第17話
「ヨシュア様?魔女狩りとは何です?」
「まぁ、要するに。俺達の一族はあの領土の人間達に、内密に少しずつ消されてたんだよ。元々数も少なかったから特に怪しまれなかったみたいだし、皆グルになってたから露見しなかった。あそこの領主、歳で病気になって死んだ事になってるけどな?アレは俺がチクったんだよ。で、処罰された」
そんな。
ヨシュア様の代になるまで問題が明るみに出ないなど、あり得ませんわ。
「おかしいと思わなかったか?いくら俺が魔力保持者でアースポントに干渉できる人材でも、異常に過保護だったろ?」
「・・・・・そういわれれば、確かに」
勿論デズロ様やササラ様も重要人物として手厚く保護されていましたが、他の魔術師はヨシュア様程、過保護にされてはいませんでしたわ。
それもこれも・・・絶滅寸前の聖獣を保護する為?
「だから国は本当は俺に騎士なんてさせず、さっさと結婚して子供を沢山産んで欲しいんだよ。聖獣は皆、魔力が強い。他の国より多く保持したいからな」
「・・・・でも、ヨシュア様は、結婚なされる気ありませんでしたわよね?それなのに・・・・」
・・・・・・え?それっ・・・・て。
「まぁ。そのつもりだった。でも、お前さ・・・」
まさか。まさかまさかまさかですの? 本当に?
「産まれる子供がわんころでも、愛してくれんだろ?」
「ーーーーーーーーッ!!」
何言ってますの?
「滅茶滅茶可愛がりますわよ!! 毎日愛でて可愛がって私から離しませんわ!!乳母とか必要、ありませんから!!」
「いやいや、そこは頼ろうぜ。お前貴族のご令嬢だからな?一人で子育ては、無理だろ」
ああ〜こんな事ならもっと早くに素直になれば良かったですわぁ! ヨシュア様、ちゃんと私の事、好いてくれてました。
少なくとも、躊躇していた子孫を、私となら残してもいいと思えるくらいには・・・・・それってもう・・・・。
私の事、この世で一番好きって事ですわよね?!
「アイラ? おーーい? アイラ? 駄目だコリャ。話聞いてねぇなコイツ」
ハッ! では、これは聞いておいた方が良いのではないでしょうか?
「ち、因みに。ヨシュア様は何人子供を望んでおられますの?」
「はっや!!お前っ!・・・・そうだなぁ。別に何人でもいいけどよ・・・・アイラ頑張れるか?」
「私を誰だと?私に不可能な事などありませんわ!」
「「道の往来でなんて話してんだ!」の!」
あら?お兄様と・・・ベロニカ?あらあらあら?
「アイラ?そういう話は個室で、二人の時してくれるかしら?大きな声で子供が、どう、とか・・・駄目よ?」
そうですわね?
私、淑女ですものね?それに、もしかして話が聞こえて、そちらが気まずくなりましたかしら?
「すみません。真面目な話だったのですけれど。確かにそこだけ切り取ると外で話すような内容ではありませんでしたわね。申し訳ありません」
お兄様も真っ赤ですが? 一体あなた達なんのお話をしてたんでしょうね? 気になりますわね?
「もしかしてお父様に会いに行くのですか?」
「ああ。父様に会わせないと話が進まないからな。やっと頷いてくれたから」
ここで私達に会ってしまったのはタイミングが悪かったのではないですか?ベロニカ今にも逃げ出しそうですけれど?あ、お兄様、腰をガッチリ掴んでおりますわ。コレは逃げられませんわね?
諦めて下さいませ。ベロニカ。
「ベロニカ、いいのか?コイツん家、貴族の名家だぞ?苦労するのは目に見えてる」
ヨシュア様。
お兄様の目の色が変わりましたわよ。
アレは本気でキレる一歩手前ですわよ?
「・・・もう、散々悩んだから、後はもう飛び込んでみないとなんとも言えないわね?しょうがないわ」
「・・・・フィクス、超腹黒いぞ。それに、結構余裕ないしな?あと意外と不器用だ」
「・・・・知っているわ」
「ふーん?・・・・じゃ、いんじゃね?」
ちょっとヨシュア様。
相変わらずですわね。その適当な受け答えやめて下さいませ。・・・・でも、ヨシュア様らしいですわ。
「それなら俺もお前と親戚関係になるしな?アイラもいるし、困ったら俺達が助けてやるよ!後、俺は意外と御婦人に大人気だ。そこら辺の派閥もコッソリ教えてやるよ」
「・・・ヨシュア」
知ってます。
ヨシュア様は、いつもそうやって何気なく私達を助けてくれますわよね?
「行ってこい! 駄目なら次の手を考えりゃいいしな? 失敗したってお前の人生終わるわけじゃねぇよ」
私は貴方のそんな所に何度も何度も救われました。
そんな、貴方を好きになったのですわ。
私に必要なのは、お金でも地位でも貴族の私と並んで見劣りしない男性などでもありません。
「そうね、ありがとう。・・・ヨシュア」
「別に?俺は何もしてねぇけど?」
私に媚びたり、嘘をつかない。
私とちゃんと向き合って下さる。
そんな貴方を、私は堪らなく好きなのですわ。