移住の第一歩
次回更新はお休みさせていただきます。
次回更新は3月29日になります。
「これで全員ですね。すいません、なんだか急がせてしまったみたいで。」
「いやいや、こちらは世話になった身だよ。文句などあるはずがない。それにしても…これだけの人数を転移させるとはね。恐れ入るよ。」
オウギ達は現在ノードルマン領にやってきていた。ザラスが新しく整備した様々な種族が差別なく暮らしていける街。その一画にオウギの魔法によって鬼人族の村人全員が転移してきていたのだ。
「…俺たち本当に受け入れられるんだろうか。」
「お母さん!見て、人族の子供だよ!。」
「獣人もいるのか。ならば…」
村人達は街の風景を見てそれぞれ感想を口にする。
「トーチカ殿、この街はまだまだ発展途上です。ですがこの街が住み良い街になれば国民の意識が変わる。モデルケースになる事が出来る街なのです。是非貴方達の力をお借りしたい。野菜などのこともそうですが希望者には冒険者として登録していただくことも可能です。」
ザラスがトーチカにこれからのこの街の展望を告げる。
「そうだね、若い者の中には冒険者としてやっていける者もいるだろう。その方が多くの者と出会い人を知る事にも繋がるだろうしね。」
「それなら僕が暫くここに逗留して手解きをしましょう。冒険者の中だけのしきたりなどもありますから。」
「良いのですか、アルタイル殿。」
「えぇ、うちには優秀な内政官が揃っていますから。僕は武の象徴であればいい。」
「あの、…その前にこれから暫く住む場所をなんとかしないとダメなんじゃ…」
それまで成り行きを見守っていたユーリ。オウギに仕える身として普段はこういう場では意見を言わないがザラス達が気がついていないと感じて意見を述べた。
「…おぉ、そうでしたな。…なにぶん急な事だったので仮の住居の用意も出来ていないのを失念していた。今から急がせても…そうですね、五日はかかるか。」
「うむ、私達は元々森に住んでいた。五日ぐらいなら屋根などなくとも問題はないが…」
「いきなり目につきすぎますよね。ここは様々な種族が融和して暮らしていく事を目指す街とはいえいきなりこれだけの人数が現れて野ざらしで暮らしだしたとなれば要らぬ誤解を招きかねません。…僕とオウギさんがいれば資材の運搬などは問題ないですよね。」
「えぇ、材料さえ指定して貰えれば集めてきますよ。」
「分かりました。大至急建築のスキルを持つ者を呼び寄せましょう。一先ず仮の住まいなので簡素なものになってしまいますが…」
「構わないよ。そこまでしてくれるのが望外なくらいさ。自分達の住処ぐらいゆっくりやっていくよ。」