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2-6. 分子

◆分子◆

　もっと細かく見てみましょう。

　細胞の材料を調べてみると、水が多くの割合を占めています。他には、蛋白質、核酸、炭水化物、脂質、無機物などが含まれています。

◆水◆

　水は、細胞の質量の約60%以上を占めています。水は常温では液体です。生き物にとって、水には次のような役割があります。

・色々な分子を溶かし込んでいる。

・代謝に使う。

・身の周りの温度が変ったときに、細胞の温度が急に変るのを抑える。

◆有機物◆

　細胞には、有機物《ゆうきぶつ》 (organic compound) と呼ばれる物質が多く含まれています。有機物には次のようなものがあります。

・蛋白質

・核酸 (DNA、RNA)

・炭水化物

・脂質

・ビタミン類

　これらの有機物は構成単位からなります。例えば、蛋白質は氨基酸《あんきさん》 (amino acid) が、核酸は核苷酸《かくかんさん》 (nucleotide) がそれぞれ繋がってできたものです。有機物は、次の6つの元素から形作られています。

・炭素 (C)

・水素 (H)

・酸素 (O)

・窒素 (N)

・燐《りん》 (P)

・硫黄 (S)

　ほとんどの有機物は炭素、水素、酸素を含んでいるのが特徴です。

◆肽質と蛋白質◆

　肽質《たしつ》 (peptide) は、氨基酸《あんきさん》 (amino acid) という部品が連なってできています。肽質のなかでも、特に氨基酸が多いものを多肽質《たたしつ》 (polypeptide)、少いものを少肽質《しようたしつ》 (oligopeptide) といいます。蛋白質《たんぱくしつ》 (protein) は、数十～数千個の氨基酸がつながった多肽質からできたものです。この氨基酸の並びのことを、蛋白質の一次構造《いちじこうぞう》 (primary structure) といいます。

　蛋白質の立体構造には、ところどころに多肽質の折りたたまれたところがあります。これを、蛋白質の二次構造《にじこうぞう》 (secondary structure) といいます。二次構造にはおもに、多肽質が螺旋の形になったα(アルフア)螺旋構造《らせんこうぞう》 (α-helix structure) や、多肽質が平行に並んだβ(ベータ)屏風構造《びようぶこうぞう》 (β-sheet structure) があります。

　多くの蛋白質は、分子全体で固有の立体構造を形作ります。蛋白質がつくる立体構造を三次構造《さんじこうぞう》 (tertiary structure) といいます。

　一部の蛋白質では、三次構造をとった多肽質がいくつか組み合わさって複合体を作ることがあります。これを、蛋白質の四次構造《よじこうぞう》 (quaternary structure) といいます。

◆DNA◆

　脱酸核糖核酸《だつさんかくとうかくさん》 (deoxyribonucleic acid; DNA) は、2本の鎖が螺旋の形に絡み合ってできています。この鎖には向きがあって、一方を5'末端《まつたん》 (5' end)、もう一方を3'末端《まつたん》 (3' end) といいます。DNAの2本の鎖は、逆向きにくっつき合っています。

　それぞれの鎖は、核苷酸《かくかんさん》 (nucleotide) という部品がたくさん連なってできています。核苷酸は糖、燐酸、塩基からできています。DNAを形作っている糖は脱酸核糖《だつさんかくとう》 (deoxyribose) と呼ばれています。DNAの塩基には次の4種類があります。

・腺嘌呤《せんぴようりん》 (adenine; A)

・鳥嘌呤《ちようひようりん》 (guanine; G)

・胸嘧啶《きようみつてい》 (thymine; T)

・胞嘧啶《ほうみつてい》 (cytosine; C)

　この4種類の塩基の並び方を、塩基配列《えんきはいれつ》 (bace sequence) といいます。

　DNAの2本の鎖は、塩基の部分で結び付いています。Aと結びつくのはT、Gと結びつくのはCです。このように、決まった塩基同士が対をつくりやすい性質を、塩基の相補性《そうほせい》 (complementarity) といいます。

◆RNA◆

　核糖核酸《かくとうかくさん》 (ribonucleic acid; RNA) はDNAと異なり、1本鎖で、糖として核糖《かくとう》 (ribose) をもちます。また、胸嘧啶の代りに尿嘧啶《にようみつてい》 (uracil; U) が塩基として使われています。

　RNAには次のような種類があります。

・伝令《でんれい》RNA (messenger RNA; mRNA)

・転移《てんい》RNA (transfer RNA; tRNA)

・核糖体《かくとうたい》RNA (ribosomal RNA; rRNA)

　伝令RNAは、蛋白質についての情報をもっています。転移RNAは、氨基酸を運びます。核糖体RNAは、蛋白質づくりに関ります。

◆炭水化物◆

　炭水化物《たんすいかぶつ》 (carbohydrate)は、単糖《たんとう》 (monosaccharide) という構成単位からなります。

◆脂質◆

　脂質《ししつ》 (lipid) は、脂肪酸《しぼうさん》 (fatty acid) という構成単位からなります。

◆無機物◆

　細胞には有機物の他に、無機物《むきぶつ》 (inorganic compound) が含まれています。無機物には次のようなものがあります。

・ナトリウム

・カルシウム

・カリウム

・亜鉛

・鉄

　無機物の多くは水に溶けて離子《りし》 (ion) として存在しています。生き物にとって、無機物には次のような役割があります。

・細胞内外の滲透圧を調節する。

・蛋白質や核酸などと結び付いて構造を安定化させる。

・酵素のはたらきを助ける。

・細胞内外の情報を伝達する。

　第2章生物圏 (終)