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アシュゲルク家

「すまんなオウギ。突然呼び出してしまって。お前たちがまだこの街にいてくれて助かった。」

 タリーニャの代官襲名の報せと新大公家の発表に沸くカラッサスの街。そろそろ次の街へと向かおうと思っていたオウギの元にフランシスの部下の魔導師カテーナが転移を使い現れたのだ。そしてオウギがまだカラッサスにいることを確認してフランシスからの要件を伝える。それはカノンを伴って会いに来て欲しいというものだった。特に断る理由もないオウギはそれを了承。今に至る。


「…そしてその少女が…」


「あなたは誰?。…何でオウギを呼び出したの。」

 フランシスの視線の先には人化したカノン。そのカノンはフランシスに対して煩わしさを隠しもせず対応する。その辺りが人と龍の考え方の違いである。人は権力を世襲するが龍はその強さに権力が付随する。目の前のフランシスはカノンから見れば街の娘と変わらないのである。そのフランシスが主人であるオウギを呼び出したとあって不機嫌なのである。


「…これは失礼した。私の名前はフランシス。一応この国の王女をやらせてもらっている。オウギに今日会ってもらいたい人がいるのだ。其方にもな。…良いだろうか?。」


「…分かった。別に構わない。」


「そうか、なら…おい、入って構わないぞ!。」

 カノンの了承を得たフランシスが部屋の外に声をかける。するとドアが開き2人の人物が入ってきた。壮年の男性と歳若い女性である。2人はフランシスに一礼した後カノンの姿を見て膝をつく。


「…?…何。」

 2人の行動に疑問符を浮かべるカノン。


「くくくっ、…やはり私よりも其方に重きを置くか。まぁそれ故に其方たちを大公家に押し上げたのだがな。あまりに重臣が肯定的過ぎると治世が失敗する可能性もあるからな。」

 カノンに対して膝を折った2人を見たフランシスは本来なら無礼に当たるその行為を笑って許した。これも予定通りの行動だったからである。


「…お初にお目にかかります。私の名前はキリーク・アシュゲルクと申します。」


「…お初にお目にかかります。ネイノール・アシュゲルクと申します。」

 カノンに対して頭を下げたまま2人が名乗る。男性がキリーク、女性がネイノール、そして姓は新しく大公家に任命されたものだった。


「喋りにくいから顔をあげて。それで私に何の用?。」


「はっ、私たちアシュゲルク家には龍の血が流れておるのです。既に薄くはなっておるのですがそれでも脈々と受け継がれてきた血です。一度で良いから本物の龍様の姿を見たいと一族で願っておりました。」


「…そう。…それで?。」


「凄まじい気配に思わず膝を着いた所存でございます。我ら一族は龍種様に忠誠を誓いたく御座います。」


「ふーん、…待って、…ちょっと聞きたいことが。そこの…ちょっと来て。」

 キリークの話をどうでも良さそうに聞いていたカノンだがあることに気づきネイノールを呼び寄せる。


「はい、…伝承では………人化…………子供………添い遂げ………」

 ネイノールと密談を交わすカノン。その間にオウギはキリークに話しかける。


「カノンに忠誠を誓うんですか?。他にも龍種はいると思うんですけど。それに龍王だって。」


「そうですね、これはもう直感としか言えないと思います。カノン様の纏う覇気に惚れたのです。」


「あの方は近い将来必ず龍王になられます。その時少しでもお力になりたいのです。本当は長女も連れてきたかったのですが生憎行方知れずでして。それで次女のネイノールを連れて参ったのです。」


「もう良い。今話した内容は誰にも言っちゃダメ。」


「はっ、畏まりした。命に変えても厳守致します。」

 カノンとネイノールの会話も終了したようだ。


「カノン、何を話していたんだい?。」


「秘密。気にしなくて良い。…もう用事は終わり?。」


「あぁ、今日はアシュゲルク公たっての願いで顔合わせをしただけだ。私からは特にないぞ。」


「ん、ならオウギ帰ろう。」


「はいはい、それでは失礼します。」









「どうであったアシュゲルク公よ。あれが龍王ガルガンディア様の娘カノンだ。」


「いやはや、…まさか龍種の方と言葉を交わせる日が来るとは。この件は末代まで誇りですな。」


「其方たちでもそこまでか。やはり龍種と出会うこと自体が希少なのだな。この街には龍王の一角ミシュライオン様がいらっしゃるが。」


「えぇ、それにも驚きました。ミシュライオン様は龍王の面々の中でも温和でなおかつ姿を見せてくださる方ですが…人化までなさっていらっしゃるとは。」


「…全てはオウギを中心として起こっておることだ。」


「あの男性ですね。あの方からはミシュライオン様の加護だけでなくガルガンディア様の加護も感じ取れました。未だかつてここまで龍種に愛された男はおりませぬ。」


「其方の娘はどうなのだ?。あの放浪娘は…。」


「クロームですか。相変わらずです。」


「そうか、…ネイノールよ、カノンと何を話しておったのだ?。」


「…申し訳ありませんが殿下の命令でも内容は申せません。」


「…ふっ、別に構わんよ。…これからこの国は大きく動くことになるかもしれん。その時私が間違う時もあるだろう。お前たちは人とは離れた視点で支えてくれれば良い。」


「…畏まりした。」


「畏まりした。」


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