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荒れる会議

次回更新はお休みです。

次の更新は8月19日になります。

「先ずは…闇奴隷に関してになります。」

 ザラスが手元の資料を読み上げる様に述べる。この国では当然闇奴隷が禁止されている。しかし奴隷はその性質上一度仲介を挟むと正規なのか闇なのか判別できなくなる。ならばその前段階で止めるしかない。


「…成る程の、闇奴隷商を摘発か。その為には…各領地が足並みを揃えねばならんな。1つが甘くすればそこに身を潜め力を蓄えるじゃろうて。」

 ザラスの提出した報告書を読んでいる大公達。その中の1人、白髪の老人が声をあげる。一見好々爺に見えるがその頬には深い切り傷が刻まれていた。バーンスターク家当主ハイヘルム・バーンスタークである。その視線はある当主の方向を向いていた。


「なんだ?バーンスタークのジジイ?。俺になんか用かよ?。」

 ハイヘルムの視線を受け、睨み返すのはイシュタル家当主ロイド・イシュタルである。


「お主の領地では…行方不明の者が多数おるそうじゃな?。何故それを見過ごす?。お主が無能なのか?それともお主自身が頭をなのか?。」


「…おい、ジジィ、はっきり言ったらどうなんだよ。俺を疑ってるんだろ?。」


「あぁ、そうじゃな。闇奴隷商には確実に大きな雇い主がおるはずじゃて。その条件が偶々お主に当てはまっておるのう。」


『ピキッ!………。」


『…バッ‼︎。』

 ハイヘルムとロイドの間に魔力が走る。その瞬間七大公の護衛が其々の主人の前に躍り出る。各々が構えをとり警戒をする中で1人微動だにしない男がいた。


「お、オウギ様!。一体何が!。」

 エリザベスの隣にいるオウギである。オウギだけはこの状況で一歩も動かず静観していた。


「大丈夫です。安心してください。お2人は僕が護りますよ。」

 服を掴んで不安そうな顔をするエリザベスを落ち着かせる様に語りかけるオウギ。しかしそこに割り込む者が現れる。


「おいおい、そこのお前!。普通護衛は主人を守るものだろう?。何故動かない?。いや、それとも殺気を感じ取れなかったのか?。それは余りにもこの場に相応しくないだろう。」

 エリザベスの隣を動かないオウギをバカにするような声が響く。イシュタル家の護衛を務める男だった。明らかに裏の稼業を生業としている。


「……………。」


「だんまりか。腰抜けが。その隣の女もなんだ?。この場に相応しくないなぁ。なぁなぁ…俺の相手を…」


「…黙れ。」


「…あ?それは…俺に言ったのか?。すいません、ご主人、喧嘩を売られちまったよ。これは…正当な…防衛権の行使ですぜ?。」

 青筋を浮かべた護衛の男がオウギに方へ向かう。その手は背中に背負う大剣に伸びていた。


「…『脆弱な泥沼』。」


「…な、なんだ⁉︎。足が…抜けない。いや、それどころか…体が…沈んで…!。この!くそ、…クソが!。おいっ!お前!こんなことをしても良いと思っているのか!。」

 喚くイシュタル家の護衛。その身は徐々に沈んでいく。


「良いじゃろうな。何せザラス殿の護衛は正当な防衛じゃからの。何故そのオウギと呼ばれた男が動かなかったのか。動かずとも事足りるからじゃの。それに理解せずに因縁をふっかけたのはお主の方じゃて。それはこの場にいる全員が証明する。…いや、イシュタル家当主だけはお前の味方かの?。」


「…ちっ、早まりやがって。」

 ロイドもこの状況が自分に悪いことを悟ったのか舌打ちをしながらも護衛を弁護しない。弁護すれば元々悪い心証が取り返しの付かないとところまでいってしまう。


「なればお主がどうなろうとも知った事ではないのぉ。抵抗したければするが良い。護衛全員を相手どれると思うならのぉ。…と言っても最早どうにもならまいか。」

 ロイドが護衛を見捨てたことを確認したハイヘルムが護衛に終わりだと告げる。この護衛はこの場で殺されようとも仕方がない状況になったのだ。


「…あ…この……す、すまなかった。…謝る!。…だから…」

 既に胸の辺りまで沈んでいる護衛が命乞いを始める。先程までの高圧的な態度とは違い顔中に冷や汗を流している。


「何に謝っているのでしょうか?。それにその魔法は実力依存。貴方が僕より強いならそもそも沈まない。」


「…っ、お、お前を!護衛に相応しくないと言った事だ!。そうだろ!馬鹿にして済まなかった。」


「…貴方は何も理解していない。僕を馬鹿にするのは勝手にすれば良い。だけど…僕の大切な人をそうする事は許さない。」

 オウギの体に魔力が満ちる。


「…あ、うぅ………あ、ぁ…」

 イシュタル家の護衛は顔が沈みきる前に気絶してしまう。オウギの魔力と自らの未来に耐えきれなかったのだ。


「…解除。…すいません、ザラスさん。こんなことをしてしまって。」

 それを見たオウギは魔法を解除。イシュタル家の護衛が地面に現れる。


「いや、オウギ殿は何も悪くはない。エリザベスを守ってくれて感謝する。」

 ザラスはオウギが何故動かないかを理解していた。ザラスの願いは愛娘であるエリザベスの安全だったからである。なのでオウギはエリザベスの護衛を第一に考えたのだった。


「さて…では続けましょうか?。無論…全領揃っての闇奴隷摘発に反対の方はおりませんな?。」

 ザラスが問いかける。今この場でそれに反対できる者はいなかった。


(…あの馬鹿が。……こんなことならあいつを引きずってでも連れてくるんだった。…だがこのままでは終わらせねー。…殺してやる。)

 1人イシュタル家当主の目には憎悪の炎が灯っていた。

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