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自然に干渉する力

 ざわつく客席。それも当然である。飛来したのはただの武器ではない。この世に二つとない得物なのだ。その武器はある一族の名を冠しこう呼ばれる。


「カルスホルンの角撃」と。

 カルスホルンの角撃は使用者を選ぶ。若くして跡を継いだ現当主ですら使う事はならなかった。それが飛来したのだ。一気に舞台上の2人に視線が集まる。


「これは…カルスホルンの角撃。…一体どうして…」

 この状況を理解できないのはアルタイルもカノンも同じだった。突如としてこんな大槌が飛来したのだから無理もない。


(…ふっ、…まだやれるってことか。…いいだろう、やってやるよ。)

 いち早く立ち直ったのはアルタイルであった。素早く大槌に駆け寄るとその肢に手を添える。その瞬間アルタイルに緊張が走る。これまでこの大槌を満足に扱う事は出来なかった。霊廟で自分に向き合った成果が思わぬタイミングで試されることになった。


「俺は…アルタイル・カルスホルン。猛る暴牛を…継ぐ者だ!。」

 アルタイルが角撃を持ち上げる。その時一陣の風が巻き起こる。


(…軽い、…それに手に馴染む。まるで…ずっと使っていたかのようだ。)

 アルタイルは力が湧き上がるのを感じていた。それと同時にある感情も流れ込んでくる。凶暴性。今まで持てなかったのはこの凶暴性を御すことが出来なかったからだと確信する。だが今のアルタイルは違う。凶暴性を否定せず受け入れる。受け入れながら飼い慣らす。心に暴牛を飼いながら頭は冷静に。


「…っち、…『破照雷』‼︎。」

 角撃を手にしたアルタイルを目撃したカノンは舌打ちをもらす。明らかに強くなった。それこそこれまでと一つ別の次元に。その事を感じ取ったのだ。カノンは自分に残る魔力の殆どを使い魔法を発動する。小出しにしていてはどうにもならない。全てを賭けて一撃で。その意思のもと練られた魔力は空へと打ち上げられる。立ち込める暗雲。響く轟音。太古から人類を最も殺してきたもの…自然。その力が牙を剥く。


「…これだけは言っておく。殺したらごめん。」


「…これは…。…面白い、受けて立とう。」

 振り下ろされるカノンの腕。それに沿うように天から一筋の裁きが落とされる。刹那の攻撃に観客は何が起こったのかすらわからない。ただ視界が真っ白に染まっただけだった。


「…疲れた。…もう魔力もないし私の負けでいい。」


「…私を認めてくれたという事ですね。ありがたくその権利を頂戴します。」

 そして視界から白が消えた時には白い少女が自ら負けを宣言していた。観客はポカンとするしかない。だがそれも一瞬のこと。再び活気を取り戻す。今の一瞬の出来事を理解できたのはほんの一握りの人間、オウギと辛うじてアネッサ、カノン、そして偶々この街を訪れていたSランクの冒険者だけである。


(…雷を壊すなんて。…負けた。…オウギの前で。…もう負けない。)

 カノンはアルタイルがとった行動を目の前で見ていた。アルタイルは一直線に訪れる雷を大槌で殴りつけ霧散させたのである。淡々と降参を告げたように見えるカノンだが心の中は悔しさで溢れていた。


「…次に戦う時は焼き殺す。…もっと龍の力を使えるようになって…。」

 カノンはそう決意するのだった。

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