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その身に還る積み重ね

「…なんてね。…君は大層恨まれているんだろ?。私が殺しちゃうのは申し訳が立たないよ。」

 確実にアネッサの影はダラスの体を貫いた。だがダラスは自分の命がある事を感じている。意識が遠のいていく。だがこのままなら生き長らえることも出来る。そう希望を持ち、そして心の中でアネッサや、アネッサに味方した観客への復讐を誓っていた。


「…おや、まだそんな目で私を睨むんだ。へー、…でももう私からは手を出さないよ。私の勝ちは揺るがないし。」

 アネッサは勝ち名乗りを受けると舞台から降りて行く。


(…馬鹿め、…腕を一本失ったぐらいで俺の心が折れると思ったか?。…金にものを言わせて直ぐに治癒してやる。…くくくっ…)

 立ち去るアネッサの後ろ姿を伏して見ながらダラスは心の中でアネッサを馬鹿にする。所詮は甘ちゃんだと。だがそれは大きな間違いだった。アネッサは同族保護の為に反乱を起こすイシュタル家の味方に付いた程のものだ。大事な者の為なら悪にでもなれる。


「…あ、そうだ。さっきの影ね、ちゃんと切断したから。君はこれから今まで自分が振るってきた暴力をただただ受け止めるんだ。」


(…何を………)

 アネッサの発言の真意を掴みかねるダラス。


「今の君には分からないだろうね。元々体を動かす余裕なんてないから。さっきの影が切ったのは君の体の中にある大事な線だ。生物はね、その線が切れると自分の思う通りに動かなくなるんだ。面白いよね。」


「私が切ったのは君の四肢を繋ぐ線。つまり君はこれから手足を動かすことが出来なくなる。1人で歩く事も何かを持つ事も出来ない、そんな無力な人間になるんだ。」


(…まさか……だとすれば……)

 ようやくアネッサの言わんとすることが分かり始めたダラス。先程までと違い心臓の嫌な鼓動を感じる。


「そんな君の元には多くの人が駆け付けるだろうね。そしてその人達から君は受け取るんだ。これまで君がしてきたことの対価を。」


「君が善良なら手助けがあるかもしれない。でも君がゴミ屑で人を傷つけてきたなら…その体で受けないと、罰をね。」


(…くそぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎…)

 ダラスの声にならない悲鳴。ダラスは後に必ず訪れる死よりも辛いであろう苦痛を想像し、気絶するのだった。





「…ごめんね、オウギさん。ちょっとやり過ぎちゃったかな。」


「いえ、アネッサさんの怒りは当然のものだと僕は思います。この周りの反応を見ればアネッサさんが間違った事をしてないと誰もが分かります。」


「これで少しは鬼人族へのイメージが変われば良いんだけど。鬼人族が怯えず、誰とでも仲良く笑い合える場所を作る。それが今までに亡くなった鬼人族達の願い。その願いは今を生きる私たちが繋がないといけないからね。」


「今日のアネッサさんの話を聞いた人達はこの国だけで見ても僅かです。ですが…ゼロじゃない。確実に意味はありますよ。」


「…だと良いね。あ、次はオウギさんだよね。相手は鉄の牙のボスか。手下をやられて怒ってるだろうけど…頑張ってね。」


「えぇ、僕もアルタイルさんと約束が有りますから。負けるつもりはありませんよ。」


「アルタイルさんはこれからユーリちゃんとカノンちゃんともやるんだけど…それでも勝ち進むと?。」


「予感ですけどね。彼は…強い。多分今まで出会った人の中では最強だと思います。」

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