アルタイル対オウギ
申しありませんが暫く更新は週一回、毎週月曜日になります。
「…結論は出たんですか?。」
アルタイルが問いかける。場所は舞台の上、先程のミシュライオンとの話し合いから少し時間が経っていた。破壊されていた舞台は修復され整っている。
「えぇ、…僕は魔族とも話がしたいので、僕が持っておくことにします。そうすれば向こうから来てくれますからね。」
「…なら、僕に勝つ気があるってことですか。良かったです…本気のオウギさんと戦えて。」
「元々本気で戦うつもりでしたよ。…剣聖の名に於いて命じる。来い…『鏡月』!。」
オウギが心臓から一振りの剣を抜き放つ。剣聖の適性を持つ者だけが使える依代の剣。オウギの持つ鏡月の性質は無。剣が通った軌道上の空間を削り取る。
「…剣聖…。歴史に残る稀な適性じゃないですか。貴方の強さは本当に…測れない。…だからこそ僕は、貴方を倒したい。カルスホルンは…暴牛だ!。」
アルタイルもその手に角撃を構える。大の男が3人がかりで持ち運ぶであろう大槌を片手が担ぐ。それはまさに角撃に認められていることを表す。
「…先手は頂きます。」
オウギが前に出る。そして鏡月を斜めに振り上げる。それを躱すアルタイル。だがオウギの鏡月の軌道上の空気が削れ真空となりそれによってアルタイルの体が引き寄せられる。そこに迫るは振り下ろされる鏡月。鏡月は敵の回避すら喰らう。
「…な⁉︎…体を…。…この感覚は味わったことがある。僕は…風魔法を使うんでね。」
アルタイルは体が引き寄せられる感覚に既視感を覚えていた。風使いとしての経験が即座にオウギの鏡月の能力を詳かにする。真空の空間に大量の風を送り込む。それによって逆にオウギが吹き飛ばされることになる。
「流石だ、鏡月の力を一瞬で…!。」
「…その剣は空間魔法を帯びている。普通の武器なら鍔迫り合いにすらならないだろう。だが…」
吹き飛ばされたオウギにアルタイルが角撃を投げつける。自ら武器を手放す行動に観客は疑問の声を上げるがアルタイルに関係ない。
「…ぐっ……やはり削れないか。元々の素材が耐魔性に優れていて尚且つこれだけの魔力を纏っていれば…」
角撃が投げられたことにより予想より早い反撃を受けるオウギ。鏡月で受け止めるが角撃の質量ゆえ傷を負う。
「この角撃はただの槌じゃない。」
オウギに叩きつけられた角撃が引き下がる。上空まで移動しそして再びオウギに向かって落下する。角撃はアルタイルの右手と風の鎖で繋がれていた。それにより離れた距離から大質量の攻撃を見舞う。
「…メルト、僕に力を貸してくれ。」
オウギの腕に盾が出現する。そしてアルタイルの攻撃を盾で受ける。
「…それは見たよ。受けた衝撃を増やして返す。でもこの距離なら僕なら関係ない。」
一度叩きつけた角撃は再びオウギの上から消えて跳ねるように叩きつけられる。鞭のような多角的な攻撃と重さが加わったアルタイルの攻撃は修繕された舞台を粉々に砕く。
「…そういえばこれは見せてなかったですね。」
一連の攻撃の土煙が立ち込める。そこを見つめるアルタイル。当然オウギがやられていると考えておらずどんな反撃がこようと対象するつもりだった。だが今かけられた声は想定外の場所。背後からのものだった。
「…っ!。…転移…!。」
「その通りです。そして…メルト、開放。」
振り返るアルタイル。だがオウギは無慈悲に攻撃を加える。それまで蓄えられた衝撃がメルトから放たれる。当然アルタイルは吹き飛ばされる。闘技場の壁に叩きつけられ、全身から血が溢れ出す。丈夫なアルタイルのその姿から今の衝撃の破壊力が伺い知れる。
「…貴方が本気の戦いを望むなら僕はそれに応える。それが…戦士としての礼儀だと思いますから。」
「……………」
(……僕は……強くなったんじゃないのか。……遠い……。…俺は……負けたのか?…否…僕は…まだ…死んでない。……怖いのは死ぬことか?……いや、負けることだ。…どけ、俺が力を…貸してやる。)
「…さぁ、…命を……燃やせ。」
虫の息かと思われたアルタイル。だがその指が動き、腕が動き、瞳が開かれる。普段のアルタイルは澄んだ蒼い瞳。だが今は血のような紅い瞳となっていた。
「どんな理屈も叩き潰す。俺は猛る暴牛だ。」
「…第二ラウンドですね。」