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山の異常

「…キリーク様!。ここは我々に任せて…お逃げください!。」

 血まみれになった男が叫ぶ。その視線の先にはその男と同様に血に塗れた男、領主キリークがいた。その腕と脚は竜化しており、激戦の形跡を伺わせる。


「それは出来ない!。私は君たちの長だ。自分の民を見捨てて逃げる事など。出来るはずがない!。…竜化…竜翼‼︎。」

 キリークの背中に巨大な翼が生える。そしてその翼で扇ぐ事によって突風を発生させ迫りくる何かを迎撃する。


「…ごふっ…今の私では…身が…保たないか。だが…皆が逃げる時間ぐらいは…」

 キリークの口元から血が流れ落ちる。自らの体を龍へと変換する竜化。その中で最も難易度が高いとされる翼の顕現は既に満身創痍のキリークの体に重くのしかかる。キリークの体がよろけ、地面に伏す。竜化も解け息も絶え絶えとなって横たわる。


「…おい、この中で1番軽傷なのは誰だ?。」

 それを見た男達。自ずと今すべき事を理解する。


「…俺だ。…すまない。」

 問いに名乗り出る男。確かに怪我はしているものの他の者と比べてはマシな方である。男は身に纏っていた防具を全て外しながらその他の男達への謝罪を口にする。


「気にするな。…そして俺たちのことは気に病むな。誰かがやらなきゃダメなんだ。なら1番可能性が残っている奴に任せるのは当然だ。」

 防具を外した男の元へ集まる男達。ある者は指輪を、ある者はネックレスを、またある者は自分の身分を証明する物を。それぞれ小物を一つずつ男に託す。皆理解していた。ここが今生の別れ。自分たちは二人の男を生かす為にここで果てる。


「…さぁ!いけ!。必ずキリーク様を街へ届け、この事態を知らせろ!。俺たちがこの体で…時間を作ってやる!。」

 その言葉を聞いた男はキリークを担ぎ上げその場から離れる。今自分が出せる最高の速度で。


「まさか俺が貴族様の為に命を投げ出す事になることはな。」


「ふっ、俺たちは貴族の為に命を張るんじゃねーよ。あの人の為だから…やれるんだ。」


「さて、あと俺たちに出来ることは出来るだけ手傷を負わせることか。…爆薬はあるな?。」


「あぁ、あの外皮にどれだけ効くかは分からんが…目眩しにもなる。順々にやってやろう。」


「願わくばこの事態を治める事が出来る強者が近くにいる事を願う。…俺たちの街を守ってくれ!。」

 そして山に爆音が響き地響きが鳴り響く。残った男達はその身を武器に立ち向かい、そして…




『……グギャァァァァァア‼︎。』

 何かに蹂躙された。

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