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ニンニク「やぁ!!」

 




 さて、今は午後の授業中でございます。

 しかし、授業の内容がさっぱり分からん。

 というわけで授業を受けているフリをしながら、私の事をちょっと振り返ってみようか。


 私の生前の名前は何故か思い出せない。

 職業、グレーよりのブラック企業で働いていたOLだった。

 趣味、私の推しを眺めて集めて眺める事。自分でも何を言っているのか分からない。

 死因、えーと、なんだっけ.......どこから記憶が無いんだ?

 あぁ、これだ!

 仕事が終わりアパートに帰ってきてお風呂に入るために部屋で裸になった私。

 最後に靴下を脱ぐ為に片足立ちになっていた時のこと、

 突然鼻がムズムズしたのだ。


「ぶぇっくしょいやぁぁぁぁ!!!」


 盛大なくしゃみが出た。と思ったらその拍子にバランスを崩してしまい倒れてしまった。

 確か倒れた先には丁度頭の位置に机の角があった気がする。

 ゴッ!!と言う鈍い音と共に私の意識はフェードアウトして今に至るんだっけ?


 (え、まじ?

 死因これ?)


 .......。全裸で靴下片方履いただけの女性が部屋の中で倒れてるって、なんかもう.......!もうっ.......!!私がマヌケ過ぎてっ!!


 (恥ずかし過ぎるっ)


 見つけられた時の誰かの反応が一番恥ずかしいんだけど?!

 だって私靴下片方履いているとはいえ全裸だよ?!

 何が起きたってならない?!


 (ハッ!!そう言えば私の部屋のパソコンさんの中身が!!他人に見られるとヤバいモノばかりなんですが!!

 処分してぇぇぇ!!!

 友よ!!友だったら誰でもいいからパソコンだけでも処分していてくれっ!!)


 と、まぁ、私の死因は置いといて。

 置いておきたくないけど。


 アリス・ルミエールの事について次は思い出すとしますか。



 名前、アリス・ルミエール

 職業、法国の聖女、この学園の生徒

 年齢、13歳

 容姿、ピンクブロンドの髪を腰まで伸ばしていて、瞳は蜂蜜色。おめめパッチリで確か可愛い系だった筈

 出自、平民


 ゲームの設定では、この世界では光魔法の使い手が極端に少ない為に、光魔法を使える者は神殿に召し上げられるとかなんとか.......。

 私、ヒロインの事どうでも良かったからあんまり設定覚えてないのよねー。


 んで、この身体の記憶を整理してみますか。


 出自は確かに平民の中でも更に下の方から数えた方が早い平民っぷりみたいね。

 ギリギリその日を生きていけるか分からない孤児では無いものの、生活は苦しかったらしい。ふーん。

 んで、6歳くらいの時に法国内で奴隷にしていた亜人達が暴徒化して街の人達を襲撃したそうな。

 その暴徒化した亜人達の襲来によりアリスと母親は巻き込まれた。

 そのせいで母親は大怪我を負い死にそうになった時にアリスの光魔法炸裂。

 アリスを中心とした一体にいた暴徒化した亜人達を沈静化(フルボッコ)し怪我をしていた人間達を癒した。

 その中には勿論アリスの母親も含まれていて、怪我が一瞬で治っていた。

 母親の傷が治ったと喜んだアリス。

 それも束の間、教会は光魔法を使ったとしてアリスを保護と言う名目の元に教会が拉致。

 そうして、アリスは法国の思想に染められた。と。


 まぁ、暴徒の件でアリスは亜人に対して憎しみを抱いたみたいだし?

 そこに更に法国の思想を上塗りしてチヤホヤされていたみたいだし、そりゃあ高飛車で人間至上主義のクソが出来上がるよね。

 そういえば、アリスの母親はあの後どうなったんだっけ?

 んーーーと、あぁ、8歳ごろに神官長から母親は病死したと聞かされたんだっけ


 どうでもいいわー。興味無いわー。

 今身体の支配権は私にあるけど、アリスはどうなったのだろうか?

 融合した気はしないのよねー。


 (..............。分かるはずも無いから放っておこうっと。)


 考えたって分からないものは分かんないだから意味がないしょ。


 あー、後アレだ。

 謎の(かな)タライなんだけど、部屋に置いておこうとしてたらどうやってか知らないけれど私の頭の上に必ず落ちてくるんだけど何コレ?

 白刃取りもどきの練習でもしろと?

 おかげでいつも金タライ持ち歩くハメになってるんだけど。

 めっちゃ邪魔くさいです。

 それから、席に座る時も後ろの席の端っこじゃないと金タライ邪魔になるのよねー。

 誰かが踏んで滑っても困るし立てかけてあっても転がったら困るしで。

 どうしろっていうねん。

 てゆーかこの金タライなんだけども、アーティファクトって言ってたよね?あのハチミツの君の名にふさわしいふわふわ保健医が。

 アーティファクトって、何?

 何する物なの?

 ゲームでアーティファクトって単語は出てきたかなー.......。

 あ!出てきてたわ!!

 なんか私の推しを出す為にいるんじゃなかったっけ?

 忘れたけど!!

 で、そのアーティファクトだけども見つめても触っても拳作って殴っても何も反応無いんだけど、どゆこと?

 こういう時は持ち主だけに見える説明文が出てくるのが定石でしょうよ!!

 あぁ、そうそう。金タライを素手の拳で殴るのはオススメしないわ。

 めっちゃ痛いから。

 さて、このアーティファクトとやらの金タライをどうするべきか.......。

 せめて能力だけでも知りたいよねー。


 なんて考えながら白髭の素晴らしく長いエルフのお爺ちゃん先生が教壇で話している内容と、魔法の基礎の授業内容が書かれた黒板の文字をノートに書いていく。


 授業内容はさっぱ分からんがノートに書くのは大事だよね。

 あー、後で頑張って勉強しなくっちゃ。

 誰か先生教えてくれないかなぁ.......肩書きのせいで無理かなぁ.......。

 授業始まって数日で内容もう分からんって終わってないか私?

 取り敢えずだ。

 魔法属性と言うやつがえーと?7つあるそうな

 土・水・火・水・光・闇・無

 の7つ。

 6つは分かるんだけど、無って何?

 あの、スマホで打って出てくるスンってした顔文字の事?

 違う?違うとは思うけど、それしか出てこない

 だって無って何よ。

 私に意味が分かる訳ないじゃない。

 無なんて意味の分からない物なんて放っておいて、私の属性はと言うと光ね。

 光は浄化とか回復とか補助がメインらしいけど、魔力量が多いと攻撃手段を持つことも出来るんですって。

 さっぱ分からんが。

 おっと、鐘の音がなった。

 授業が終わりだひゃっほい。


 筆記用具とノートを鞄の中に片付けた私はんー、と伸びをする。わ。

 おもむろに机の脇に置いていた金タライを指で触れる


 一応私の物なんだから鑑定くらい出来たら良いのに.......!!

 神様のバカ!!これじゃあ投擲するくらいしか使い道ないじゃない!!


 ピコンッ


 バカーアホーボケーハゲー!と頭の中で罵っていたら目の前に半透明のディスプレイの様な物が現れた。


 ───────────────────────────


 俺はハゲじゃない!!

 ふっさふさですぅー!!!


 ───────────────────────────


 驚いていると文字が入力された。


 何気にムカつく。

 が、この機会を逃すと説明してくれなくなるかもしれない。

 ねぇ、この金タライの説明くれない?

 使い方が分からないからクソの顔面にめり込まそうかと思ってるんだけど。


 ───────────────────────────


 なんかスルーされた気がする。

 まぁいっか。

 その金タライの説明?してなかったっけ?


 ───────────────────────────


 文字を入力する所も無くて、使い方が分からないから内心で思ってみると向こう(?)に伝わったようで文字が帰ってきた。


 一っ言も説明されてないわわわ

 部屋に置いてきても私の頭の上に何故か降ってくるし何なのコレ。

 嫌がらせ?


 ───────────────────────────


 .......説明するの忘れてたてへぺろ★

 あー、じゃあ今説明するわ。

 なんと!その金タライは!自由自在に温水と冷水が出し入れが出来るぜ!!しかも自動で持ち主の元に帰ってくる仕様!!

 便利だね!!


 ───────────────────────────


 .......なんだろう。

 物凄くこの文章を書いている奴の顔面に金タライめり込ませたい。

 何このイラッとくる文章。

 てかちょっと待って。

 私の思ってる事全部向こうに筒抜けになってない?

 あ〜、私よ待って。叫びたいけど叫んだらただでさえ悪い評判が更に悪くなる。

 ここは我慢だ私。


 ..............んで?使い方は?


 ───────────────────────────


 あ、なんか俺の扱い方ぞんざいになったー( ¯ε¯ )ぶー

 良いけどさぁー本来ならそんな気安くしていいキャラじゃねぇんだからなー俺ー。


 ───────────────────────────


 とうとう顔文字使ってきやがったぞこいつムカつく。

 いいから早く使い方を教えなさいよ。

 あ、魔力の使い方なんて分かんないから魔力が〜とかはNGで。

 大体一般人だった私がこんな事分かるはずがないじゃない。


 ───────────────────────────


 いや、それは無理だろ(゜Д゜).......。

 この世界は魔法と剣の定番のファンタジーだぞ?

 んでもってお前の好きな容姿の奴がいる世界

 魔法は切っても切り離せないってーの。

 それに使い方は以前の***ではなくアリス時代に習っているだろ。


 ───────────────────────────


 ***と言う文字を見て、ドクリッと心臓が嫌な音を立てた。

 多分だが、これは以前の私の名前だ。


 なんで.......、あんたがそれを知ってんの.......?


 ───────────────────────────


 さぁ?何でだろうな?


 ───────────────────────────


 このディスプレイの向こうにいる相手を見ることは出来ないから分からないけども、嗤っている。

 そんな気がする。


 私は恐る恐るディスプレイの向こうにいるコイツに聞いてみる事にした。


 ねぇ、私の部屋にあった薄い本の山とPCの中身はどうなったの.......?


 ───────────────────────────


 ..............気にするところソコなんだ。

 安心しろ。お前の仲間の貴腐人方が一致団結して処分したみたいだぞ。

 ただ、あまりの無様な死に様を見て爆笑した貴婦人方は青い鳥のサイトに、友人が亡くなったって言う題名で漫画上げたそうだけど。

 お前の推しが代理で登場して死に方披露したってよ(笑)良かったな。


 ───────────────────────────


 いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 なんで漫画なんぞにしやがったし!!

 ハッ!!漫画にしたのはきっと破天荒なリアーさんだな!!あの人ならやりかねん。

 が!やっていい事と悪いことがあるでしょーが!!

 しかも私の推しでそれを再現すんなよ!!

 まぁ!私も他の人がドジ踏んだ時とかその人の推しでそのドジ描いてるからどっこいどっこいなんだけどね!!

 でもなんか私の推しが汚された気がして何かヤダーー!!!

 穴があったら入りたいってこの事かよ!!


 ───────────────────────────


 ヤベぇwwwウケるwww

 んで、そのアーティファクトである金タライの使い方は魔力を流して水の温度を心の中で思い浮かべたらいい。

 熱湯から氷水まで出せるから結構使い道広いぞ

 聖水も出そうと思ったら出せるしな。

 使った水も魔力流したら消せるから便利!

 それから、その金タライはオリハルコンとヒヒイロカネとミスリルで出来てるから超丈夫だよ!

 譲渡は出来ないからそこんとこ宜しく!

 んじゃ!俺は用事があるからおさらばするわ!!

 楽しい転生ライフを!


 ───────────────────────────


 フォンっといって消えた半透明のディスプレイの様なもの。


 ふっざけんじゃないわよ!!

 何その言い逃げ!

 まぁ、分かったことはこの金タライは壊れない

 武器として使えるということで良いわよね。

 あ、もしやこれは自在に湯浴み出来るんじゃね?

 湯浴み行くと凄い他のヒトの視線痛かったのよねー。

 やっぱり“法国の聖女”って言う肩書きがいけないと思うのよ。

 あー!これであの煩わしい視線からおさらば出来る!!

 湯船に浸かれないのが残念だけど仕方ないよね!


 やったー、と内心喜んでいると鐘の音がなり担任の眼鏡をかけたエルフの先生が入ってきた。


 あれ?次の授業なんだっけ?

 ヒトに聞こうにも私自信が嫌われているせいで聞く前に逃げられて聞けないのよねー。

 あとあの冷たい目に心がヒョッとなるから無理.......。

 私の心はさざれ石です。

 .......あれ?なんか違う気がする。


 なんて内心で考えていると担任のエルフの先生が口を開いた。


「今から終業の刻を始める」


 あ、なるほど。

 帰りのホームルームか。


「今日も無事に一日が過ぎたようだな。誰も迷惑をかけなかったようで何よりだ」


 ギロリ、と担任の先生が私を見た気がする。

 .......気がするというかアレは確実に見ている。

 その冷たく嫌悪の交じった眼差しに心臓がキュッと締め付けられる。


 が、頑張れ私.......!!

 私の推しに会うまでは元気でいなくちゃ!!

 きっと絶対私の推しはこの学園に居るはずだから!!

 会うまでは死ねない!!

 それにほら!生前で務めてた会社の御局様のいびりに比べたらこんなモノ屁でもないし!!

 ほら大丈夫!!


 心の中で自分を自分で鼓舞してなんとか平常心を保つ。


「明日の午前の授業は決して休まぬように。内容は実技だ。以上で終業の刻を終了する。それと、指輪を忘れないように」


 え?それだけ?

 いや、ここ数日でこの担任のエルフの先生が余計な事を話した事なんてないし.......。

 まぁ、いいとしとこうか。

 いやちょっと待って。

 指輪って何?指輪?私そんなの持ってたっけ?

 周りを見渡せば確かに皆指に何かを付けている。


 よっぽど私がポカンとしていたのか、担任の先生が教壇の所からわざわざ私がいる席まで歩いてきた。

 その表情はかなり、不機嫌そうです。

 私のいる席の隣に立ち止まった担任の先生は腕を組み、顔を下向けることなく視線のみを私に向ける。


「.......法国の、なんだその間抜けな(ツラ)は。何が気に食わん」

「せんせーい、指輪って何ですか?」

「はっ?」


 冷たい視線に晒されてはいるけども今気になっている事を手を挙げて質問してみる。

 質問された担任の先生は鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔を向けてきた。


 初めてまともに担任の先生の顔を見た気がする。

 はー、先生って中性的な顔立ちしてるんだー。

 男か女かわっかんないやー。

 私は私の推し以外興味ないから別にどうでも良いけど。


「貴様今失礼な事を考えなかったか?.......法国の者の考える事など碌でもない事だろうがな。で、貴様はなぜ指輪をしていない?」

「え?だって、装飾品なんて勉学には不必要でしょ?ってか先生、質問には答えて欲しいです」


 言い返せば担任の先生は見るからに嫌な顔をした。


「指輪はこの学園に来た時に付けていただろう」

「あぁ!あれか!あれ以降机の引き出しに入れっぱなしにしてました!」


 片方の手をもう片方の手のひらに叩くとポンッと音がした。

 担任の先生はというと、眉間を指で揉んでいる。


「.......法国の。指輪はこの学園の生徒と言う身分証だ。これからはその指輪が各方面で必要になってくることがある。これからは指輪を付けてくるように」

「そうなんだー」

「分かったか法国の」


 はー、アレって身分証だったんだ。

 だから皆付けてんのねー。

 ただのオシャレかと思ってたわー。


「法国の!」

「あ、はい。明日から付けてきたら良いんですね、分かりました」

「.......全くこれだから法国の人間は.......」


 あー.......やっぱり私が法国の人間だから嫌われてるみたいね。

 いや、まぁね?さっきのはすぐに返事しなかった私が悪い。

 うん.......悪いんだけどね.......なんだかなぁ.......。


 私が内心モニョモニョしている間に、担任の先生は教壇まで歩いて戻っていた。


「さて、中断してしまったが皆明日は励むように」


 そう言って担任の先生は教室を出ていった。

 担任の先生が出て行ったのを確認した私は広げていたノートをパタリと閉じる。


 んじゃ、ノートとか筆記用具とか纏めて金タライに入れてっと。

 クソが来る前に寮の部屋に帰りますか。






 ♢






 ひっそり帰ろうにも金タライが邪魔だからいつも堂々と寮に帰っているんだけど、今日も生徒達の視線は痛かったなぁ.......。


 遠い目になりながらも2人部屋のドアを開ける。


 そうそう。ここの寮は4人部屋と2人部屋と1人部屋があるんだって。

 中等部の子は大体4人部屋なんですって。

 かなり身分が高いか、なんか条件がないと1人部屋は与えられないらしい。

 そして2人部屋は相性の良い者同士か、どちらかを監視しているかのどちらからしいわよ?

 ま、私の場合は後者でしょうね。

 だって法国の聖女(.....)だし?

 見張っとかないと何しでかすか分かったもんじゃないわよねー.......前の私。

 自分で言っててなんか虚しくなってきた。

 私が何したって言うのよーって言いたい。

 全部法国が悪いんじゃない。


 ぶちぶちと心の中で文句を言いながら、部屋の中に入る。

 部屋の中はというと、扉を開けるとすぐに通路があり行き止まりの扉を開けるとトイレがあり、

 通路の真ん中に内開きのドアがあって、そこを開けると自分の部屋になっている。


 各自の部屋は鍵を掛けれるそうだが、私は掛けていない。

 だって盗られる物ないしね?

 .......鍵の掛け方が分からないと言うのが本音。

 だって、ドアの何処にも鍵穴も無いし鍵も渡されてないんだもん。

 鍵の掛けようがないでしょ。


 自分の部屋の扉を開け中に入る。


 個人の部屋の中は広さは多分8畳くらいかな?で床はフローリング。

 出窓があって、その前に引き出し付きの机と椅子、本棚が横並びにある。

 その反対側にベッドとクローゼットが備わっている。

 ちょっと敷物欲しいけど部屋としては充分よねー。


 私は机の上に無理矢理金タライを置くと引き出しを開ける。

 中に入っているのは一つだけ。

 ピンクゴールドのリングに澄んだ金色に輝く石が付いた指輪。


 ん?あれ?前見た時の指輪と何か違うような.......。

 なんか、中央の石の色変わってない.......?

 気の所為?

 もうちょっとこう、くすんでなかった?

 うん?も し や !!無くした!?

 や、ヤバイ!!指輪って身分証らしいのに無くなったとか笑えない!!


 私は机の引き出しを限界まで引き出してみたりベッドの上の掛け布団にシーツまでひっぺがしてみたり、クローゼットの中身も全部出して探した。

 勿論、旅行鞄の中も探した。

 が、無かった。


 えっ。えっ、どうしよう.......身分証.......これは.......私の推しを見れないまま退学フラグ.......?

 ヤダー!!推し見たいー!!


 くすん、と内心で駄々を捏ねながら部屋を片付ける。

 仕方なく私は一つだけあった指輪を右手の人差し指に付けると夕飯までの時間潰しに今日の授業の復習をする事にした。





 ♢







 あー.......やっぱり自分一人で復習しても分かんないもんは分からん!!

 早い所誰かに教えてもらわないと手遅れになるかもしれないなー.......これは結構ヤバイ気がする。


 はぁ、と机に肘をつきながら溜息を吐いていると鐘の音がなった。


「いっけね。夕御飯の時間じゃない。急いでいかないと!」


 金タライを掴んで部屋から出ると急ぎ足で食堂へと向かう。


 今日の夕御飯は何食べようかしら?

 明日は何かあるらしいから肉にしようそうしよう。


 食堂に着いた私は入口近くの食券機でステーキ丼大盛りのボタンを押す。

 ついでにニンニク増し増しボタンも押しておく

 食券機から木札が出てきてそれを取ると番号を確認する。


 よし。今日は結構早めに来れたわね。


 金タライを置くために列から離れ、空いている席へと向かう。

 運良く対面の二人席が空いていたので、片方の椅子に金タライを置く。


 これはクソ対策の為だ。

 .......まぁ、意味ほとんどないけど。

 あ、番号呼ばれた。


 席を立つと受け取り口まで行く。

 受け取り口でニンニク増し増しステーキ丼が乗ったトレーを受け取る。

 受け取り口と食器返却口の真ん中にある冷水機でコップにお水を入れるとトレーの上に置く。

 トレーの上の丼を落とさないよう細心の注意をはらいながら席まで持っていく。


 あ、クソが私の金タライ退けて椅子に座ってる。

 もうクソは無視でいっか。


 私は椅子に座るとクソに話しかけられようが無視して無心でニンニク増し増しステーキ丼大盛りをがっつく。


 はぁー。食った食った。

 やっぱ、すりおろしたニンニクを乗っけたステーキ丼は美味いわ!。


 食べ終わり、水を飲んでいるとザワッと食堂の入口付近からどよめきがこちらまで広がってきた。

 ような気がする。

 私は何だろうと思って食堂の入口付近を見る。


 .......人だかりで何にも見えやしねぇ。


 見るのを諦めた私は食器が乗ったトレーと金タライ両方を持って食器返却口へと歩いていく。

 食器返却口にトレーに乗った食器を返す。


 また今日も私の推しに出会えなかったな.......。


 はぁ、と溜息を吐く。


「.......ん?この匂い、ニンニク.......?」


 その声に私は反射的にヒョッとなった。

 今の声!!


 (お、おおおおおお、おしっ推しっ!?

 こ、これは!!話しかけたいっ!!)


 と話しかけようとしてふと思い出す。


 (あ、私今さっきニンニク増し増しのステーキ丼食った.......。

 今めっちゃニンニク臭するわ.......。)


 なんて事を心のうちで言っている間に私の推しはどこかへ行ってしまったらしい。

 その場に居なくなっていた。


 (ぅあぁぁぁん!!!私の推しがぁぁぁ!!!

 ちゃんとその姿を目に納めることも出来ぬとはこれいかにぃぃぃ!!!)





 ガックシと肩を落として金タライを引きずりながら私は自室の部屋へと帰っていくのだった。




 

ニンニク臭ってだいぶ香るよね笑

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