会議始まる
ノードルマン家に宿泊することになったオウギ達。豪華な部屋に宿泊し朝を迎える。その後朝ごはんをご馳走になり今に至る。
「それではオウギ殿、これより会議の会場に向かいます。本日はよろしくお願いします。」
朝食を終えたオウギにザラスが話しかける。昨晩ティーシャとも話しオウギが信頼に値すると確信したのである。そのザラスの隣にはエリザベスも控えている。エリザベスもオウギと共に会議に参加することになっている。
「ユーリちゃん、カノンちゃん、グーちゃんは私と一緒に遊びましょうね。今日はね、一緒に買い物にも行きたいわぁ。」
ティーシャがユーリ達に抱きつきながら言う。ユーリ達を着飾らせる気満々であった。
「え、あの、私はオウギ様に…」
「あー、ユーリちゃん、だめだめ、この会議はそれぞれ護衛が1人、秘書が1人までなの。だからどの大公も指輪の持ち主を連れてくるわけ。だって自分が信頼している人だしね。」
オウギの側に控えようとするユーリをティーシャが諌める。
「あう、そうなんですか。………オウギ様。」
「うん、僕の事はいいから、今日はティーシャさんと過ごしておいで。カノンやグーちゃんの事は頼んだよ。」
「はい!。…オウギ様も頑張ってください。」
「んー、可愛いわ。ささ、みんな行きましょ。可愛い服を一杯着せてあげるし美味しいものも食べさせてあげるわよ。」
健気に体の前で拳を握りオウギに声援を送るユーリの姿に心打たれたティーシャは抱きついたままユーリ達を連れて行ってしまう。
「もう、お母様ったら。…そんなに私が冒険に出て、家にいないのが不満なのかしら。」
ティーシャの態度にエリザベスはため息をつく。エリザベスは回復魔法の専門家としてだけでなくBランクの冒険者として忙しい身である。その為家に滞在することが少なく更に服もあまり華美なものやフリフリなものは好まない。なので年頃の娘を持った感をティーシャがあまり満たせていないのである。
「…行こうか。」
愛妻家兼恐妻家であると同時に愛娘家であるザラスはエリザベスの言葉を聞こえていないふりをし、会議の場へとオウギを促すのだった。
「それではこれより議を執り行います。此度の議長は私、ザラス・ノードルマンが務めます。」
大公会議が始まった。会場はある建物の一室である。一見、何の変哲も無い部屋だが実際は各所に防御魔法や感知魔法の効果が付与されている魔導具が設置されている。この後場にいる者たちの立場を考えれば当然とも言えるだろう。部屋の中には円卓が一つ。そしてそれを囲むように更に大きな円卓があった。中の円卓にはそれぞれの大公家の当主が、その周りの円卓には護衛と秘書が座している。
「先ずは代変わりの連絡です。カルスホルン家では先代が逝去され、その息子のアルタイル殿が家を継がれました。申し訳有りませんがアルタイル殿、一言よろしいですか。」
ザラスが視線を向けた先には1人の青年がいた。二十代であろうその青年はザラスの呼び掛けに頷き席を立つ。
「ご紹介に預かりました、アルタイル・カルスホルンです。まだまだ皆さんには及ばない若輩者ですがご指導ご鞭撻よろしくお願いします。」
そう言い頭を下げる。自信のなさげな態度ではあるがこの場にいる大公で彼を舐める者はいない。カルスホルン家は武を尊ぶ家柄。その当主の座は継承権を持つ者での乱闘によって決定される。代々強さを研ぎ澄ましていったその家の当主、つまりアルタイルは強者である。自分達の後ろに控える指輪の所持者よりも強い可能性もあるのだ。
「…さぁ、それではこの国を豊かにする為の会議を始めましょう。」
腹に一物を持つ者たちの言葉の戦が幕を開ける。