第2話
「俺は疲れている」
「お?なんだなんだ?珍しいなヨシュア?元気が取り柄のお前がそんな疲れた顔をして。一体どうした?」
どうもこうもねぇ。
アイラの奴。会う度に不可解な行動が増えて行くんだよ。
この前なんかずっと大人しく俺の横に張り付いてると思ったらよ?ジーーと人の顔ジロジロみて、そのまま今度は何故か俺の手を凝視してくるんだよ。
何事かと尋ねれば「自分の胸に手を当てて、よく考えて下さいまし」だの「変な遠慮は必要ありません」だの。
え?お前は何かの悟りを開いたのか?
そして、それを俺にも開けと?無茶言うんじゃねぇよ!
「ヨシュアも大概だよね。なんでアイラ嬢に婚約なんて申し込んだんだよ。お前んとことアイラとじゃ・・・正直釣り合わないだろ?」
「そうか?家の格だけならそうだけどよ?俺は国から認定されてる魔力保持者だぞ?事実それ込みでアイラの親父を納得させたからな?」
それに、そもそもその貴族制度なんて廃止される予定なんだから、今更気にしなくてもいいだろが。
まぁ、それが実現するのは何年後になるかは分からないがな。
「お前みたいなデリカシーが無い奴と婚約とか、アイラ嬢可哀想。いや、お前も可哀想。つまりお前らは残念な者同士お似合いだ」
「メルロー。お前、余程俺に喧嘩売りてぇらしいな?アレだな?面白くないんだろ?皆いい感じに収まって揉め事が起きないもんな?」
「え?そんな事ねぇよ?毎日楽しい」
あ?なんだそりゃ?ん?
「ティファ?いい加減抵抗は諦めようか?もうそろそろ式の日取りを決めてしまおうね?」
「あははは!ハイトさん、そんな焦らなくても!私、今から宮廷にお使いがありますので、ハイトさんは午後のお仕事頑張って来て下さいね?」
「僕、今帰って来たばかりなんだけど?ティファまさか今すぐ出て行くとか言わないよね?ちょっと僕信じられないな?」
お、おー。おー。今日も激しいな。あの二人。
ハイトよ。せっかく無事に帰って来たのに思い切りティファに避けられてんな?だが、お前が悪いと思うぞ。ん?なんだろう?視線が痛いな?
「お前・・・・人の事とやかく思う前に我が振り直せよ。ヨシュア、人の事言えねぇからな?」
あ、いや。まぁ、自覚はあるんだけどよ?
でも、俺はハイトとは違うぞ?
そもそもティファ相手にそんな焦る必要ねぇだろ?
アイラと一緒にすんじゃねぇよ。
あの気位が異常に高い爆烈暴走牝馬と。
「でも、結局ヨシュアは騎士のままなんだろ?魔術団に配属されないんだから、位は低いままなんじゃ?」
「そうだな?まぁでも、俺の力はアースポントに干渉出来るって意味で希少価値は高いからな?いざとなればそれを理由にして押し切る」
なんだ?まだ何か言いたげだな?
「・・・・ヨシュアってさぁ?もしかしてもしかしなくても・・・アイラ嬢の事すっごい好きなの?」
「あ?お前どんだけ恋愛脳なんだよ?キモい」
俺がアイラの事好きか、だと?
そんなもん・・・・凄え好きに決まってんだろうが!
じゃなきゃわざわざこんな面倒くせぇ事する訳ねぇよな?
少し考えりゃわかんだろ?
わざわざ絶縁状態だった実家と和解してまでアイラと婚約したんだぞ?アイラも頭悪くねぇんだから普通気付くだろ?それなのにアイツ未だ片思いとか思ってやがる。馬鹿か!!
あん?じゃあそう言ってやれば良いじゃないか?断る!
そんな小っ恥ずかしい事口に出来るか!
それに、そんな事口にした瞬間。アイラの奴に根掘り葉掘り問い詰められるに決まってる。
俺がずっとアイラのこと可愛いなぁとか思ってたなんて知られたくないし、今更言えねぇ!
変幻した俺を撫でたいとか、ほざきやがった時も呆れつつちょっと嬉しかったなんて誰にも言わねぇからな!実際その時お気付きの方もいたと思うが!!
「ハ、ハイトさん!!ちょっ!皆さん見てます!離して!」
「うんうん?ティファが素直になったら離してあげるよ?」
そして外野がさっきからウゼェ!!
ハイトお前本当になり振り構わねぇな?
本当に清々しいくらいティファにグイグイ行くな?
俺もお前ぐらい素直に行きてぇけど俺の性分じゃ無理だわ。本当にお前が羨ましいわ。
「お菓子!お菓子あげますから取り敢えず離れて下さい!!私このままだと茹であがります!!卵の固茹での如く!!」
このまま問題なく結婚まで漕ぎ着ける。
それまで、俺は無駄な騒ぎを起こしたくないんだ。
結婚しちまえば、こっちのもんだからな!!
全く。俺の人生の予定表にその項目はなかったんだぞ?
アイラ。お前の所為で大幅に予定が狂ったんだから、お前にはちゃんと責任取ってもらうぞ?
「なんだかねぇ?あっちもこっちも目が離せないよねぇ」
お前は人の事ばかり気にしてないでいい加減自分の心配しろよメルロー。そんな感じで過ごしてると、ある日とんでもねぇ地雷が待ち受けてるって可能性あるぜ?俺がそうだったからな?気をつけろ。