自ら掴み取ったモノ
「…少し横槍が入ってしまいましたね。観客の中には気絶してしまった人もいる。…早く終わらせましょう。」
「…えぇ、僕も同じことを思っていました。次の一撃に全てを賭ける。…命賭だ。」
魔王という規格外の存在が去った後、オウギとアルタイルは戦いを辞めることなく決着をつけようとしていた。ただし長引かせることはお互い望まない。次の一撃で勝負を決すると誓いを立てる。
「…メルト、君の優しさを…力に変える。一時の悪童となれ。」
オウギが携える盾が形を変化させる。オウギの腕全体を包み込むように変形し大きなガントレットとなる。
「…僕は猛る暴牛…カルスホルン家当主、アルタイルカルスホルンだ。我が手中に絶対の一撃を!。」
角撃は形こそ変わらないものの紅い稲妻のような魔力を発して空間を歪ませる。
「………ざっ…」
「………びゅ…」
お互いに無言で駆け出す。既に言葉など必要ない。ただ目の前の男を…倒すのみ。オウギのメルトとアルタイルの角撃がぶつかり合う。均衡した力は周囲に衝撃波を生み出す。立ち込める煙。意識のある観客は理解が及ばないながらもその行方を見守った。
「…………」
「…………」
煙が晴れ攻撃前とお互いの位置が入れ替わるようにして立っている2人。
「………ごぼっ……」
「…がはっ……」
オウギとアルタイルの2人が同時に吐血する。オウギは徐々に溢れた血を吐き出すように、アルタイルは急激に逆流してきた液体を吐き出すように。それぞれが体の内部にまでダメージを受けていることは明白だった。
「…っ…オウギ様…。」
「オウギ…!。」
「オウギさん⁉︎。」
吐血したオウギを見たユーリ達は驚愕する。今までここまでダメージを受けたオウギを見たことがなかった。どこか心の中でオウギは誰にも負けないと思っていた。それが揺らぐ。3人は懸命にオウギに声援を送る。だがその声もかき消されることになる。
「…領主様ー‼︎。頑張ってください!。」
「あんたは俺達のボスなんだ!。しっかりしろ!。」
「俺達はあんたが勝つ所を見たいんだ!。」
3人の声をかけ消したのはアルタイルへの声援。それはこれまでと街中が違っていることを表していた。これまでアルタイルは住人に認められずそれ故に憚られ侮られていた。だがここに来て継承した地位ではなく自らの手で信頼という何物にも変えがたいを掴み取ったのだ。そしてそれは力となる。
「…ぐふっ……はぁ…はぁ…んぐっ…はぁはぁ。」
アルタイルは衰えない力ある瞳でオウギの事を睨み付ける。
「…その強さが有れば…貴方は立派な…暴牛だ。」
オウギは薄く笑みを浮かべるとその場に崩れ落ちた。
「「「ウオォォォォォオオオ‼︎。」」」
「「「…パチパチパチ…」」」
その瞬間アルタイルを称える叫びが響きそれと同時に対戦相手でおるオウギへも惜しみない拍手が送られたのだった。




