第26話
「なんだぁ?お前。まさか騎士になりたいとか言わないよな?」
サンチコアの騎士昇格試験の時、一番最初に俺に声をかけて来たのはメルローだった。
あの頃は皆トゲトゲしてたよなぁ。
俺は対して変わってないけど。
「そうだけど。何か問題があるのか?」
「え?だってお前どう見ても農民だよな?その格好。何?クワのかわりに剣を持つの?お前ここで何耕すつもりなの?」
「おい。お前、なにを絡んでる。あんまり騒ぐと報告するぞ」
マッジンも昔に比べたらなんつーか、柔らかくなったよなぁ?まぁアイツは貴族だから、きっと騎士にならなかったらあんな緩くならなかったな。今ではあの頃の規律正しい態度見る影もないしな。
「あ?なんだ坊ちゃん。お前はお呼びじゃねぇんだよ」
「は?別に呼ばれて来たわけじゃない。お前一人で騒いでるから注意してる」
俺、よく分かってなかったんだよな。
あの頃、アイツらも色々あって大変で、ギャドだけか頼りっつーか。多分・・・自分の居場所を確保するのに必死だったんだよ。
「えーーと?二人は友達なの?」
「「ざっけんな!!誰がこんな奴!!」」
「え?息ピッタリだけど?」
それから何故か俺あの二人に挟まれる事が多くなったんだよなぁ。いやぁ本当一緒に生活してみたら面白い奴等というか、何というか・・・。俺・・・大変だった。
「ちょっとキルト、アイツなんとかしてよ!ここの風紀が乱れる!」
「なぁキルト〜アイツ、クソつまんないんだけど? どうにかして?」
「「キルト!」」
いやいや、お前ら仲良しだろ? 実は。
俺、真ん中に居なくてもいいだろコレ。
「キルトって不思議だよなぁ?何つーか一緒にいて自然というか・・・違和感がないんだよなぁ」
「何も考えてないからじゃない?考えて行動しないもんな?キルトは」
失礼な奴等だな・・・・。
でも、それ、村の奴等にも言われるんだよなぁ。
俺ってさぁどこにいても自然と溶け込むんだ。
でも、それってさぁ・・・。
「・・・・ト!!キルト!!」
「・・・・・ヨ・・・シュア?」
あ、何だお前、居たの?
ちょっと遅かったな。悪い、多分俺殺しちゃったかも。
「キルト!!生きてる?私がわかる?」
「・・・・・・あり・・・?俺、まだ、生きてる」
「とにかく運ぶぞ!すぐに処置しないと・・・」
あ、ティファ?
ササラ様もいるじゃん。
なんか、すげえ大袈裟だなぁ・・・。
「ヨシュア・・・・」
「・・・・でねぇ。反応、しねぇ」
ん?なんの話だ?
あ、そういえば山がどうとか、言ってたな・・・。
「とにかく馬車に乗せてサンチコアまで戻ろう。人手を借りてくる」
「キルト。頑張れ。デズロ様がティファの妹と連絡を取ってくれてる」
あれ?もしかしてコレ俺の話?
あーーーー。俺に刺さった、この花のことかぁ。
やっぱコレかなりヤバイのか?
「あんた体の丈夫さだけが取り柄なんだから何とかしなさいよ!!こんな事で死んだら張っ倒す!」
え?なんなのそれ。
俺、元気になってもイノリにトドメ刺されちゃうんじゃね?本当酷いわ。お前嫁の貰い手みつからないわ。
「ササラさん・・・実は私・・・」
「・・・いや、コレはまずい。ベロニカだって、ただでは済まなかっただろう?」
え?まさか俺にベロニカに使った危険なクスリ使おうとかしてる?ヤメテ。
アーーッコレ後処理面倒だろうなぁ。
まぁ、でもこの状況じゃ、しょうがないよな?
もし詰められたらヨシュアになんとかしてもらうか。
「・・・・あれ?イノリ・・・膝枕、して、くれんの?」
「煩い。黙って寝てなさいよ」
「・・・怖い、なぁ・・あとから・・お金、とか、請求・・・するな、よ」
「ああん?しないわよ!あんた一体私を何だと思ってるのよ!」
え?タジス村の女番長じゃないのか?
それで舎弟をこき使ってるんだろ?昔からお前はそんな奴だった。
「・・・・・・ブスなんて、思って・・・ねぇ、から」
「当たり前でしょ?絶世の美女に何言ってんだコラ」
おまーーーーー!!誰が絶世の美女だ。鏡よく見ろ。
バーーカ!
「・・・ト!キルト?おーい?生きてる?」
「おいおい何寝てんだよ。ちゃんと起きてないとお迎え来ちゃうぞ?」
アレ?ここ、サンチコア?いつの間に?
俺、意識失ってた?
「俺・・・・寝て、た?」
「寝てた寝てた・・完全にオチてた。今、医療班ついたから。お前コレは、しばらく閉じ込められるな。病院暮らしは退屈だぞ?」
ゲェ!マジかぁ。
やだなぁ。俺怪我以外で医療院に行った事ねぇけど、あそこ本当に暇なんだよな。しかも外出られないって聞いた事あるぞ?ヒーン!!
「でも、お前にしてはカッコいい所見せれたんじゃね?イノリちゃんキルト惚れ直しちゃうかもよ?」
何言ってんだメルロー。
アイツは、そんなんじゃねぇよ。
お前も勘が鈍ったな?アイツが好きなのは・・・・。
「・・・・楽しかったなぁ。・・・・・すごく」
「ん?何が?まさか久々の戦闘が?お前そんな戦うの好きだった?」
別にさぁ。
お前らは俺と一緒に居なくても良かったと思うんだ。
でもさ、最初から最後までちゃんと側にいさせてくれたよな?本当なら、俺、お前らとは違う世界の人間だったのに。お前らのお陰で俺ここに来て一度も寂しいとか、思わなかったわ。
「・・・俺が居ない間、ちゃんと守れよ・・・二人、とも」
「そんな事言われなくても分かってるけど?」
「お前偉そうだな?いつから俺達のリーダーになったの?」
いや。
俺以外誰がお前らまとめんの?
どう考えても、この三人の中なら俺がリーダーだろが!!




