1-3. 原生累代
◆原生累代◆
少し新しい時代へ行きましょう。
今から25億年前にはじまり、約5億4100万年前におわった時代を原生累代 (Proterozoic) といいます。太古累代に続く地球の3番目の時代です。原生累代は古い方から順に、古原生代、中原生代、新原生代の3つの時代に分けられます。
原生累代 Proterozoic
新原生代 Neoproterozoic
エディアカラ紀 Ediacaran
氷成紀 Cryogenian
拡層紀 Tonian
中原生代 Mesoproterozoic
狭帯紀 Stenian
伸展紀 Ectasian
覆層紀 Calymmian
古原生代 Paleoproterozoic
剛塊紀 Statherian
造山紀 Orosirian
熔岩紀 Rhyacian
鉄鉱紀 Siderian
◆真核類◆
これまで見てきた生き物は、細胞の中にDNAが剝出しの状態で入っていました。ですがこの頃になると、細胞の中に核という袋があって、その袋の中にDNAを仕舞っている仲間が現れました。核を持った古菌類の仲間を、真核類 (Eukaryota) といいます。
今生きている真核類には、動物、植物、菌類などがいます。真核類内の系統関係は、DNAの塩基配列を比べた解析により明らかになりつつあります。
▲図1-c: 真核類の系統樹 (Cavalier-Smith 他 [2018]; Tedersoo 他 [2018] に基づき作成)
◆糸粒体と葉緑体◆
真核類の祖先は、嫌気性の古菌類の一種だったと考えられています。嫌気性とは、酸素を使わずに生きているという意味です。その近くには、好気性の細菌類も暮していました。好気性とは、酸素を使って生きているという意味です。
ある時、嫌気性の古菌類が、好気性の細菌類を体の中に取り込んでしまいました。嫌気性の古菌類は真核類に、好気性の細菌類は糸粒体になりました。
もっとあとの時代。ある真核類が、藍色細菌類を体の中に取り込んでしまいました。その真核類は植物に、藍色細菌類は葉緑体になりました。
このように、糸粒体や葉緑体が細胞の中に住み着いた別の生き物だったとする説を、細胞内共生説といいます。
細胞内共生説の裏付として、糸粒体や葉緑体が二重の膜で包まれていることが挙げられます。内側の膜は好気性の細菌類や藍色細菌類の、外側の膜は古菌類の細胞膜に当ります。
また、糸粒体や葉緑体は自分のDNAを持っています。糸粒体のDNAはアルファプロテウス細菌類 (Alphaproteobacteria) という細菌類の、葉緑体のDNAは藍色細菌類のDNAとよく似ています。
真核類が生れたことは、地球の酸素が濃くなったことと関っています。好気性の細菌類が体の中に住み着いたことで、酸素を使ったより効率の良い呼吸ができるようになったのです。
◆多細胞生物と全球凍結◆
地球で初めて多細胞生物が現れたのは、今から約10億年前だと考えられています。約7億年前には、地球の表面のほぼ全てが氷河に覆われるような、全球凍結という気候変動がありました。この時、たくさんの生き物が滅んだと考えられています。
約6億5000年前になると、気候がまた暖かくなり、比較的大きな多細胞生物が数多く現れ出しました。オーストラリアのエディアカラで見つかった生物群はその代表的なもので、エディアカラ生物群と呼ばれています。これらの生物は、今生きているクラゲのような軟らかい体をしていて、這ったり泳いだりするのはあまり得意ではなかったと考えられます。
エディアカラ生物群は姿形が今生きている生き物たちとかけ離れていたため、類縁関係がよくわかっていませんでした。ですが近頃では、海底を引っかいた跡が見つかったり、化石からコレステロールが見つかったりしたことから、一部の生き物は動物だったと考えられています。