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守るために風になる

「…マサカアンナニンゲンガイルトハナ。アレガユウシャトヨバレルモノタチカ。」

 オウギのいる洞窟から逃亡した魔族。全く見当違いの予想をしながらひとびとを攫ってきた街に帰ってきていた。当然街の人々がいないので静まり帰っている。


「…ナルホドタシカニケハイガヒトツ。ミノガシテイタカ。」

 魔族が探しているのはオウギと約束をした女の子。オウギとマスター達の会話から街に人を残していることを察したのである。


「…ナニモセズニカエルワケニハイカンナ。ゼツボウヲクレテヤル。」






「…おにいさん…大丈夫かな。ううん!おにいさんは約束してくれたもん。だから…わたしは美味しいご飯を作って待ってないと。」

 オウギの宿泊していた宿。少女は1人厨房で懸命に料理を作っていた。いくら宿屋の娘といえど料理の経験が豊富なわけではない。それでも少女は記憶を頼りに鍋を火に掛け、食材を刻む。それが自分にできる唯一のことだと分かっているのだ。


『ガタッ…』


「あ、おにい…きゃぁぁぁぁあ‼︎。あ、あの時の…」

 物音を聞きオウギが帰ってきたと期待した少女。しかし現れたのは魔族だった。一瞬にして蘇る記憶。少女はパニックに陥る。


「ザンネンダッタナ。セッカクノガレタノニ。キサマニハココデシンデモラウ。ン?、キサママリョクガオオイナ。」


「あ、あぁ…。(おとうさん…おにいさん…助けて…)。」


「ゼツボウノアマリコエモデナイカ。ヨイカオダソノカオガミタカッタ。チカラニカワル。」


「お、おにいさん助けて!。」


「ムダダ。アノオトコノマリョクモスデニゲンカイダッタハズダ。」


「はぁはぁ……ごくっ、お、オウギさん助けてよ!。」

 少女がオウギの名前を大声で叫ぶ。


「ムダダトイッテイル…ナ、ナンダコノカゼハ。」


「…約束、守ってくれた。」


「言っただろう。僕が君を守ると。」

 颯爽と立つオウギの姿があった。







「あ、そうだ一応言っておくね。もし、何か危険が迫ったら僕の名前を呼んでくれ。」


「おにいさんの名前?。わたしおにいさんの名前知らない…」


「僕の名前はオウギ。君が本当に僕に助けを求めるなら僕は風になって君の元に駆けつける。」

 そう言いオウギが女の子のおデコに自分の人差し指を当てる。


「オウギさんーー。分かったよおにいさん。」


「僕が君を守る。約束だ。」






「…オマエハ…ドウヤッテ…マリョクハホトンドノコッテナカッタハズ。」


「ん?あぁ、この子に殆ど預けてだからね。やっぱり守らないとダメだから。」

 そう言いオウギは少女の頭に手を置く。すると少女の体から光が漏れオウギに吸収される。


「…ナ、ナンダソレハ⁉︎タニンニマリョクヲジョウトスルダト。ソンナコトマオウサマトドウトウノ…」


「…煩いですね。これでも僕は怒っているんです。あの時あなたが生きているのは知っていました。それでも結果的にいえば誰にも被害はなかったので見逃そうと思いました。でも…あなたはわたしの庇護の元にある人物を害そうとした。」


「それはいただけません。『抉り取る亜空間』。」

 オウギの右手に魔力が集中する。空間が歪む程の魔力の奔流。


「ナンダソノマホウハ…クウカンマホウヲカラダニマトウダト…ヤメロ…タスケテ…」


「人生では間違えちゃいけない選択があるんです。あなたはそれを、間違えた。僕はあなたが存在していることを認めない。」

 オウギが魔族の胸に右手を差し込む。魔族の体を抉り取りながら沈み込む手。


「…ア、ア、ア、アァァァァァ‼︎」

 オウギの手を中心に魔族の体は全て消え去る。


「…『絶界』。」

 オウギの右手の魔力が途絶える。魔族の断末魔はそれを最後に聞こえなくなった。


「…あの、おにいさん、おとうさんは…」


「大丈夫。全員無事だよ。多分もう少ししたら帰ってくると思うよ。」

 こうして街に平和が戻った。


「おにいさんは英雄だね。」


「いや、僕はノージョブだよ。」


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