エリザベスの手紙、そして予知
『拝啓オウギ様
まず始めにこの様な書面でのやり取りになることをお詫び致します。オウギ様に助けていただいたおかげで病気の母の元へ赴くことが出来、また母の病気も快方に向かっております。ただ未だ完治には至っておらず側を離れることが出来ない為こうして筆を取らせていただいた次第でございます。それでは早速ですが本題に入らして頂きます。私、エリザベス・ノードルマンは貴殿オウギ様から受けた恩に対して「侯翼の指輪」を差し上げます。その指輪を見せていただくと色々なところで融通が効くと思います。些細な物ですがお納めください。勿論後日直接お礼に参ります。その時にはもう少ししっかりとした御礼の品をお渡しいたしますので少しお待ちいただければと存じます。
最後になりますが此度の貴殿の活躍には本当に感謝しています。これからも貴殿が活躍されることをお祈りいたしまして文を締めくくらせていただきます。
エリザベス・ノードルマン』
「……重い!。俺はただ助けただけなのに…」
手紙を読み終えたオウギはあまりの文面の丁寧さ、恩の感じ方に疲れていた。
「…それにしても…この指輪…『候翼の指輪』って…、まさかね。そんな少し会っただけの男に渡すわけないか。」
思い当たったことを首を振り頭から払うオウギ。真ん中の大きな石に二対の羽が生えたようなデザイン。リングの部分にも趣向が凝らされていて相当な価値があることが窺い知れる。そんな実際の意味でも重厚な指輪。やはり指につけるには抵抗がある。
「…そうだ、確か…」
比類なき穴を開き中を探るオウギ。
「…あったあった。これで首からかけとくか。」
取り出したチェーンを指輪に通し首からかける。その際外に出すのではなく服の中にしまっておくことも忘れない。
「…こんなの見る人が見たら高い物だってわかっちゃうもんね。無駄なことは避けないと。」
オウギの見た目であれば指輪の存在が露見した場合十中八九カモにされるだろう。勿論その相手がオウギに勝てるかは不明だが余計な騒ぎを起こしたくはないオウギであった。
「…寝よ。」
眠気に耐えられなくなったのかオウギは一言呟くとベッドに体を沈めた。
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それは仄暗い空間で起こっていた。血に塗れたオウギと目の前で笑う男。
「オ、オウギ殿!。」
オウギを呼ぶ声が響く。
「……………。」
しかしその声に答えるものはいない。流れ出た血が地面を紅く、黒く染めていた。
「はっ!。…夢…?。いや、それにしては…」
飛び起きたオウギ。その体は先ほど見た光景のためか汗に濡れていた。
「…まさか…」
ある思いがふと去来し、カードを取り出すオウギ。
「…かぁ〜、マジかよ。」
そのカードには
オウギ
18歳
適正職業
勇者 Level3
魔導師 Level3
剣聖 Level3
予言者 Level3 (日替わり)
道化師 Level3 (日替わり)
???
???
と書かれていた。オウギが衝撃を受けたのは予言者の部分だった。
「…予言者か。ってことは夢じゃないってことかー。でもLevel3じゃ光景が曖昧すぎるんだよな。…ったく不便なのか便利なのか。」
予言者、その身に降りかかる災いを夢に見ることができる。Levelが上がるごとに鮮明に見ることが出来、感覚でおおよその起こるタイミングも知ることが出来る。
「…血塗れだったなー。でも…まぁ俺に出来ることは特にないな。世の中なるようにしかならないし。時間も良い感じだし起きちゃお。」
見た光景にも関わらずいつも通りの行動をとろうとするオウギ。そこにはある種の悟りのようなものが感じられたのだった。楽観的なのか強者の余裕なのかうかがい知ることはできなかった。