龍種がいた山
次回更新はお休みします
ネイノールに連れられて領主の館に到着したオウギ達。領主の館は話に聞いていた通り山の入り口にあり、背後には壮大な山々が広がっていた。
「…この山…魔物がいますね。それもかなりの数だ。」
室内へと通されたオウギは屋敷の窓から見える山に様々な気配を感じていた。
「はい、この山は元々我が一族の祖先が契りを交した龍様の住処でした。山自体に魔力が噴き出る場所があり、魔物にとっては好ましい環境のようです。更に公にはされていないのですがこの地には龍様の遺灰が安置されております。」
「ですが安心して下さい。山の魔物は滅多に降りてくる事はありません。龍様と先祖様が張った結界によって魔の物は退けられます。」
「この範囲に結界ですか?。…それは凄いですね。」
山の範囲は館からは全貌を窺い知る事が出来ない大きさである。
「結界があるって事はこっちからも中に入れないの?。」
「いいえ、ある印を持てば結界を抜ける事が出来ます。この山には鍛治に必要な素材も多くあるので腕利きだけに入山を許可しています。冒険者で言うとAランク以上で、尚且つ山で必要な技能を習得して頂きます。」
「Aランク以上ですか⁉︎。…人手って足りるんですか?。」
「はい、問題はありません。Aランクと言ったのは外部から入ってくる人向けの基準です。この領地では山に入る者…『踏破者』を目指す者が鍛治師を目指す者の次に多いんです。」
「この街や近隣で踏破者を目指す者は幼い頃から訓練を積みます。冒険者と違うのはこの山の魔物や地形に特化して対策を習得していく事です。それでも10人に1人しか資格を得る事が出来ませんが。」
「10人に1人…。…なのにそんなに目指す人がいるですか?。」
「そこまでやって目指すだけの理由があるんだよねぇ。まさに立身出世だよ。」
ネイノールの説明する制度の事を知っていたアネッサが言う。
「この山で獲れる鉱石、魔物の素材は一括で我が家が買取り、鍛治ギルドに卸しています。その買取価格は真面目に5年勤めることが出来ればその後普通に暮らす事はできる額になります。勿論、資格をとっていても怪我をすることもありますが、それでも富を求めて希望者は絶えません。」
「…あれ?でもそうやって採取された素材を使った武器を最近は安くしてるって…。って事は鍛治ギルドには安く卸しているって事ですよね。」
「はい、そうですね。その結果確かにこの件では我が家は赤字になっています。ですが貴族としての収入もありますし、大公を拝命したからには国が栄える為の努力は惜しまないつもりです。」
「…さっきキリークも山に入っていると言った。と言う事は戦えると言う事?。」
「え、えぇ、そうです、カノン様。父はこの街で1番の実力者です。なので自ら精鋭を率いて山の異常を調べに行っています。」
「そう、…。後で聞きたい事がある。龍の力について。」
「…っ⁉︎…かしこまりました。私にわかる事でしたら何でもお答え致します。」