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オウギ前線を要求する

「…いた!。おい、あんた。探したぞ。…マスターがあんたのことを呼んでいる。ついてきてくれ。」

 マスターにオウギからの小包を渡した男はマスターの命を受けオウギを呼びにきていた。


「…わかりました。」

 その声に応じ後をついていくオウギ。


「…なぁ、あんたは何者なんだ?。マスターやガロウさんのあんな様子見たことねぇ。…まさかSクラスの冒険者…それとも王都の聖騎士様か?。」

 男が疑問を口にする。男には部屋でマスター達が話していた内容までは聞こえていなかったのだ。しかし男は質問の途中で声を震わせる。自分が先程までオウギにとっていた態度、もし後ろを歩くこの男が今口にしたような身分の時自分の命は無いだろうと考えた為であった。


「そんな緊張しなくてもいいですよ。僕はただの流れ者。ノージョブです。」

 前を歩く男の緊張を魔力の流れから感じとったオウギは穏やかに言う。


「そ、そうか。ふぅー、なら…えーと先に名前を聞いてもいいか?。」


「僕の名前はオウギと言います。今日からしばらくお世話になると思います。」


「…オウギか。(聞いたことのない名だ。)…俺の名はシール。…ん?しばらくって…」


「シールさんですか。よろしくお願いします。」


「あ、あぁ。…ここだ。中にはマスターとAランクのガロウさんがいる。」

 シールがドアを開く。


「…貴方がこの指輪の持ち主か。初めまして私はここのマスターをしておりますドーマと申します。」

 マスターであるドーマが立って待っていた。その姿にシールが驚きを表す。


「…初めましてオウギと言います。あの…もう少し砕けた喋り方にしませんか?。お互いに…気を使うだけですよ。」


「そうか…。なら…不躾だが一つ質問させてくれ。一体なんの用だ?。」


「僕を今回の魔物の氾濫の討伐に参加させてください。」

 オウギが自分の目的を話す。


「…それはこの指輪を授かる程の男が参加してくれるならこちらからお願いしたいくらいだが…」

 ドーマが困惑の表情を見せる。候翼の指輪を授かる程の者は曲者揃いで周りのことに干渉することはあまりない。

 それによりオウギの意図が読めないでいた。


「…そのかわりと言ってはなんですが…」

 オウギの言葉にドーマはきたかっ、と気を引き締める。ことがことだけにある程度のことなら呑むつもりだが毅然とした態度をとることも必要になる。


「…ごくっ。」


「…僕を最前線に配置してください。」


「…へ?。あ、いや、すまない。予想外な言葉だったので。」

 オウギの発言に虚を突かれたドーマは情けない声を漏らす。しかしそこは一つの街のギルドを治める存在、すぐに立て直す。


「何故前線に立ちたい?。あんたみたいな奴は今回みたいなのはあまり相手にしないだろ。」

 ドーマの側に控えていたガロウがオウギに尋ねる。


「…恥ずかしながら僕はお金が必要なんです。それも大金でして。確か魔物の氾濫では…」


「あぁ、討伐した魔物の種類や数によって報酬が支払われることになっている。それを貰うのは冒険者としての当然の権利だ。…して額はいくら程なのだ?。そして…理由は聞いてもいいか?。」

 ガロウがオウギの言葉を紡ぐように続ける。しかし新しい疑問がおこる。候翼の指輪を持つほどの者がなんのために金を欲するのか。


「額はそうですね、5000万ですね。ある女の子を救いたいんです。もちろんそれがただの偽善だってことは分かっています。その子1人助けたところで何も変わらない。でも…僕が助けることが出来るのなら…手が届くなら…救いたい。その為にはお金が必要なんです。」


「…奴隷か。失礼を承知で言わせてもらうならあなたの行動は確かに偽善、自己満足だ。」

 オウギの話を聞いていたドーマ。内容から奴隷についてだと推察する。奴隷を1人救う、それは世界になんの影響も与えない。


「自己満足だ…それでも…それでも…。救われる者がいる。それは事実だ。何もしない傍観者より動く偽善の方が良い。…分かりました。あなたに前線をお任せします。」

 オウギの言葉に感じるところがあったのかドーマがオウギの参戦を了承する。


「…けどよ、あんたはギルドカード持ってないんだろ?。」

 そこでガロウがオウギがガイ取りであることを思い出す。


「はい、えーとそれが…」

 オウギは何か問題があるのかわからず尋ねる。


「実は狩った魔物の数や種類等はギルドカードに記録されるんだ。だから…カードがないとなると…」

 カードがないと正確な討伐数が分からず報酬の支払いに問題が生じることになる。


「…なんとかなりませんか?。…ならば…」

 困り顔のオウギ。今まで自分の適性職業故にギルドカードの発行を避けてきた。ここでも出来れば回避したいがそれも難しい。自分の秘密を開示する覚悟を決めるしかないと考え始めていた。そこに…


「話は聞きました!。私に任せてください!。」

 突如部屋のドアを開けて何者かが入ってくる。


「だ、誰だ⁉︎。」


「エリザベス・ノードルマンの名に於いてオウギ様の力になります。」

 恋するエリザベス推参。

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