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アルビデの目的

 決勝はオウギとアルタイルの戦いが行われることになった。だがその前に破壊され尽くした闘技場の修復が行われる。アルタイルは決戦に向けて静かに闘志を迸らせていく。実力者が見れば今のアルタイルが纏っている戦士のオーラの密度に驚くだろう。一方のオウギは先ほどのアネッサとの戦いである違和感を感じていた。その違和感の正体の元へと向かう。


「やはり貴女でしたか。以前お会いした時と同じ魔力波形を感じたので。」


『おぼえていただいてぇかんげきでぇすぅ、おうぎさまぁ。』

 そこにいたのはアルビデ。以前とは違い肌の色も人と同じ色になっているのでパッと見た限りでは見分けがつかない。


「魔族である貴女が何故ここに?。…その理由によってはお相手することになります。」


『いえいえ、そんなぁ、おきになさらずぅ。ちょっとしたようじをぉうけたまわったぁだけですぅ。…おたずねしますがぁ、おうぎさまはぁ、ことわりのだんぺんをごぞんじですかぁ?。』


「…理の断片?…いえ知りませんが。…それが貴女がこの街に来た理由なのですね。」


『はい、そうですぅ。わたしはぁそれさえてにいれられればぁ、なにもぉいたしません。』


「その理の断片がここにあるのですか?。」


『このたいかいのぉ、ゆうしょうしょうひんですぅ。あのほんのいちぶがぁだんぺんなのですぅ。』

 今回の闘牛祭では最後まで勝ち残った者には褒美が与えられる。名工によって鍛えられた剣、そして代々のカルスホルン家当主が書き留めた戦の極意の書。アルビデの目当てはその書物だった。


「その断片は何に使う物なのですか?。」


『それはおうぎさまぁといえどおおしえできません。ただ…わたしたちはぁ、ちからをつけなければなりません。にんげんにぃ、ゆうしゃがぁでたいじょう。このままではぁ、まぞくはほろびてしまいますからぁ。』


「…勇者?…」

 アルビデの発したある言葉に反応するオウギ。勇者、それはオウギの中の暗く辛い記憶を呼び覚ます。


『あぁ、そういえばおうぎさまぁも…ゆうしゃがぁまざっておいでですよねぇ。おしりあいですかぁ?なまえはぁ、えすごーというそうですぅ。』


「…エスゴー…?…S…5…。…⁉︎…馬鹿な…。考えすぎだ。アノンはもう…死んでいる。魂は僕と共にある。」

 アルビデの言ったエスゴーという名前。オウギは無意識にそれをS 5と変換していた。かつての記憶。何者でもなかった自分に名と道を与えてくれた今は亡き友にして恩人。その人のことを思い出したのだ。


『…おこころあたりがぁあるよーですねぇ。…ですがぁ、ふかくはぁおききしません。またぁ、きかいがあればということでぇ。こんかいー、めいじられているのはぁ、だんぺんだけですぅからー。』


『…おうぎさまがぁ、くださるのでしたらー、わたしはなにもしません。ですがぁ、わたしはぁ、こんかいまおうさまより、じつりょくこうしをー、きょかされていますぅ。』


「この街には今僕もアルタイルさんも僕の仲間もいるのですよ?。それでもですか?。」

 このクロイセンには実力者が揃っている。オウギが挙げた以外にも冒険者のランクでBやAの者も多数いるのだ。


『…うーん、そうですねぇー、もんだいないかとぉ。まだぁ、おうぎさまもわたしにはとどいてぇ、いませんし。できればおうぎさまにはぁ、てだししたくないんですけど…。そのときはすべてをこわします。まぞくのために。』

 だがアルビデはそれでも問題はないと言う。そこには絶対に自信が見える。そしてそれまでのフワフワした雰囲気とは打って変わった強い言葉。そして漏れる魔力。その瞬間街の人々は死の恐怖を味わう。一瞬の出来事。だがその時街から音は消えていた。


「…っ…」


『…おこたえはのちほどでけっこーですぅ。それでは…また…』

 アルビデの姿が消える。オウギをもってしてもアルビデの足跡を追うことは出来なくなっていた。


「…理の断片…。そこまでして欲しがる物。何故人間が持っている?。アルタイルさんに聞いてみないといけない。…それに…アノン…。いや、今は戦いに集中しないと。…今のアルタイルさんは強い。僕も…全力で応じる。」


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