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スラムにて

「…ん?あぁクリーナは女だぞ。」


「え⁉︎あ、私…す、すいません。勘違いしてたみたいです。」


「まぁ、俺も女って言ってなかったしな。それにガキには変わりない。本人も気にしてないだろうしな。」


「…そんじゃあ兄ちゃん達をクリーナの所へ案内する。ついてきてくれ。あ、そうだこれから行くのは一応はスラムだ。何があるかは分からんからそのつもりでな。」

 そう言いガードルが店を出て道を行く。その腰には冒険者時代に使っていたであろう剣が鞘に入れられぶら下げられている。


「…ユーリ、一応剣を抜けるようにしておいてね。そして害意を感じたら迷いなく剣を抜き振るうんだ。雑踏では一瞬の迷いが致命的なことになるかも知れないからね。」

 ガードルの後ろをついて歩きながらオウギがユーリに言う。オウギは自分の力を過信してはいない。自分が張る探査網に引っかからない存在がいるであろうと考えている。万全を期しなくて後悔するのは御免だった。


「分かりましたオウギ様!。グーちゃんもお願いしますね。」


『プルプル‼︎』

 オウギの言葉に力強く頷くユーリ。そして相棒のグーちゃんと共に周囲を警戒する。と言ってもユーリはまだまだ未熟な為殺気などを感知することは難しいことには変わりない。それでもオウギの役に立ちたいと警戒をするのだった。


『…グー…スピー…』

 カノンはオウギの頭の上で爆睡。オウギ達が冒険者ギルドを訪れた時から微動だにしていない。それは強者としての余裕なのか何も気にしていないのかオウギの事を信頼しきっているのか。それを知るのはカノンだけである。





「…ここからがスラムだ。」

 しばらく歩いたオウギのはある区画に辿り着く。明らかに町の中心街とは一線を画す雰囲気がある。その証拠にガードルも腰の剣に手を当てている。


「…ごくっ…。」

 ユーリもその雰囲気を感じているのか辺りをキョロキョロと見回す。


「ユーリ、不安だろうけどそんなに見渡さない方が良い。視界に頼る事は大きな隙を生むことに繋がる。見る範囲は正対する面だけでいい。ユーリにはグーちゃんもいる。分担すれば死角がなくなる。」


「はい。グーちゃん後ろをお願いね。」

 ユーリの言葉に応えるようにグーちゃんが後ろを警戒する。


『…ゴトッ!』

 そんな時物音がなる。その音に反応して剣を構えるユーリ。


「…はっ!。……子供…」

 現れたのは子供。薄汚れた服を身に纏いふらふらと歩き寄って来る。それをみたユーリは以前の自分を思い出すのか表情を曇らせる。


「…あの…少しでいいんです、お願いします…お願いします…おねぇちゃんは守ってくれた、だから今度は私たちが…」

 その子供はオウギ達の前に膝をつくと頭を下げ手だけを上に上げる。物乞いであった。何の技術も知恵もない子供がとれる唯一と言ってもいい生きる為の行動。


「…これもクリーナの不調が原因だな。あいつはこういう奴らを守っていた。自分の金を使って食わせていた。だから最近はこういうガキは見なかったんだが…」


「…っ、オウギ様…」

 ガードルの話を聞き自らの懐に手をのばすユーリ。そこには確かに目の前の子供を救うだけのお金がある。


「…ユーリが今持っているお金はユーリ自身が稼いだお金だ。だからどう使おうと自由だ。でもこれだけは覚えていて欲しい。安易な施しは逆効果だ、味を占めた者は同じ行動を繰り返す。成長を止めることになる。」


「…っ、…それでも私は…」

 オウギの言葉を受けて尚ユーリは子供を助けようとする。しかしそれをオウギが遮る。


「…だからこれは施しなんかじゃない。依頼を達成するために必要なこと。…これで君達の慕うクリーナの所へ連れてってくれないか?。」

 オウギは懐へ手を入れそこから小銭を取り出す。オウギは初めからこの子供を助けるつもりだったのだ。


「………」

 しかし子供はクリーナの名前が出た途端慌てて立ち上がり走り去ってしまう。


「…え⁉︎あ、ちょっと…」

 思わぬ行動にユーリが驚きの声をあげる。


「成る程、余程慕われてるんですね。僕がクリーナさんの名前を出した途端にですか。」

 対照的にオウギは感心したような声を出す。自分の体は栄養不足でふらふら、にも関わらず目先の金を受け取ることにより慕うクリーナに危害が及ぶ可能性に気付いた途端走り去る。三大欲求である食欲を前にその行動は中々取れるものではないだろう。


「あいつは惹きつけるのさ。物でも人柄でもな。」


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