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グラストとの攻防

 オウギが出現させた盾と剣。それを見たグラストは戸惑っていた。オウギの事は魔王から聞いている。大層未来に期待が持てる男だと。自らに届きうる可能性の一つだと。その男が自分を倒すために切り札を切った。だが、


(…あの盾は理解が出来る。並ではない力が宿っている。5、いや6位階程度の奴らの攻撃は封殺されるだろう。俺の攻撃でもそうそう壊れる事は無さそうだ。だが…あの剣はなんだ?。…何も、感じない。)

 オウギの手に持つ盾の異彩よりも逆に目を惹くのはなんでも無そうな剣。意表を突かれたような心境になる。


「…アノン、久しぶりに出番が来てしまったよ。僕は…君を、諌めない!。」

 オウギが剣の刀身を撫でる。当然オウギの手からは血が流れる。そしてその血を剣は啜る。その瞬間爆発的に剣の存在感が増す。


『…うおっ⁉︎。…成る程…その剣も尋常ではないな。良いだろう、お前なら俺の敵と認めるに値する!。ここからは…闘いだ!。』

 オウギの剣への評価を改めたグラスト。その表情は嬉々としており、獰猛な笑みと更に密度を増した魔力でオウギを好敵手と認める。


『…「惨劇の血槍』。誇れ、俺が構えを取るのは…100年ぶりだ。』

 グラストが自ら切った手首から槍状の血が溢れ出す。それを構えたグラスト。そして次の瞬間その姿は消えていた。


「…っ⁉︎…速っ…、…ぐわっぁ‼︎。」

 オウギのすぐ隣に現れたグラストは槍を横薙ぎに振るう。オウギは咄嗟にメルトを構えるが衝撃を殺しきれず吹き飛ばされてしまう。


『軽いな、いくら業物を使おうとも…』


「メルト!解放だ!。」

 吹き飛ばされたオウギはメルトの能力を発動する。受けた衝撃を円環の中で何倍にも増幅し返す。


『…む、…面白い。受けて立つ。』

 グラストは自らに飛来する攻撃を見て足場を固める。この時アネッサはオウギの勝利を確信していた。アネッサはメルトの能力を知っているからである。


『…ぐおっ、…おおおおおぉ‼︎。』

 衝撃を正面から受け止めたグラスト。雄叫びを上げ槍を差し込む。均衡したエネルギーはやがて終息を迎えそこには槍を差し出した姿で無傷のグラストがいた。


「…嘘、……あり得ない。…そんな…」

 目の前の光景に目を疑うアネッサ。だがオウギはそれに動じることなく攻撃に転じる。衝撃波によってグラストの視界から外れたオウギは詠唱を行い魔法を放つ。


「…魔導師と勇者の完全詠唱の魔法です。『凍てつく世界』!。」

 グラストに爆発的な冷気が降り注ぐ。触れた瞬間から凍結を始めるその魔法は瞬く間にグラストは氷柱に閉じ込める。


「…凄い…魔法。」

 痛む傷を押して戦況を見守るアネッサは初めて見るオウギの本気に感嘆の声を漏らす。アルタイルとの戦いでは魔法を使っていなかった。遠近揃った攻撃の多様さがオウギの強みなのだと理解する。


「…まだだ。…アノン…その身に宿る意思を刃に変えよ。…」

 オウギが居合のような構えを取り斬撃を放つ。アネッサには振り終わった瞬間しか見ることが出来なかった斬撃は光の太刀筋となって氷柱に向かう。


『…………最高…だな。』

 オウギが放った斬撃が氷柱に命中し穿つ。だが貫通する事は出来なかった。真ん中にいる化け物によってそれは阻止されたのだ。その身を氷に閉ざされながらグラストはオウギの斬撃を受け切った。


『…パキッ……パラ…バキキ……』

 氷柱に亀裂が走り砕け散る。中から出てきたグラストの胸には一筋の斬り傷。そこから滴る血を指で掬いながらグラストは笑った。


『一瞬、ほんの一瞬だがお前は俺に死をイメージさせた。…最高の気分だ。』

 その瞬間アネッサは全身を襲う圧力に意識を手放した。

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