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冒険者職業斡旋所

「うんっ、うまうま…この宿にして正解だったな。」

 オウギは予言者による予知夢の後二度寝することなく朝ごはんを楽しんでいた。


「すいませーん!この肉ってどこかで買えますか?。」

 朝食に出ていたベーコン。その味が気に入ったオウギはその仕入れ先を尋ねる。


「これは大通りの肉屋さんから買ってまーす。でも味付けはウチの特製です。他では食べれませんよー!。」

 宿で働いていた少女。10歳ぐらいだろうか。黒い髪を肩甲骨の辺りまで伸ばし1つにくくっている。おそらくこの宿の娘だろう…が元気に答える。


「え!本当ですか!…因みに分けていただくか作りかたを教えていただくことは…」


「はっはっは‼︎にいちゃん商人かい?。残念ながら作りかたを教えることは出来ないな。どうしてもというならウチの娘の婿になるといい。毎日食えるぞ?。」

 店の台所から大柄な男が現れる。腕の筋肉ははち切れんばかりに膨れており調理のためにつけていたであろうエプロンが不似合いこの上ない。昨夜オウギの受付をした時この宿の主人だと言っていた。話の内容からすると給仕していた娘の父親のようだ。


「お父さん!何言ってるの!。すいません、気にしないでください。戯言なんで。」

 なんでもないような親娘の会話。しかしその生活の安全を保障する兵士達の行方は未だ不明だった。


「はっは!。そう言えば町の兵士達が消えたらしいな。にいちゃん弱そうだから巻き込まれないように気をつけなよ。死んじまっても宿代は返せねーからな。」

 オウギはこの宿に泊まる際1週間分の宿泊費を先払いしていた。手持ちが滞在費ときっちり一緒だったのでついでと思い払っておいたのだ。


「そうですね、死んでしまってはこの肉を食べられなくなってしまいます。それは困るので気をつけることにしますよ。」

 宿の主人からの忠告。それはオウギの身を案じてのことであった。それを理解しているオウギも忠告に従うことを告げた。







「ここか。うーん、…まぁ行くか。」

 朝食を終えたオウギはある建物の前に来ていた。『冒険者職業斡旋所』…いわゆる冒険者ギルドと呼ばれる建物である。


『ギィィィイ…』

 立て付けの悪いドアを開け中に入るオウギ。中にいる人々から視線が飛ばされる。


(はぁ、いつもいつもこの視線だけは嫌になるなぁ。)

 そんなことを思いながらオウギは奥の方にある買い取りカウンターに向かう。


「すいません、この素材の買い取りをお願いしたいんですけど。」

 空いているカウンターを見つけそこにいた女性に声をかける。


「あ、はーい。…えーと初めての方ですよね?。冒険者の方ですか?。そうならカードを見せてくださいね。」

 この町にいる冒険者の顔は一通り知っているのだろう。オウギの顔を見て町の所属ではないことを理解する。


「あ、いえ、僕は冒険者じゃないです。なのでガイ取りでお願いします。」

 ”ガイ取り”…冒険者ギルドに所属していない者が依頼する買い取りのこと。


「ガイ取りですか…ご存知かもしれませんがそれですと買い取り額の九割の支払いとなりますがよろしいですか?。」

 冒険者ギルドに所属する者はギルドに寄せられた依頼をこなすことにより運営費を納めることになる。しかし属さない者は手数料という形で一割を持っていかれるのだ。


「はい、それで大丈夫です。えーと素材は…キュアリーフと、ディアブロボロスの角です。角は一対であります。」

 キュアリーフは薬師系の職業の者が他の素材と煮詰めことによって回復に用いるポーションを作ることが出来る。

 ディアブロボロスは二本の角を持つ牛で強力な膂力をもちいて人を襲う魔獣である。


「…ディアブロボロスですか、少々お待ちください。」

 受け付けの女性が奥に角を持っていく。おそらく鑑定の魔法で真偽を確かめにいくのだろう。


「お待たせいたしました。…ランクCディアブロボロスの角の納品を確認いたしました。お支払いといたしましてキュアリーフ1枚八百ギル、ディアブロボロスの角は一対揃いですので十万ギルになります。あの…本当にギルドに加入されなくてもよろしいのですか?。」

 基本的にCランクの魔物はCランクの冒険者が討伐するのが相当とされCランクの冒険者といえば中堅として捉えられている。当然ギルドとしても戦力として加入を願いたい。


「すいません、僕はゆっくりやるのがあってるんで。今のところギルドに加入するつもりはありません。」

 これまで幾度と繰り返してきたやりとりをこなすオウギ。


「そうですか、わかりました。また気が変わりましたらよろしくお願いします。」

 オウギに代金を支払い受け付け嬢が頭を下げる。オウギは軽く会釈をしてギルドをあとにしようとする。が、


「おい、にいちゃんちょっと待ちなよ。」

 そう簡単にはいかなかったようだ。

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