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頼れる繋がり

「…トーチカさん、一つ尋ねたいことがあるんですが。」

 翌朝朝食を終えたオウギはトーチカも元を訪ねていた。ユーリとカノンは昨日に引き続き鬼人族の子供達と交友を深め、アネッサは村人達から質問責めにあっていた。


「おや、どうしたんだい坊や。悪いけどまだみんなの意見は集まってないよ。一応今日中ってことになってるけど今から聞いて回るからね。」

 突然訪問してきたオウギを邪険にすることなくトーチカは招き入れた。


「いえ、それは別に今日でなくても構わないのですが。…トーチカさんに尋ねたいのはこれのことで。」

 オウギは昨夜食べた野菜を残して置いた物をトーチカに見せる。トーチカはオウギの行動の意味を理解できずに首を傾げた。


「それは昨日持って行かせた野菜だね。それがどうかしたのかい?。ひょっとして体に合わなかったかい?。」

 オウギの行動を飲み込めていなかったトーチカだが心配そうに顔を歪める。オウギ達の集団は様々は種族が入り乱れている。普段自分たちが食べている物がその者達に適合するとは限らないという可能性に思い当たったからだ。


「そんな事はありません。寧ろ…その逆なんです。」

 オウギはトーチカに提供された野菜には少しではあるが体を活性化させる効能がある事を伝える。それと同時にその野菜によってもたらされるメリットとデメリットも話す。


「…そうかい、…私達はずっと食べてきたが。…この野菜達は代々この場所で受け継がれてきた物なんだよ。だからその原因がどちらに由来する物かは私も分からないねぇ。…坊やなら判断できるかい?。」

 トーチカは驚いた表情を浮かべながらも原因は分からないと答える。これまで特に意識せずにいたのだから仕方のない事である。


「えぇ、野菜の育成に使用している水源と種を見せて貰えれば判断は可能だと思います。」

 オウギの言葉を聞いたトーチカはならばとオウギを外に連れ出す。トーチカもこの事が村人の判断の新たな材料になる事は理解しているのでなるべく早くはっきりさせるべきだと思ったからである。外に出たオウギを見つけたユーリ達がオウギの元にやって来ようとするがオウギはそれを制して自分だけで向かう。3人の周りには村人がいて交流の方を大事にして欲しかったからだ。


「ここがうちの村で野菜を育てている区画だよ。栽培に使っている水はあそこから湧いているものだね。」

 野菜を育てているエリアに案内されたオウギは湧き水に視線を向ける。


「…どうやら水が原因ではないようですね。となると…」


「種の方だね。…ふー、どっちの方が良かったんだろうね。」

 水が原因の場合はこの場所からの移住自体を拒む理由になる。だが種の場合は移住した後の安全面での不安がある。どちらが良かったかなど誰にも分からない。


「だが、まぁ、皆には伝えないといけないね。坊や、もしこの作物を外の世界で作るとして…私達は守って貰えるだろうか?。」

 トーチカの問いかけにオウギは大公達の顔を思い浮かべる。オウギに恩義を感じているノードルマン家とカルスホルン家は大丈夫。新しく大公家になったアシュゲルク家はカノンに忠誠を誓っている。他の大公家とはそこまで関わりを持った訳ではないが悪意のようなものは感じられなかった。王族に関しては王女のことしか知らないので判断は出来ない。


「断言は出来ませんが…ノードルマン領なら大丈夫だと思います。その他にも交流のある大公家もあります。流石に大公家に手を出す貴族はそうそう居ないはずなので。」


「そうか、…坊やは繋がっているんだな。…もしみんなの意見が移住になったら坊やの繋がりを利用させてもらうことになるけど…構わないかい?。」


「勿論です、僕はその為にここにいるんですから。」

 オウギの言葉にトーチカは頬を緩めるのだった。

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