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村長との対談

「この村に村の者以外が入るのは何年振りだろうか。」

 オウギ達を引き連れる鬼人族の男が言う。男はオウギ達を村の中心部へと導いていた。


「…警戒されているようですね。仕方ないことですが。」

 そんなオウギ達を囲むように鬼人族が眺めている。だがそれぞれ家からは出てこず様子を見ているだけだった。


「当然だ。同胞たるそこの女だけならまだしも人間に獣人がいる。この村が外界と接触を絶ってから数年経っている。皆が恐れを抱くのも必然だ。」


「そんなに繋がりを絶って生活は大丈夫だったの?。」


「あぁ、村の中で自給自足が可能だ。と言っても最低限のだがな。」

 話をしているうちにある一軒の家の前に到着する。他の家が木材で出来ているのに対し目の前の家は所々に石が使われた重厚な作りに見える。


「ここがこの村の村長の家だ。お前達は俺の判断で暫定的に村に入れたが村長が反対されればお前達には出ていってもらう。無論、異論は認めない。」

 男がオウギ達の方へ振り返りそう告げる。


「私達は話がしたいだけだ。其方に害を加える気はない。」


「それも含めて村長に判断していただく。…入れ。ただし入るのは鬼人族の女ともう一人だけだ。」

 男がドアを開ける。ドアの奥には廊下があり更にドアがあった。どうやらその奥に村長がいるようだ。


「…カノン、ユーリ、外で待っていて。」

 男の言葉を受け当然のようにオウギが名乗りをあげる。


「ん、…分かった。お腹空いたから何か食べ物を渡しといて。」


「えーと、私は何を…」


「彼女達は私の大切な仲間だ。手を出すことは許さないよ。」

 アネッサが残る二人のことを気にかけて男に告げる。


「分かっている。鬼人族はそんな卑怯な事はしない。誇りにかけて。」

 男がそう答えるとアネッサは安心したような表情を浮かべオウギに大丈夫だと伝える。オウギが一つ頷くと二人は家の中に歩を進める。


「…入ってきなさい。」

 二人が奥のドアの前に着いた時中から入室を促す声がかかる。その声に従ってドアを開ける二人。


「よく来たね、同胞よ。そして…人ならざる器を持つ者よ。歓迎するよ。」

 中では鬼人族の女が椅子に腰掛けていた。年齢は四十過ぎほどに見える女のツノはアネッサのものと同じ。つまり覚醒に至っていた。


「…覚醒。…でもこの村は外界との接触を絶っているって。だからさっきの男も半覚醒だったんじゃ…」

 鬼人族の覚醒に必要なもの。それは自分の全てを捧げると誓えるような存在と絆を持つこと。そしてその者は他者でなければならない。親族や同族には元々深い慈しみを持つ種族、故に同族は覚醒の対象にはならない。だから他との繋がりを求める。鬼人族の中で覚醒に至る者が減ったのは迫害を受けてから。繋がりを結びたくとも結べぬ状況に置かれ、覚醒に至らぬから抵抗も出来ず、更に繋がりを無くす。負の連鎖に入った鬼人族はその数を大きく減らすことになった。この村も例に漏れず外界との接触を絶っている。なのに目の前の女は覚醒に至っている。アネッサが疑問に思うのも当然だった。


「私が覚醒したのは随分と前の話さ。その時はまだ辛うじて繋がりを持てていた。そして私は幸運には出会うことが出来たのさ。絆を結ぶ相手と。」

 アネッサの疑問の答えを提示した女は二人には椅子を勧め二人が席につくと顔を眺めて言う。


「さぁ、聞かせておくれ。あんた達がこの村に来た理由を。」

 村の鬼人族の行末を決める会談が始まった。

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