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第29話

結局キルトの下へ辿り着いたのは、ヨシュアと私達ほぼ同時でした。ヨシュアも余程急いで駆けつけたのでしょう。


その時、領主とその従者はキルトの反撃にあって虫の息状態でした。


「キルト!!おい!キルト大丈夫か!!」


「キルトさん!」


ヨシュアは直ぐにエルハド様にしたようにキルトに触れましたが、あの時の力は引き出されませんでした。


あの力が出てくるのには、何か特定な条件があるのかも知れないですね。


「・・・・・ヨ・・・シュア?」


まだ、辛うじて生きてはいますが、これは、まずい。


「キルト!!生きてる?私がわかる?」


「・・・・・・あり・・・?俺、まだ、生きてる」


「とにかく運ぶぞ!すぐに処置しないと・・・」


さっきから何度も力が出ないか試みていますが・・恐らく無駄ですかね。


「ヨシュア・・・・」


「・・・・でねぇ。反応、しねぇ」


別の手を考えましょう。

せめてこのタイミングでテゼールさんが居てくれれば良かったのですが・・・・。そんな事を考えても仕方ありませんね。


「とにかく馬車に乗せてサンチコアまで戻ろう。人手を借りてくる」


「キルト。頑張れ。デズロ様がティファの妹と連絡を取ってくれてる」


とにかく余りキルトを刺激しないようにしなければ。

しかし、余りのんびりもしていられないですし・・・。


「あんた体の丈夫さだけが取り柄なんだから何とかしなさいよ!!こんな事で死んだら張っ倒す!」


ん?ティファ?何ですか?

何でそんな情けない顔を?手に持っているそれは何ですか?


「ササラさん・・・実は私・・・」


まさか。君それは例の秘薬ですか?

そんなものまだあったんですか?なんて危険なものを。


「・・・いや、コレはまずい。ベロニカだって、ただでは済まなかっただろう?」


取り敢えずキルトを馬車に運んでここを出なければ。

ここに向かっている仲間に連絡を送っておきますかね。


「・・・・あれ?イノリ・・・膝枕、して、くれんの?」


「煩い。黙って寝てなさいよ」


「・・・怖い、なぁ・・あとから・・お金、とか、請求・・・するな、よ」


「ああん?しないわよ!あんた一体私を何だと思ってるのよ!」


かなり無理して平静を装ってますが、賢い子で助かりました。こんな所で取り乱して泣かれては困りますからね。

きっと、彼女もなんとなく気付いている筈。


「・・・・・・ブスなんて、思って・・・ねぇ、から」


「当たり前でしょ?絶世の美女に何言ってんだコラ」


キルトは、もたないかもしれない。サンチコアまで。

・・・・・・・どうする?


「ティファ。その薬を使った直後ベロニカはどうなったのかな?」


「一度・・・心臓が止まって、その後数分で息を吹き返しました。ただ、使った量はこれより多かったと思います。もし、これを使うなら逆に足らないかも知れないです」


それなら、下手に使うと危険ですね。


「・・・やはり、それは使えませんね。ティファ、諦めよう」


駄目ですよ、そんな顔しても。

その後、苦しむのは他でもないキルトなんですから。


なるべくキルトに負担をかけないよう慎重に進み、なんとか、サンチコアまで保ちました。ですが、医療班の反応は皆よくありませんでしたね。


そもそも、未知の毒物にどう対処すれば良いのか。


何が体を害しているのかが分からなければ魔法も効果はありません。それが、全く分からないんです。


こちらに戻って来たギャドとアイラがキルトに駆け寄った時は、もう既に限界点を超えていたのでしょう。


「あり、がと・・・み、んな」


「なんだよ。今更そんな事。仲間がピンチなら助けるのは当たり前だろ?」


「キルト?」


「おれ・・・ほんと・・しあわせ・・・な・・じんせいだった・・・みん、なの、おか・・げ・・・」


「キルト?何言ってんだ。阿呆か!気持ち悪りぃんだよ」


メルローやマッジンをキルトから引き離すんじゃなかったかもしれないですね。それは、きっとあの子達に一番言いたかった言葉でしょう。


「ひっく・・・・・キルト・・・」


「キルト・・・頑張れ・・頑張ってくれよ・・」


でも、実は最期の言葉に違和感を覚えました。



「ティ・・・・ファ・・・だめ、でも・・・うら、んだり・・・しな・・・い、から」


「キルト?キルト、キルトーーーー!!うわぁああん!」


その後、現実を受け入れなれない騎士団の面々をなんとか落ち着かせて、医療班がキルトを宿舎から運び出した後、ハイトの前で正座しているティファを見て納得しました。


・・・・・・流石あの、デズロ様の実の娘です。

・・・・・・やってくれましたね?


「・・・・・・まさか」


「ササラ様。僕今すぐティファと婚前旅行に行って来ます。行き先は、わかりますよね?」


そんな情けない顔で私を見ても駄目ですよ?

自業自得ですからね?ティファ。


「まだ、宿舎にギャドがいますから直ぐに連絡します。デズロ様は?」


「今テゼールさんに連絡とってます。恐らく直ぐに来てくれるかと」


それはそれは。

本当に毎回こちらの都合で振り回されてさぞ迷惑な事でしょうね?慰謝料としてデズロ様の資産でも半分渡しましょうか?山にも穴を開けた事ですし?


「騎士一人に国を動かすとは・・・本当にこの国はとんでもない人間を二人も引き取ったものですね?」


「・・・・・申し訳なく・・・」


まぁ、ここで謝れるティファの方がデズロ様に比べれば数百倍マシですがね?

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