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ユーリの立場

「あの、オウギ様…これは…」

 奴隷の少女ユーリは戸惑っていた。オウギに買われ昨日は不敬にも同じ部屋で寝てしまった。本来なら奴隷は安い部屋をとるか馬小屋などで寝ることになる。しかしオウギはそんなことは許さない。説得の末ユーリは同じ部屋で寝た。だが今ユーリが戸惑っているのはその事ではない。目の前の…料理。所狭しと並べられた朝食が原因だった。ユーリは食卓の席に着けずにいた。


「ん?。朝ご飯だよ。この宿のご飯は凄く美味しいんだよ。沢山食べなよ。今日は動くことになるからね。」

 ユーリの様子に気付かずオウギが席に着き朝食を勧める。


「…私はその…奴隷です。こんな豪華なご飯を頂くわけには…。それに私はまだオウギ様に何も返せていません。」

 ユーリが戸惑っていた理由。その本質はオウギのユーリに対する扱いにある。優しい人だとは思っていた。周りの目も気にならない剛毅な人だ。それでも自分は奴隷。働かずしてご飯を与えられることに納得がいかなかった。


「…僕は別に君に何かを返してもらうつもりはないよ。というか独り立ち出来る様になれば解放しようと思っている。」

 未だ座ろうとしないユーリ。それを見かねたオウギが自身の考えているプランを話す。ユーリを奴隷として扱うつもりはない。モンスターテイマーの適性が発現し1人でやっていける様になれば奴隷から解放するつもりだと。


「…それはダメです!。私は…オウギ様に救われました。私の誇りにかけてオウギ様にご恩をお返しします。…もしオウギ様が私が必要ないとお思いになれば…奴隷商にお売り下さい。少しは…お金をお返し出来ると思います。」

 ユーリはオウギの発言を聞きしっぽを逆だてる。それは怒りによるものではない。自分を少しでも大きく見せ発言を認めてもらう為のもの、つまり動物でいう威嚇であった。


「…頑固だね。…分かった、なら君が納得するまで僕は君を解放しない。僕に…尽くしてもらう。その代わり…」


「僕は君を奴隷としては扱わない。友達、仲間として扱う。」


「だから一緒にご飯を食べてもらう。」

 オウギの提案。それは詭弁にも思えるがこの状況で双方が納得する、いや、せざるを得ない内容だった。


「…それでは…頂きます。」

 ユーリは渋々といった風に席につく。そしてオウギがまず食べたのを確認してから料理に手を出す。


「…ぱく…ぱくぱく…ガツガツ…」

 初めはゆっくりと食べていたが時間が経つにつれペースが上がり無言で食べ進めるユーリ。その目には薄っすらと涙が浮かんでいた。


「…ぐすっ、…もう…こんなご飯食べれないと思ってました。…美味しい、美味しいよぉ。」

 先程までは自分のプライドで押さえ込んでいたが既に空腹は限界だった。奴隷としての生活では1日に一食食べれればいい方だった。それも残飯の様な物ばかり当然味など気にしてはいられない。失われていた味覚、食事を楽しむといつ感覚が蘇る。


「…沢山食べるといい。体が満たされなければ成長はあり得ない。自分で生きていく力を得る為に…食べるんだ。」


「…はい、はい!。」

 オウギの言葉に頷きながら次々と食べ進めるユーリ。


「腹を満たしたら次は力を手に入れる番だ。」


「僕が君の可能性を開花させてみせる。」


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