オウギ、絡まれる
「おいにいちゃんちょっと待ちなよ。」
ギルドから出ようとするオウギを呼び止める声。
「…えーとなんでしょうか。」
本当はこんな展開いつもなので分かってはいるが一応質問してみるオウギ。振り返ると4人組の男達がいた。みるからに荒事になれていますといった風貌の4人組はニヤニヤと笑いながらオウギを取り囲む。
「にいちゃんガイ取りなんだってな。はぐれ者だろ?。ならそれなりの誠意を見せろよ。」
組織に所属しないガイ取りはギルドに所属する冒険者から邪険にされることが多々ある。彼らからすれば自分達の狩場を荒らす厄介者と思えるためである。
「誠意って…」
「そうだなぁ…今結構持ってるんだろ?。その半分で手を打とうじゃねーか。なぁ…悪い話じゃないだろう。」
金を出さなければどうなるか分かってんだろという視線をオウギに向けながらリーダー格の男が言う。それに対しオウギは、
「それは嫌ですね。僕が稼いだお金なので。」
一切の躊躇もなく断った。当然4人組の額には青筋が浮かぶ。
「へぇ、…言ってくれるじゃないか。若さゆえに状況判断ができないようだな。おい、今から訓練所を使う。そこでこの町の礼儀を叩き込んでやるよ。」
訓練所、ギルドに併設された場所で新人が戦いの訓練を行う他決闘にも用いられる。この場合当然男達はオウギに決闘を申し込むつもりだったのだろう。
「え、嫌ですけど。僕は受けませんよ?。そもそも受ける理由がありませんし。」
その要求もつっぱねるオウギ。
「な、はっ、流石流れ者。プライドがないってか。決闘を申し込まれて断るとはな。」
挑発をしてオウギを誘い出そうとする男。
「なんと言われても僕は受けません。」
「…この、下手に出てれば…」
しびれを切らしたのか男達のうち1人が飛びかかる。鍛え上げられたその腕を振りかぶりオウギをなぐりつけようとする。
「…はぁ、…『龍眼』。」
それを見たオウギは周りに聞こえないような小声で魔法を唱え飛びかかってきた男と眼を合わせる。オウギの蒼く変化した瞳を見た男は動きを止める。
「かっ、はぁはぁ…はぁはぁ…はぁ…」
荒い息を繰り返すが最後には床に倒れてしまう。
「な⁉︎お、おいゲン!。テメェ何しがった!。」
倒れた男に駆け寄る男達。
「僕は何もしていませんよ。偶々過呼吸になって偶々倒れて偶々打ち所が悪かったんじゃないですか?。」
「そんな話が通じるわけがないだろ!。…テメェは今俺たちの仲間に手を出した!。それを兵士達に伝えられたくなかったら決闘を受けな。」
(これはもう…受けた方が楽だな。)
「分かりました。受けます。その代わり僕が勝てばこの町で僕の邪魔をしないでください。」
「あぁいいぜ、お前が五体満足でいられたらの話だけどな。…いくぞテメェら 。」
「さてさて体にお別れは言ったかい?。」
オウギを囲むように3人が立つ。その中のリーダー格の男が大剣を構えながら言う。
「決闘なのに1人じゃないんですね。」
その様子を冷めた目で見ながらオウギが言う。こちらは構えなどとっておらず隙だらけといった感じだった。
「そんなルール決まってなかったからな。ちゃんと確認しなかったお前が悪い。後悔してももう遅いんだよ。あの時素直に払ってれば体は無事だったのにな。」
3人の1人双剣を持つ男が剣同士を摺り合わせながら言う。
「僕は武器もなしですか?。」
「いや、使ってもいいぜ。ただしギルドに所属してない奴はこれだけどな。」
そう言って見せるのは木刀だった。当然男達の剣は鋼で出来ており太刀打ち出来るはずがない。
「…そうですか。なら僕は…」
そう言ってオウギがその木刀を手に取る。その様子を見て下卑た笑いを浮かべる3人。
「これでいきます。」
オウギが木刀を地面にあてる。
『…ドゴォォォォォン‼︎‼︎』
地面に亀裂が入り男達が驚愕の表情を見せるのだった。