エリザベス、動く
次回更新はお休みします。
次の更新は12月20日になります。
「エリック!。エリックは帰って来てる?。」
大きな屋敷の中女性の声が響く。声を出した人物は金髪の可憐な美少女エリザベスだった。
「はい、お嬢様戻っております。」
しっかりとした見た目の男エリックが何処からともなく現れ膝をつく。
「きゃっ⁉︎。…エリック、いつも言っているでしょう。突然現れないで。」
可愛らしい悲鳴をあげた後若干顔を赤くしながらエリザベスがエリックに怒る。
「もう…まぁいいわ。それよりもオウギ様にお手紙と指輪を渡してくれましたか?。」
「はい、申し付け通りオウギ様に接触、お手紙と指輪をこの手でしかと渡して参りました。」
「そ、それでオウギ様はなんと?。」
現段階で自らが出来る最高のお礼を尽くしたと考えているエリザベス。勿論今後合った際には礼を尽くすつもりだが…それでも反応は気になってしまう。
「私は言いつけ通りお渡しした後すぐさま帰路に着きましたのでオウギ様のことは…。強いて言えば最後に不思議そうな顔をなさっていらっしゃいました。」
エリックがエリザベスの意に反する答えを口にする。因みに唯一の反応であるオウギが不思議そうな顔をしていたのはエリックがどの様に自分の居場所を掴んだのか疑問に思った為でエリザベスのことではない。
「…そぅ。…ねぇエリック、他にオウギ様について何か知っていることはないかしら?。」
オウギのことならなんでも知りたい。助けてもらった時から想いが募る。想っているだけで胸が熱くなる。直に会いたい。オウギへの思いがエリザベスの胸を焦がす。しかし生粋のお嬢様であるエリザベスはその感情の名前をまだ知らない。
「はい、実はですね、オウギ様の滞在する街にて魔族が現れたのことです。」
「な、なんですって⁉︎。そ、そんな…それなら早く軍を送らないと。王都にも応援の要請を…」
エリックの話を聞きエリザベスが慌てた様に周りを見渡す。誰がを父への伝令に走らせようとしていたのだ。
「その現れた魔族は冒険者ギルドマスター以下冒険者達で討伐されたそうです。」
「ま、魔族を討伐?。そのギルドには腕利きがいたのね。」
エリックの報告に体の力が抜けたのかエリザベスが床に崩れ落ちる。
「いえ、私の情報によればマスターはAランク相当でありますが他の冒険者は良くてBランクぐらいだそうです。」
「確か魔族はSランクが複数人と王都の聖騎士達が討伐するべきとされていたはずよね。…まさか…」
「はい、隠蔽はされておりましたがある幼子からの情報によると『おにいさんが助けてくれた』とのことです。」
ある幼子とは勿論宿屋の少女である。オウギに秘密にしておいてと言われていたがエリックが差し出した見たこともない甘味に口が滑る。
「…間違いありませんわ。オウギ様…。貴方様は一体どれ程の強さをお持ちなの?。その優しき心に報いるには何を差し出せばよろしいの?。」
「…エリック、あなたならオウギ様の進路を予想出来るわよね。」
突然エリザベスが何かを思いついたかのように立ち上がる。
「…恐らくですがオウギ様は道に沿って進んでおられる様子。それならば進路の予想は立つかと。」
「お母様の病気も既に快方に向かっている。それならば…」
「エリック、モリスを呼びなさい。今すぐ我が領地の街を救ってくださった英雄に御礼を申し上げに向かいます。」
もっともらしい理由をつけてオウギの元へ向かおうとするエリザベス。
「…待っていてくださいオウギ様。エリザベス・ノードルマンが参ります。」
恋する乙女を止める者はこの場にはいなかった。