2-4. Y
◆多細胞生物と単細胞生物◆
もっと細かく見てみましょう。
1人のヒトや1本のサクラ (属名: Cerasus) のような体を、個体 (individual) といいます。ヒトの場合、個体は器官 (organ) という部品がいくつか組み合さってできています。器官にはそれぞれの役割があって、例えば消化器官は消化を、生殖器官は生殖を担っています。器官は、組織 (tissue) という部品が組み合さってできています。組織は、同じ機能をもつ細胞 (→2-5) が集まってできています。
ヒトやサクラのように幾つもの細胞が集まって組織や器官をつくっている生き物を、多細胞生物 (multicellular organism) といいます。一方、ゾウリムシや大腸菌のように1つの細胞からなる生き物を、単細胞生物 (unicellular organism) といいます。
◆連生体◆
ところが、地球には単細胞生物と多細胞生物のちょうど中間のような生き物がいるのです。
タマヒゲマワリ (属名: Eudorina) という生き物は、幾つかの細胞が集まってできています。ですが、ヒトの細胞のように役割分担をして、組織や器官を作っているわけではありません。このような体を連生体 (coenobium) (註4) といいます。
◆「Y」◆
私は、カツオノエボシの個虫、ミツバチの個体、ウスエダミドリイシのポリプ、ヒトやサクラの個体、タマヒゲマワリの連生体は、階層構造の中で同じ高さに位置すると考えています。これらをひっくるめて、仮に「Y」と呼びます。
◆階層構造にもとづく生き物の仲間分け◆
私は、階層構造のつくりによって、生き物や生き物に似たものはA~Eの5つに分類できると考えています (図2-c)。
▲図2-c: 階層構造にもとづく生物の分類
Aの生き物は、役割の違うYが組み合さってXを作ります。カツオノエボシ、ミツバチなどがこれに当ります。
Bの生き物は、役割の違う細胞が組み合さってYを作ります。Xを作ることもありますが、Aの生き物のようにY同士で役割分担をすることはありません。ウスエダミドリイシ、ヒト、サクラなどがこれに当ります。
Cの生き物は、細胞を作ります。Yを作ることもありますが、Bの生き物のように細胞同士で役割分担をすることはありません。タマヒゲマワリ、ゾウリムシ、大腸菌などがこれに当ります。
Dは、細胞を作らない代りに病毒子 (virion) を作ります。病毒子は、蛋白質でできた殻の中に、DNAかRNAが入っています。T2ファージやインフルエンザウイルスなどの病毒 (virus) がこれに当ります。
Eは、細胞も病毒子も作りません。細胞膜も蛋白質の殻もなく、DNAかRNAだけで成り立っています。類病毒 (viroid)、衛星核酸 (satellite nucleic acid) がこれに当ります。