇ〜エルハドちゃんと理解出来てたの?」


「全く。いい加減、気付けばいいと思わない?」


「うん?一生気付かずにいればいいんじゃない?それで困る人間いないよね?」


「それはそうね?でも、それが理解できれば、愛がどういうものかも分かるのでは?と思うの」


エルハドが気付いたところで私は困らないわ。

私はとても心が広いから。


「いや、だからアイツにそんな事、教えなくていいから〜。本当に世界が滅びそう・・・・・・」


私も人の事言えないから口には出さないけれど貴方があの人を散々甘やかすからいけないと思うのよ?デズロ?


エルハドは貴方が居なくなるのではと考えているみたいだけれど、許さないわよ?


最後まで一緒に、あの人の面倒見てもらいますからね?

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