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災厄襲来

 オッドアイとなったアルタイル。戦いが始まる前のアルタイルとも暴牛とも違う雰囲気を纏っていた。


「…そうか、これが…カルスホルンを継ぐということか。」

 アルタイルが静かに言う。アルタイルはこれまで感じたことのなかったもう1人の存在をしっかりと感じ取っていた。それはつまりアルタイルと暴牛が一体化したことを表す。


「…ありがとう、オウギさん。お陰で僕は本当の力を手に入れられた。僕がカルスホルン家当主である為の力だ。」


「僕はきっかけを作ったに過ぎません。行を成したのは貴方だ。」

 アルタイルが角撃を構え、オウギもそれに応えるようにメルトを構える。既にオウギだけでなくアルタイルも常人を遥かに凌駕した使い手となっている。2人の放つ濃密な闘気はその場の観客を飲み込む。


「……っ!…オウギさん!。」


「この…魔力は…!。アネッサさん!、ユーリ!カノン!。今すぐフランシス様を!。」

 アルタイルが何かに気づく。そしてそれと時を同じくしてオウギが慌ててアネッサ達に指示を飛ばす。これほどまでに慌てるオウギの姿を見たことがないアネッサ達は戸惑いを見せるがその直後全身を強烈な悪寒が襲う。


『…何やら楽しそうじゃないか。』

 空間が捻れそこから1人の少女が姿を現す。白い肌のその少女の姿を見たユーリはその場で震えが止まらず崩れてしまう。


「ユーリちゃん⁉︎。…あれは…」


「…ま、魔王…です。ふ、フランシス様を…守らないと…」

 ユーリの口から出る言葉。それは静寂が支配するこの場で波のように伝わり観客全てが理解する。人類の敵、魔人を束ねる最強の存在だと。だが観客は動かない、いや、動けない。自分達など虫からのように殺されることを理解しているから。何が怒りに触れるか分からないから。


『…オウギ、久しぶりだ。そしてお前がカルスホルンだな。』


「……そうだ。僕がカルスホルン家当主だ。貴女は…魔王…か?。」


『あぁ、間違いない。私が魔王だ。それにしても…突然強くなったな。我慢できず思わず来てしまった。アビィ!。』

 魔王がアルビデを呼ぶ。


『まおうさまぁ、びっくりぃ、しましたぁ。とつぜんくるなんてぇ。』

 魔王に呼び出されたアルビデが舞台に上がる。その姿は肌の色も元に戻っており本来の姿となっていた。


『暇だったのでな。…それで断片は手に入れたか?。』


『まだでございますぅ。…だんぺんは、あちらにぃ。』

 アルビデが指差す方向には優勝の商品が飾られている。


『ふむ、そうか。ならば頂いていくとしよう。…オウギ、なんのつもりだ?。』

 当然のように断片を持ち帰ろうとする魔王。だがその行先にオウギが立ちはだかる。


「それはれっきとした賞品です。まだ決着がついていない以上、手出しはダメです。」


『そんな事私には関係ないな。…なんなら今ここで…全て殺してもいいんだぞ?。』

 魔王の体から意識的に魔力が漏らされる。これまで垂れ流しになっている魔力だけで場を支配していた魔王。意図しての魔力によって観客は次々と意識を失っていく。


「………もし望むなら…僕が相手になります。」


『オウギよ、お前とてわかっているだろう。お前は私に勝てない。今のお前はアビィにすら及ばんだろう。それが私の邪魔をすると?。』


「…ぼ、僕もお相手しますよ。この場にいるのは僕の民だ。それを害する存在を…許すわけにいかない。」


『…ふん、…どちらもまだまだだな。私に芽を積む趣味はない。早く実ってくれ。そうすれば私が直々に刈り取ってやろうぞ。…アビィ、この度の断片は預けることにする。呪印をつけておけ。』


『…わかりましたぁ。ではしつれいしますぅ。…これでどこにあってもぉ、わたしにはぁ、わかりますぅ。』


『よし、ならば帰るとしよう。…オウギ、アルタイル、いつか研ぎ澄ました刃を携え私の元へ至れ。…期限は魔族が世界を支配するまで。私を討てば…魔族は止まるぞ?。』

 魔王とアルビデは来た時と同じように空間のひび割れに入っていく。


「…魔王…まだまだ底が見えない…。」


「…はっ、はっ、…はっ…。…あれが魔王。…世界最強の生物。…怖い…けど…。」

 突然の魔王の襲来。嵐のように去って行った最強の心の内を知ることは誰も出来ない。

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