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少女の名と可能性

「あ、あのオウギ様…その…私…」

 オウギによって奴隷商のところから連れられた少女は顔を赤くしながら何かを言おうとする。今少女は自分を助けるという約束を守ってくれた嬉しさとお姫様抱っこをされているという照れ臭さに板挟みになっていた。


「…重くないですか?。…それに…スンスン…匂い大丈夫ですか?。その…2日間お風呂に入れてないので…」

 結局口から出たのは自身について。現状のお姫様抱っこのオウギへの負担、そして匂い。以前ほどはしないと思うが流石に風呂に入りたてのようにはいかず髪も少し脂が出ている。


「ん?。別に大丈夫。寧ろ軽いくらいだし…匂いって言うなら僕も相当だと思うからね。」

 そう言うオウギの服は破れ所々血の跡の様な物が付着している。当然その血は魔物の物も含まれてはいるがオウギ自身の物もある。


「…あの、その服って…破れて…」


「あぁ、少し魔物と戦ったからね。」


「魔物…?。オウギ様は冒険者様なのですか?。」


「いいや、違うよ。僕はノージョブ。特に仕事は決まってないかな。…がっかりした?。」


「いえ、そんな!。…あ!私が開けます。」

 話をしているうちにオウギが滞在している宿に到着。部屋の前まで来た段階で少女はオウギから飛び降り部屋のドアを開ける。


「…ありがとう。」


「…そんな、これくらいで。」


「感謝の言葉を伝えることは大事だよ。口に出さなければ本当に伝わっているかはわからないからね。」


「…あの!。…その、ありがとうございました!。私を買ってくれて。」


「…ふふ、ほら、中に入って。お風呂に入ろう。気分がスッキリするからね。」









「…さてと…取り敢えず聞いてもいいかな?。…君の名前を。」

 お風呂に入ったオウギと少女は部屋のベッドに腰掛け話をし始める。オウギが約束と言ったこと。少女の名前を知りたい。その願いが果たされることになる。


「あ、はい!。私はユーリ、ユーリ・ガウスといいます。えーとその、見た通り獣人です。」

 少女、ユーリが自分の獣耳と尻尾を抑えながら言う。


「…ユーリ、良い名前だ。それでユーリは何故奴隷になったの?。」


「それは…家族のためです。私には下に弟と妹がいます。私が奴隷になればその2人が大人になるのに必要なお金になります。…才能のない私が出来る唯一のことでした。」

 このようなことはこの国では少なくない。お金のために自らを売る。貧しい村では良くあることであった。しかし本来は自身の借金を返済し終えた奴隷は解放され手に職を持った職人として生きてゆける。国にも認められている制度だ。ただユーリの場合奴隷商が最悪だったのだ。


「…才能がないか。カードを見せてもらってもいいかな?。」

 オウギがそう言うとユーリは迷わずカードを見せる。


 ユーリ・ガウス

 11歳

 適性職業

 モンスターテイマー(未覚醒)

 農家 Level2

 商人 Level3


「これは…(この子の周りにはこれに気付いてやれる人がいなかったのか。)…もし、君に新しい可能性があると言ったらどうする?。」

 カードを見たオウギ。そこにはまだ発現していないユーリの可能性が記されていた。


「可能性ですか?。」


「あぁ、君は世界でも数える程しかいない適性を手に入れることが出来る。でもその為には…少し危険を伴ってしまう。」

 まだ未覚醒の適性。それを発現させる方法はいくつかあるが戦闘系の場合やはり戦闘での開花が多い。ユーリの適性で戦闘をこなすのはかなり危ないことになる。


「…それはオウギ様の役に立てますか?。私は…!。」


「ユーリ、君は…僕のためじゃない、自分の為になるべきことを選ぶべきだね。…そして言わせてもらうよ。この適性が覚醒すればこれからの君の歩む道を照らす道標になると思う。」


「…私の…道を照らす…。」

 オウギの言葉を何度も反芻するかのように呟くユーリ。そして覚悟を決めた目になる。


「やります!。私に可能性があるなら。」


「うん、分かった。でも明日からね。今日はゆっくりするといい。」

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