オウギ、心を折りにいく
「よくもまぁ、俺の部下達をやってくれたもんだ。お前、あのクソガキと鬼人族の仲間なんだろ?。それなりの代償は払ってもらうことになるぜ?分かるだろ?俺達みたいな奴は舐められたら終わりなんだよ。見たところお前が1番弱そうだ。」
舞台に上がったオウギに鉄の牙のボスが告げる。既に2人の幹部がやられた。当然街の人達はその2人が鉄の牙である事を知っている。つまり鉄の牙の威光は地に落ちた。そのことに怒髪天をつく勢いで怒りを見せるボス。
「…僕たちがあなた達に何をしたと言うんです?。そもそもはそちらから絡んできたこと。僕たちは降りかかる火の粉を払ったにすぎない。」
「はっ、言うじゃないか。…お強い仲間に囲まれて、口だけは立派なお坊ちゃん。…死ね!。」
オウギの態度を静かに観察していたボス。だが突然その手を横に薙ぐ。まだ開始は告げられていない。完全な奇襲だった。アジトで下っ端達を両断した動きと同じ行動をとる。
「…どれだけ語ろうが弱者は奪われる。その命でもな。…さて、あのクソガキ共をどうするか。正面でカチ合えば俺とて…」
それだけでオウギが死んだと思ったボスはカノン達をどう始末するか考え始める。だがそんなボスに声がかかる。
「何故カノン達の話をするんです?。僕はここにいるのに。」
無傷のオウギが不思議そうに言う。それを見たボスの額に青筋が浮かぶ。
「…てめぇ、…ふっ、ただの雑魚じゃなかった。俺の奇襲を防ぐとは…ダラスやグラッドぐらいは出来るようだな。ならば俺も本気を出そう。いくぞ…」
「…何故僕がそれを待つと思ったんですか?。」
体に魔力を練り始めたボス。だが言葉は途中で途切れることになる。一瞬で目の前にきたオウギがその首を掴みボスの体を吊り上げたのだ。
「…がっ⁉︎…てめぇ、…いつの間に…ぐぐぐ…離しやがれ!。」
オウギに吊り上げられたボスは驚きに目を見開きながらも抵抗を見せる。しかしいくら暴れようとオウギの体はびくとも動かない。
「…弱い。考えが自己中心的すぎる。何故自分が奇襲をしておいて僕が待つと思っているのですか?。あなたの魔法の発動を待つ必要など僕にはない。」
オウギは首を掴んだままボスを地面に叩きつける。
「…がはっ⁉︎…かは…はぁ……はぁ……なんて…力…」
受け身も取れず地面に叩きつけられたボスは口から血を吐き呼吸も乱れる。
「いつから鍛錬を怠るようになったのですか?。進むことを辞めた者に待つのは退化のみ。なのにあなたは自分が強者だと振る舞う。その結果がこれです。」
「…くく…御高説ありがとよ。だが…調子に乗るなよ!。『風塵』。」
ボスの周りに風が吹き荒れる。そしてその風はボスを押さえつけるオウギに襲いかかる。
「…ふっ、ははっ!。この距離での風の刃だ。細切れになりやがれ!。」
「その程度ですか?。…」
だがオウギは同じく風の魔法を発動し風の刃を全て相殺していた。防いでいたのではない。飛来する風の刃と同じ魔力量の刃を生成しぶつけて消滅させていたのだ。それはただ防ぐことより大きな精神的ダメージを与える。
「…は?…ば、馬鹿な。俺は元Sランクの…」
「そんなもの、この場所、この状況で意味をなすと思いますか?。」
「もう手を出さないなら許すつもりでした。だけどあなた達は踏み込んだ。その報いを受けてください。」