ユーリの成長
「…この辺ならそこまで強い魔物はいないな。」
地面に手を当てたオウギが呟く。魔物の氾濫はオウギが制圧したが魔物は湧き上がるもの、日常的に増える。
「わ、私!頑張りまふ!。…ます!。」
ユーリが拳を体の前に持ってきて意気込む。しかし緊張しているのか噛んでしまっていた。
「…君に眠る可能性、それは『モンスターテイマー』。魔物を使役する万能タイプの才能。」
「…モンスターテイマー。魔物を…使役…。」
「あまりその適性を持つ人がいないから…使役の条件も不明だ。ただ残っている情報としては税金に苦しむ農夫がある時目覚めた、暴君に仕えた騎士が追放され、冒険者として名を馳せた等がある。」
「…そこから推察するに…何かに仕えた者、更には虐げられた者、そして…這い上がる決意を秘めた者。これが僕が考える発現の条件だ。」
「…這い上がる決意。私は…変わりたいです。強くなって…選択できるようになりたい。義務付けられた未来を否定したい。」
オウギの話を聞きユーリが言う。その言葉は自らの経験に基づくものであった。
「なら、とりあえず戦えるようになろう。テイマーというからには魔物を手なづけなければならないはず。その為には個人としての強さが必要だ。」
「ユーリは魔物と戦ったことは?。」
「…ありません。でも!…」
「落ち着いて。大丈夫、順序に沿って訓練を積めば必ず強くなる。焦らなくてもいい。」
「ユーリの体格なら…これだな。」
そう言いオウギが懐から取り出したのはナイフ。刃渡り10センチ程の簡素なナイフだった。
「…あまり大きな武器は振り回されるだけだ。そのナイフで技術を確実に体に染み込ませて。それが出来ればどんな武器でも使えるようになる。」
「…でも、私適性が…」
「努力は無駄にはならない。…って僕が言っても説得力はないな。」
「いいえ、私、頑張ります!。」
こうしてユーリの修行の日々が始まる。
「…大分良くなった。これなら魔物と戦ってみてもいいかもしれない。」
ユーリが修行を開始してから2週間が経過していた。適性はないものの弛まぬ努力の成果で冒険者に登録しても良いレベルまでになっていた。変化はそれだけではない。
「…それにしても大きくなったね。」
オウギの前にいるユーリは2週間前とは別人のようになっていた。今までの奴隷としての生活、更には元々貧乏だった為栄養不足で抑制されていた身体的成長が充分なご飯と睡眠によって顕著に現れたのだ。以前は10歳ぐらいしか無かったが今はほぼ成人女性の平均ぐらいまで伸びている。
「お、オウギ様は小さい方がお好みですか⁉︎。…それなら…私は…」
オウギの発言を聞き涙目になりながらユーリが尋ねる。
「いや、そんなことないよ。成長すれば扱える武器も増えるしね。」
「…ほっ。」
安心したかのように息を吐くユーリ。
「…お、来たな。あれはランクEのバンラビットか。ちょうどいい、あれを討伐してみよう。」
オウギ達の前に兎の魔物が現れる。通常の兎に比べ少し大型で額に角が一本生えている。
「…ごくっ、…アレを私が…」
「…心配しなくてもいい。初めての狩りは誰でも緊張するものだ。出来ることをやればいいんだ。」
「…はい!。私行きます。」
ナイフを構えたユーリが駆け出す。
『キュ!。…キュゥ‼︎』
その姿を見たバンラビットもユーリに角を向け駆け出してくる。両者の距離が一気に縮まる。
「…やれる。…あんなに練習したんだ。直線でくる相手には…先ず躱す!。」
ユーリが突如横に飛び交錯を避ける。
『キュゥ⁉︎』
目の前から消えたユーリに驚き速度を緩めるバンラビット。
「…ここです。…攻撃する時は迷わない。一撃で決める。」
速度を緩めたバンラビットの側面からナイフを突き刺すユーリ。刺したナイフをスライドさせ身を切り裂く。
『キュァァァァァ…』
側面を抑えられている為何も出来ずもがくバンラビット。しかしその声も次第に小さくなりついには息絶える。
「はぁはぁ、やった。…初めて魔物を倒した。」
ユーリは自分の手に残る感覚、命を奪う感覚をその身に刻み込んでいた。
「おめでとう、これが君の成長の証だ。」
次回更新はお休みさせていただきます。
次の更新は2月21日になります。
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